「アイプチ歴が長いと埋没が取れやすい」は本当?まぶたの変化と取れにくい術式の選び方

「そろそろアイプチをやめて、埋没にしようかな」と考えたとき、ネットで気になる情報を目にした方は多いと思います。

「アイプチ歴が長いと、埋没の糸が取れやすい」

これは本当なのか?もし本当だとしたら、どう対処すればいいのか?

このコラムでは、アイプチがまぶたに与える影響と、取れにくい埋没にするための術式の考え方を、実際の症例をまじえながら整理します。

目次

アイプチを長年使い続けると、まぶたに何が起きるか

アイプチやテープは、まぶたの皮膚を折り込んで二重のラインを作るものです。毎日使い続けることで、皮膚が引っ張られる力が少しずつ積み重なっていきます。

その結果として起きやすいのが「皮膚の伸び」です。

皮膚が伸びると、まぶたにかぶさる皮膚の量が増えます。するとラインが入りにくくなり、入ったとしても皮膚の重みでラインが埋もれやすくなります。「以前はアイプチで簡単に二重が作れたのに、最近うまくいかない」と感じるようになるのは、こうした変化が積み重なっているからです。また、まつ毛の生え際が皮膚に隠れてくる、目が全体的に重たく見えるといった変化もここから来ています。

さらに、アイプチを毎日貼ってはがすことで、皮膚に慢性的な摩擦が加わります。これが皮膚のごわつきや色素沈着につながることがあり、まぶたの皮膚の質そのものに影響を与えることもあります。

使い始めは短期間でも二重が作れていたのが、年数が経つほどに作りにくくなっていく、というのはこのような仕組みによるものです。

「取れやすい」は本当か?

結論から言うと、「まったくの嘘」ではありません。

皮膚が伸びてかぶさりや厚みが増すほど、埋没の糸にかかる負荷は大きくなります。負荷が大きければ、糸がほどけたり、ラインの中に埋もれていったりするリスクは高まります。その意味では、アイプチの長期使用が埋没の持続性に影響する可能性は確かにあります。

ただし、「アイプチ歴が長いから埋没はできない」「どうせすぐ取れるから意味がない」というのは正確ではありません。

大切なのは、現状のまぶたの状態を正確に把握し、その状態に合った術式を選ぶことです。まぶたの皮膚の厚みや伸び具合、脂肪の量、皮膚のかぶさり方によって、対応できる術式の選択肢は変わります。「アイプチ歴がある=埋没NG」ではなく、「まぶたの状態に合った方法を選べるかどうか」が本質的な問いです。

取れにくい埋没にするための術式の考え方

埋没法にはいくつかの種類がありますが、大きく分けると「表留め」と「裏留め」の2つがあります。

表留めと裏留めの違い

表留めは、まぶたの表側(皮膚側)から糸を通して固定する方法です。手術時間が短く、腫れも比較的出にくいのが特徴です。まぶたの状態が良好で、皮膚の伸びや脂肪の多さがそれほど問題にならない方に向いています。

裏留めは、まぶたの裏側(結膜側)から糸を通して固定する方法です。糸の結び目がまぶたの裏に収まるため、表側からは見えません。固定する位置がまぶたの動きに近い深い層になるため、ラインが安定しやすいという特徴があります。アイプチの影響で皮膚が伸びている方の場合、裏留めのほうが糸の固定力を活かしやすいケースがあります。

ループ数の考え方

糸のループ数についても、よく質問をいただきます。1ループより2ループのほうが固定点が増えるぶん、持続性が高まりやすいとされています。

ただし、「ループ数が多ければ多いほど良い」というものでもありません。ループを増やすほど、まぶたへの負担も増えます。まぶたの厚みや脂肪の量、皮膚の状態に合わせて、過不足のない数を選ぶことが重要です。

本当に大切なのは「内部処理の精度」

点数やループ数は、取れにくさを考えるうえで一つの指標にはなります。しかし、最終的な持続性を左右するのは「どこに・どの深さで・どういう方向に固定するか」という内部処理の判断です。

まぶたは薄い皮膚・脂肪・軟骨・筋肉が複雑に重なった構造をしています。その構造を正確に把握したうえで、一人ひとりのまぶたに合った糸の通し方を選ぶことが、取れにくく自然な仕上がりにつながります。「何点留めか」より「どう留めるか」のほうが、実は重要な問いです。

症例紹介:長年のアイプチで作りにくくなった二重を埋没で整えた症例

担当医師:前之園健太医師
術式:二重埋没法(裏留め2ループ)
経過:術後1ヶ月

二重埋没(裏留め2ループ)前之園健太医師症例
二重埋没(裏留め2ループ)前之園健太医師症例
二重埋没(裏留め2ループ)前之園健太医師症例

長年アイプチを使い続ける中で、「以前より二重が作りにくくなってきた」「まぶたが重く、つり目っぽく見える」というお悩みで来院された患者様の症例です。

診察では、アイプチの影響でまぶたの皮膚がやや伸び、まつ毛の生え際が隠れている状態でした。皮膚のたるみの量は比較的軽度で、切開法ではなく埋没法が適応と判断しました。

今回のデザインで重視したのは「幅を広げること」ではなく「見え方を整えること」です。

皮膚がかぶさった状態のまま幅だけを広げると、目が細く見えたり、つり目のような印象になることがあります。そのため今回は、まつ毛のキワが目頭から自然に見えるよう、ラインの高さ・角度・固定位置を細かく調整しました。

術後は重たく見えていた印象が改善し、目頭からまつ毛の生え際が自然に見える仕上がりになっています。アイプチを長年使っていたことで皮膚の伸びが生じていましたが、裏留め2ループの選択と内部処理の調整により、安定したラインを形成することができた症例です。

埋没ではなく切開が必要なケースもある

アイプチ歴があっても、埋没法で整えられるケースは多くあります。ただし、まぶたの状態によっては切開法のほうが適しているケースもあります。

皮膚のたるみが強い、まぶたの脂肪が多い、過去に埋没を繰り返して糸が複数残っているといった場合、埋没法だけでは対応しきれないことがあります。こうしたケースでは、全切開法や部分切開法を含めた選択肢を検討する必要があります。

また、「まぶたが重くて開きにくい」という症状がある場合は、二重のラインの問題ではなく眼瞼下垂(まぶたを持ち上げる筋肉の機能低下)が原因のこともあります。この場合、埋没法や切開法ではなく眼瞼下垂の手術が必要になります。

「自分は埋没でいけるのか、切開が必要なのか」は、診察なしに判断することはできません。まぶたの皮膚の厚みや伸び具合、たるみの量、筋肉の状態などを実際に確認したうえで、最適な術式をご提案しています。

まとめ

アイプチの長期使用がまぶたに影響を与えることはあります。皮膚が伸びることで埋没の糸への負荷が増し、取れやすくなるリスクが高まるのは事実です。ただし、それだけで「埋没は無理」と決まるわけではありません。

取れにくい埋没を実現するには、まぶたの現状を正確に把握し、裏留め・ループ数・固定位置の選択を適切に判断することが重要です。そしてその判断は、まぶたの構造を解剖学的に理解した医師でなければ、正確に行うことができません。

「アイプチをやめて埋没を考えている」「過去に埋没が取れた経験がある」「自分のまぶたの状態が気になる」という方は、まず一度ご相談ください。診察のうえで、現実的な選択肢をお伝えします。

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