「将来子どもを産んで母乳で育てたいけれど、豊胸手術をしても大丈夫?」
「シリコンバッグや注入した脂肪が母乳に混ざったり、出にくくなったりしない?」
これから妊娠・出産を考えている方から、カウンセリングの場で非常によくいただくご質問の一つです。
結論からお伝えすると、豊胸手術を受けても将来の授乳には全く問題ありません。
私は日本形成外科学会認定の形成外科専門医として、がん研有明病院などで乳房再建手術を専門に手掛けてまいりました。また、私自身も3人の子どもを育てる母です。
今回は、乳腺や乳管の解剖学的な構造にも触れながら、「なぜ豊胸後も安心して授乳ができるのか」を医師の視点から分かりやすく解説します。
豊胸しても授乳できる?結論と母乳が出る仕組み
母乳が作られて赤ちゃんの口に届くメカニズムと、私たちが豊胸手術でアプローチする層は全く異なります。
母乳が作られる「乳腺」と通り道の「乳管」

- 乳腺組織: 血液中の栄養をもとに母乳を作り出す器官です。
- 乳管: 乳腺で作られた母乳を乳頭(乳首)まで運ぶパイプのような管です。
妊娠・出産に伴い、女性ホルモンの働きによって乳腺が発達し、作られた母乳が乳管を通って乳頭から分泌されます。
豊胸手術(脂肪注入豊胸・シリコンバッグ豊胸)を行う際、この「乳腺組織」や「乳管」を切除したり傷つけたりすることは基本的にありません。そのため、術後であっても母乳を作る機能や分泌する経路が損なわれる心配はなく、問題なく授乳を行っていただけます。
【動画解説】豊胸手術が授乳に影響しない理由
手術でアプローチする層と乳腺の位置関係について解説しています。
術式別に見る「豊胸と授乳」の安全性
代表的な豊胸術式である「シリコンバッグ豊胸」と「脂肪注入豊胸」それぞれにおいて、なぜ授乳に影響が出ないのかをご説明します。
① シリコンバッグ豊胸の場合


シリコンバッグを挿入するスペースは、主に「乳腺組織の下(大胸筋膜下)」または「大胸筋の下」です。
乳腺組織よりもさらに深い層にバッグを留置するため、乳腺や乳管にメスを入れることはありません。また、バッグの周囲には時間の経過とともに「被膜(カプセル)」という生体膜が形成され、バッグと乳腺組織はしっかりと隔てられます。シリコンが母乳の中に溶け出したり混ざったりすることもありませんのでご安心ください。
② 脂肪注入豊胸の場合

ご自身の太ももやお腹から採取・濃縮した脂肪を注入する際、一度に1箇所へまとめて注入するのではなく、「皮下組織」「大胸筋内」「大胸筋下」など複数の層へ細かく分散して注入します。
乳腺組織そのものを避けて周囲の層へ注入するため、乳管を傷つける心配はありません。定着した脂肪はご自身の自家組織(皮下脂肪)となるため、授乳機能や母乳の成分に悪影響を与えることはありません。
授乳に関するよくあるご質問(Q&A)
Q1. 豊胸後に母乳の出が悪くなることはありますか?
豊胸手術が原因で母乳の出が悪くなることは基本的にありません。母乳の分泌量はホルモンバランスや体質、産後の体調による影響が大きく、豊胸手術の有無とは無関係です。
Q2. 豊胸してから妊娠・授乳するまでにどれくらい期間を空けるべきですか?
手術による傷の治癒や組織の安定(ダウンタイムの終了)を考慮し、術後約6ヶ月〜1年程度空けてからの妊娠・授乳をおすすめしています。
Q3. 授乳後にバストが垂れたり縮んだりしたらどうなりますか?
授乳期は一時的に乳腺が大きく膨らみ、卒乳後に縮小するため、皮膚のたるみやデコルテの削げ感が気になる場合があります。これは豊胸の有無にかかわらず起こる生理的な変化ですが、卒乳後に改めて脂肪注入等でふっくらとしたボリュームを整えることも可能です。
まとめ:正しい知識で安心して豊胸をご検討ください
「豊胸をすると母乳が出なくなるのではないか」という不安は、乳腺や手術の仕組みを正しく知ることで解消できます。解剖学を熟知した専門医が適切な層にアプローチする限り、将来の妊娠・出産・授乳をあきらめる必要はありません。
私は形成外科専門医として、がん研有明病院などで乳房再建を専門に手掛け、乳房の精密な構造を深く学んでまいりました。
また、私自身も3人の子どもを育てており、女性の体の変化やそれに伴うリアルな悩みは実体験としてよく理解しています。
将来の妊娠や出産といったライフイベントも見据えて、医学的な根拠に基づいた最適な方法をご提案します。バストのことで不安な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。





