【鼻整形修正】L型プロテーゼ摘出から再建まで|歪み・石灰化・癒着の現実

目次

はじめに

「昔、L型プロテーゼで鼻整形をしたけど、最近なんだか鼻が硬い」「鼻先が変に尖ってきた」「左右のバランスが崩れてきた気がする」——
こうしたご相談が、10年以上前に整形された患者さんから増えています。

今回ご紹介するのは、L型プロテーゼを摘出し、変形した鼻内部を再建した実例です。
外からは見えない「中で起きていた問題」と、それに対する再建手術のアプローチを、実際の手術動画を交えて解説します。

L型プロテーゼとは?その構造と“問題の芽”

L型プロテーゼとは、鼻筋から鼻先、さらには鼻柱まで一体型で挿入される、いわゆる「L字型」のシリコンプロテーゼです。
かつては主流の手術法でしたが、現在ではほとんど使用されなくなっています。

その理由は明確で、長期間の使用による複合的なリスクが存在するからです。

  • プロテーゼが鼻先の皮膚に接し続けることで皮膚が薄くなり、突き出してくる
  • 鼻の骨格や軟骨を押し潰し、変形させる
  • 周囲に炎症性の被膜や石灰化が生じる
  • 傾いたまま長年固定されると、見た目も機能も崩れてしまう

こうした背景から、今「L型プロテーゼを抜きたい」「再手術を検討したい」という方が増えているのです。

実際の症例|鼻の中で何が起きていたのか

今回の患者様も、かつてL型プロテーゼによる鼻整形を受けられた方です。
カウンセリングでは「何を入れたか覚えていない」とおっしゃっていましたが、CT検査の結果からL型プロテーゼの存在を確認できました。

《動画①》皮膚の動き・癒着チェック(術前)

👉 鼻尖部の皮膚を軽く動かしている様子です。
→ 通常は皮膚が動くはずの部位が、プロテーゼと癒着して全く動かない状態に。皮膚が薄く、自由度を失っていることが分かります。

手術で鼻を開いてみると、外からは分からなかった多くの問題が明らかになりました。

《動画②》オープン後、内部の状態を確認する場面

👉 鼻腔を展開した直後、プロテーゼの位置や鼻内部の状態を観察している様子です。
→ プロテーゼは右方向に傾き、鼻の正中からずれていることが明らかになりました。
→ 鼻先の軟骨は強く圧迫され、変形・沈み込みが見られます
→ さらに、プロテーゼ先端には石灰化が起きており、触ると非常に硬くなっているのがわかります。

患者さんが「鼻が曲がってきた」と感じていたのは、内部のズレや骨軟骨の変形だけでなく、こうした長期的な炎症の蓄積によるものでした。のは、プロテーゼの傾きと、それによる骨・軟骨への長期圧迫が原因だったのです。

《動画③》摘出したプロテーゼと軟骨の状態

👉 プロテーゼには自家軟骨が重ねられていた形跡があり、ナイロン糸で複数箇所に固定されていました。
→ これは20年以上前の手術でよく見られた方法で、現在は行っていません。
→ プロテーゼの上に軟骨を乗せても安定性に乏しく、癒着や変形の原因になります。

再建術の工夫|潰れた軟骨を“立て直す”方法

プロテーゼを除去しただけでは、鼻の機能や形は戻りません。
潰れてしまった軟骨、偏った支え、皮膚の菲薄化に対して、再建による立て直しが必要です。

今回の再建では、以下の3ステップを行いました。

  1. 鼻先にストラット(柱)を立てる
     → 肋軟骨を使用し、上から1本、太めの直立した軟骨柱を作成
  2. 左右から2枚の軟骨で挟み込む
     → 元の骨に接するように安定性と左右対称性を確保
  3. 変形軟骨の影響を受けない構造
     → 自立した柱構造で、既存軟骨の歪みを補正

再建後の変化|“まっすぐな鼻”はこうして作られる

プロテーゼを除去しただけでは、変形した軟骨やずれた軸は元に戻りません。
そこで今回の手術では、肋軟骨を使ったストラット構造によって、中心軸を再構築しました。

術後の再建構造

↑ 写真は、肋軟骨を用いて鼻尖にまっすぐな柱(ストラット)を再構築した状態です。
左右から挟み込むように配置した軟骨が、鼻筋をしっかりと中央に固定しています。

↑ こちらは再建後に軟骨の支えがしっかり固定されている様子です。
元の軟骨が曲がっていても、このストラット構造が独立して支えてくれるため、歪みの影響を受けません。。

プロテーゼ抜去は“ゴール”ではない|再建の重要性

ここで大切なポイントがあります。
プロテーゼを抜くだけでは、美しさも機能も取り戻せないということです。

  • 抜去後に鼻筋が潰れる・凹む
  • 皮膚が余ってたるむ
  • 元々の軟骨が変形していて形が保てない

こうした問題を回避するには、「抜去+再建」の一貫した治療計画が欠かせません。
また、事前のCT検査による状態把握が非常に重要です。

まとめ|プロテーゼ抜去だけでは終わらない、“構造再建”までが本当の修正手術

L型プロテーゼは、かつて多くの美容整形で使われていた術式ですが、長期的な経過の中で「ズレ」「石灰化」「皮膚の菲薄化」「軟骨の圧迫変形」など、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。

今回の症例では、実際に鼻の中で起きていた問題を可視化しながら丁寧に摘出し、変形した軟骨に対して“新たな支柱”を設計・再建することで、まっすぐで安定した鼻へと修正することができました。

ここで強調したいのは、「プロテーゼを抜いたら終わり」ではなく、「どう再建するか」こそが鼻整形修正の本質だということです。

修正術で重要な3つの視点

  • 内部構造(軟骨・皮膚・皮膜)の状態を正確に把握すること
  • 再建に必要な材料(自家軟骨など)と技術が揃っていること
  • 元のバランスや希望に合わせた“機能と美しさの両立”をめざすこと

鼻整形後に違和感がある、皮膚が硬くなってきた、曲がって見える…
そう感じたときは、単なる経年変化ではなく、内部でプロテーゼや軟骨に問題が起きているサインかもしれません

当院では、CT検査で内部構造を立体的に確認し、形成外科的な視点から「必要な部分を丁寧に再建する」鼻整形修正を行っています。

プロテーゼの抜去だけで済ませるのではなく、自分の鼻に合った「再設計」まで含めた修正を、医学的根拠にもとづいて検討することが、今後の見た目と機能の両面にとって非常に重要です。

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