この記事は、「脂肪注入で豊胸した後のしこりが悪性化するか心配」といった方に向けた記事です。
まず結論からいうと、「脂肪注入豊胸後のしこりが悪性化することはありません」
ですが、しこりを長年放っておくと石灰化してしまい、そうすると痛みが出てしまったり、表面上にできると見栄えに影響する場合もあります。
小さいしこりはすぐに取ることも出来ますが、石灰化すると取り除くのが難しくなってしまいます。
今日は脂肪注入豊胸後にしこりが出来る原因や、対処法などについてお話したいと思います。
脂肪注入豊胸とは
脂肪注入豊胸とは、お腹周りや太もも、ヒップなどから吸引した脂肪をバストに注入する豊胸術のことです。ご自身の脂肪を使用するため、見た目も触り心地も限りなく自然なバストに仕上がります。
なぜ脂肪注入豊胸後にしこりが出来るのか?
①注入する脂肪の量が多い
脂肪注入で豊胸をすると、一般的に半分が生着して残り半分が吸収されると言われています。脂肪の注入量が多すぎると、その吸収が上手にできず、しこりが発生する可能性が高まります。
大幅なサイズアップを目指したいからといって、注入量を多くするとしこりのリスクが高まるので注意が必要です。
②脂肪を塊で注入する
1カ所にまとめて注入すると乳房内で塊になり、注入した脂肪細胞に酸素や栄養素が行き渡らなくなって壊死してしまいます。壊死した脂肪のボリュームが大きいと上手に体が吸収しなくて、しこりになってしまいます。
これを回避するために少量ずつ分散して注入する必要があります。
③脂肪に不純物が混ざっている
注入した脂肪に不純物(死活細胞や麻酔液などの水分)が混ざっていると、これらが脂肪細胞への栄養素の循環を妨げてしまい、しこりが発生します。
脂肪の不純物を取り除き、良質な脂肪細胞のみを注入する「コンデンスリッチ脂肪注入豊胸」という方法もあります。
コンデンス(濃縮)技術と呼ばれる方法で、採取した脂肪を外気に触れず遠心分離にかけ、石灰化や脂肪壊死の原因になる老化細胞を取り除き、定着に有利な細胞だけが濃縮された新鮮なコンデンスリッチファット(CRF)だけを仕分けることができます。こうすることで、1mlあたりの脂肪密度が高まり、注入後の脂肪定着率を高めます。
以上のことをまとめると、脂肪注入豊胸後のしこりのリスクを下げるためには
✓一度に多量の脂肪を注入しない
✓注入は分散して注入する
✓不純物を減らす
この3つが重要となります。
しこりは放っておくとどうなる?
脂肪注入豊胸後にできたしこりを長年放っておくと、石灰化してしまいます。
石灰化すると、
✓痛みがでる
✓表面上にできると見栄えに影響する場合がある
といったリスクがあります。
小さいしこりはすぐに取ることも出来ますが、石灰化すると取り除くのが難しくなってしまいます。
しこりが出来てしまった際の対処法
そのまま様子をみる
脂肪注入豊胸でできたしこりは悪性化することはありません。ですので、小さいしこりで特に支障がない場合はそのまま様子を見ても大丈夫なケースがほとんどです。
病院で診てもらう
豊胸でしこりができた場合、もしくはバストに異変が見られる場合、医療機関を受診するようにしましょう。
豊胸術によって発生するしこりは悪影響を及ぼさないとも言われていますが、全てのしこりが豊胸術によって発生したとは言い切れません。
しこりが豊胸術によるものと自己判断せずに、適切な診断を受けましょう。
そのまま様子観察でいい場合もありますし、診断結果に基づいて除去手術が必要となる場合もあります。
脂肪注入後のしこりの除去手術
数mm程度の小さなしこり
脂肪注入豊胸手術の際に注入した脂肪が定着せずに壊死して油になったものをオイルシストといいます。石灰化していない、数mm程度のオイルシストであれば、エコーで見ながら針を刺して中のオイルを抜ききってしまえば(穿刺吸引)治療が終了します。針で刺すだけなので、傷跡は残りません。
大きいしこり、石灰化したしこり
穿刺吸引では除去できなかった大きなしこりや石灰化したしこりの場合は、2~3cm程度の傷を開けて外科的に切除します。
傷跡の部位は、
・乳房の下縁に沿った切開
・乳輪周囲の切開
・腋(わき)のシワに沿った切開
極力目立たないような部位で切開、縫合します。抜糸は手術後1週間で可能です。
まとめ
脂肪注入豊胸後のしこりは悪性化するのかどうかについて説明しました。
脂肪注入豊胸後のしこりは悪性化することはないですが、しこりを長年放っておくと石灰化してしまい、
・痛みが出る
・表面上にできると見栄えに影響する
しこりの除去は、
・小さいものは穿刺吸引
・大きいものや石灰化したものは外科的に切除
脂肪注入豊胸後のしこりのリスクを下げるためには
・一度に多量の脂肪を注入しない
・注入は分散して注入する
・不純物を減らす
この3つが重要となります。
しこりについて色々説明しましたが、脂肪豊胸後のしこりの大きさや性状は様々で、基本は悪性化することはなく良性ですから過度な心配は不要です。
私は長年乳房再建の手術に携わり、インプラントバック豊胸はもちろん、お腹や太ももの自家組織をお胸に移植し、神経、血管など縫合しつなぎ合わせる難易度が高い乳房再建の手術もたくさん行ってきました。
豊胸において、求めるお胸の形を再現できる高い技術力と豊富な知識を兼ね備えていると自負しております。
他院で豊胸後のしこりがあるお胸の再手術も可能です。是非お気軽にご相談にお越しください。