人中とは鼻の真下から上唇までの間隔を指しており、人中が長いと、面長でのっぺりとした印象になります。
人中短縮術は、その人中を手術によって鼻の下を短くする治療です。
しかし、「希望通り人中を短くしたのに、なぜか満足いかない…。」といったことがよくあります。人中は短くなっても、唇がのぺっと平坦だと満足のいかない結果となることが多いです。もちろん盛り上がりすぎても凹んでもだめ。理想的な唇の形があります。
人中短縮で、かわいくなるために必要なことを今日は解説したいと思います。
まず結論から言うと、
① 人中は短くすればいいというわけではない
② 上唇の凹凸やバランスも大事
ということです。
人中とは
人中とは鼻の下から上唇に伸びる溝の部分を言います。
人中の真ん中のくぼみは人中窩(にんちゅうか)、その両側の盛り上がりを人中稜(にんちゅうりょう)といいます。
人中(鼻の下)が長いと、面長でのっぺりとした印象になります。
人中短縮は鼻の下を切開し、余分な皮膚を切除して鼻と唇の間の距離を縫い縮め、鼻の下を短くする治療です。鼻と唇の間の距離を短くすることによって、顔の印象が引き締まり、若々しい印象になります。鼻の下の付け根に沿って切開するので、傷はほとんど目立ちません。(※当院は切らない人中短縮もあります。)
上口唇の筋肉
(1)口輪筋:口を閉じ、口の周囲を前方に尖らせる
(2)鼻中隔下制筋:鼻中隔を下方にひく
(3)上唇鼻翼挙筋:上唇と鼻翼を引き上げる
(4)大頬骨筋:口角を上外側に引き上げる
(5)小頬骨筋:上唇を後上方に引き上げる
(6)口角挙上筋:口角を上に引き上げる
(7)笑筋:口角を横に引く
等の各種表情筋が存在し、全て顔面神経支配です。
上口唇の神経
三叉神経とは、顔の感覚(痛覚・触覚・温冷覚など)を脳に伝える末梢神経のひとつです。脳幹の橋という部分から出て、3本の枝(第1枝〜第3枝)に分かれ、皮膚にくまなく分布しています。
上口唇から口角までの皮膚と粘膜の知覚は全て三叉神経第2枝の眼窩下神経の分枝(上唇枝)に支配されています。上唇枝は眼窩下孔から骨膜上、口輪筋内を走行し多数の終末枝に分かれながら上口唇の皮膚粘膜に分布しています。
上口唇の血管走行
上口唇の血流は主に顔面動静脈の枝の上唇動静脈に支配されています。
上唇動静脈は人中正中で赤唇縁から鼻柱基部に向かって縦走する複数の枝を出し、それらは鼻唇溝から鼻翼鼻柱基部を内側に向かって走行する眼角動静脈の枝と吻合します。
口唇の神経と血管は走行する層を含めて三次元的に理解した上で施術を行う必要があります。
次に人中短縮について説明していきます。
人中短縮とは
人中とは鼻の真下から上唇までの間隔を指しており、人中が長いと、面長でのっぺりとした印象になります。
人中短縮術(別名:リップリフト)は、その人中の皮膚を切除し上下方向に短縮する術式です。鼻と唇の間の距離を短くすることによって、顔の印象が引き締まり、若返り効果や顔が小さく可愛らしく童顔に見える効果があります。
しかし、
「人中が長いからとにかく短くしたい!」
と安易に考えるのは絶対にだめです。
短くなりさえすれば可愛くなる人なんてほとんどいないです。
そんな単純ではありません。
三次元的な凹凸、立体感のバランスも必要なのです。
長さはその中のひとつの要素に過ぎません。
そのため、人中をただ短くするのではなく、上口唇のバランスやその他の部位の位置関係も考慮した上で、適切な治療方法を選択する必要があるのです。
人中と口元の黄金比
鼻の下から上唇までの距離と、下唇からあご先までの距離が、「1:2」になるのが、望ましいバランスだと言われています。
人中短縮のデザインについて
人中短縮はデザインが非常に重要です。切除量だけでなく、切除デザインもその方によりじっくり考える必要があります。
大きく分けて2つ分類項目があります。
① nostril sill(鼻孔底隆起)を残すか残さないか
ひとつはnostril sill(鼻孔底隆起)を残すか残さないか、つまり鼻腔内に切り込むかどうかです。
nostril sillを切って鼻腔内に切り込むと、傷は隠れますが、nostril sillの自然な形状は無くなって、白唇とが鼻腔内に入ることでのっぺりとした不自然な印象を与える可能性があります。
nostril sillを残すと、形は自然ですが、傷が比較的目立つ位置になります。
②2つ目はデザインをどこまで拡げるかどうか
2つ目はデザインをどこまで拡げるかどうかです。
最終的にできる傷の横幅で三段階に分けられます。
横幅を拡げると傷は長く目立ちますが、人中を広範囲で自然に挙上短縮することができます。
立体感のある口元にするために重要な『鼻唇角』と『Cカール』
人中はただ短くすればいいというわけではありません。
横顔のバランスや凹凸も考慮して施術を行う必要があります。
そのために必要な『鼻唇角』、『Cカール』について説明します。
鼻唇角とは
鼻唇角とは、鼻の付け根から鼻の先端までのラインと、鼻の付け根から上口唇までのラインの角度のことを言います。
Cカールを意識した人中短縮
綺麗なCカールを作るために、重要なポイントが3つあります。
① 鼻柱基部を持ち上げる
② 人中部分の凹凸
③ 上唇のカール
この3つをバランスよく行うことが重要です。
① は、
埋もれた鼻柱基部を前に出すことで、柔らかい印象になります。
適応術式:鼻柱基部軟骨移植(猫手術)、骨切り
② は、
人中窩という唇の真ん中に凹みを創ることで、のぺっとした口元に立体感が出ます。
適応術式:人中窩形成、骨切り、歯列矯正
③は、
上唇にボリュームを出したり、反り返るようにすることで、相対的に人中を凹ませる方法です。
適応術式:ヒアルロン酸、ボトックス
ひとつのポイントだけをなんとかしようとしても、綺麗なカールにはなりません。上口唇のバランスやその他の部位の位置関係も考慮した上で3つのポイントをおさえ、適切な治療方法を選択する必要があるのです。
要は、
「出すところは出して、引っ込めるところは引っ込める」
そうすることで綺麗なCカールを作ることができます。
では次に実際の症例をご紹介していきます。
実際の症例
症例1(19才 女性)
術式:鼻柱基部軟骨移植、鼻中隔延長、軟骨移植
鼻の低さと鼻から上口唇にかけてのバランス調節を主訴に来院されました。
鼻中隔延長は鼻中隔軟骨で行い、前方に3mm尾側に2mm延長しました。凹んだ鼻柱基部に耳介軟骨を移植し、鼻柱基部を前方に移動することで、鼻唇角の角度が鋭角から鈍角に変わり、口元の突出感が和らぎました。
症例2(31才 女性)
術式:上口唇軟部組織切除(皮膚切開を伴う人中短縮術)
他院で人中短縮術を受けたが術後に人中が平坦化したとのことでした。上口唇の形態改善とさらに人中を短くしたいと希望し来院されました。
人中長は18mmで4mm皮膚切除しました。皮下脂肪と口輪筋も一部切除し厚みを調節、さらに口輪筋や粘膜下層も引き上げて処理することで、横からみた時にのぺっと平らな感じの上唇が、丸みのある綺麗なCカールとなりました。正面から見た際の人中も短縮されています。
症例3(22才 女性)
術式:人中短縮(皮膚を切らない)鼻柱下降 鼻尖形成 鼻翼縮小 他院修正
他院で鼻翼縮小術、耳介軟骨を用いた鼻尖形成術と鼻中隔延長術を受けられていました。口元の突出感と外鼻形態を改善したいと来院されました。
鼻翼の傷あとを修正し、鼻尖から鼻柱基部に耳介軟骨を移植しました。
上口唇の粘膜を切開し、人中の皮下脂肪と口輪筋の一部を切除し、唇の形と長さを調整しています。
横から見た際に、人中は理想的な角度となり、口元の突出感も軽減しました。
まとめ
人中短縮術で重要なポイントを実際の症例を混じえながら解説しました。
「人中は短ければ短いほどいい」というわけではないことがご理解いただけたかと思います。そんな単純ではありません。
三次元的な凹凸、立体感のバランスも必要なのです。
長さはその中のひとつの要素に過ぎません。
そのため、人中をただ短くするのではなく、上口唇のバランスやその他の部位の位置関係も考慮した上で、適切な治療方法を選択する必要があるのです。
当院では、患者さまの今の形態や希望を考慮した上で、組織の厚みや凹凸を調節して鼻唇角(鼻柱と上唇の角度)や口唇結節とのバランスが取れた美しい形をつくります。
今回このブログで書いたことを、形成外科雑誌PEPARS「顔面の美容外科Basic & Advance<増大号>」で詳しく執筆しています。
今回の症例の治療内容について
【症例1】
施術内容:鼻柱基部軟骨移植、鼻中隔延長、軟骨移植
施術費用:\1,350,000
※これ以外に、検査費用・麻酔費用等がかかることがあります。
リスク:術後の痛み、腫れ ・内出血 ・鼻の穴の引きつれ ・鼻尖の違和感 ・鼻閉感(鼻が通りにくい感じ) ・感染(化膿) ・血種 ・創部離開 ・糸が露出する ・鼻尖の曲がり、変形 ・鼻柱が分厚くなる ・鼻柱が凸凹する ・延長した鼻が長すぎる・鼻尖が高すぎる ・延長した鼻が短すぎる・鼻尖が低すぎる ・傷跡の盛り上がり・凹み・色素沈着
【症例2】
施術内容:上口唇軟部組織切除(皮膚切開を伴う人中短縮術)
施術費用:\420,000
※これ以外に、検査費用・麻酔費用等がかかることがあります。
リスク:術後は腫れや内出血、違和感を伴います。
感染や出血、キズ、感覚異常、後戻り、ガミースマイル、鼻翼の広がり術前の説明との相違等の可能性があります。
【症例3】
施術内容:人中短縮(皮膚を切らない)鼻柱下降 鼻尖形成 鼻翼縮小 他院修正
施術費用:\1,200,000
※これ以外に、検査費用・麻酔費用等がかかることがあります。
リスク:術後は腫れや内出血、違和感を伴います。
感染や出血、キズ、感覚異常、後戻り、ガミースマイル、鼻翼の広がり術前の説明との相違等の可能性があります。