鼻翼基部(びよくきぶ)プロテーゼは、鼻の付け根から口元にかけてのへこみを補い、顔全体の立体感を整える手術です。
鼻の下が長く見える「間延び顔」や、口元が前に出て見える「口ゴボ」を改善できる一方で、「笑ったときに不自然にならないか?」と心配される方も少なくありません。
今回は、鼻翼基部手術後の笑顔の変化と、自然に仕上げるために僕が大切にしている“素材選び”についてお話しします。
鼻翼基部の笑顔が不自然になる原因
鼻翼基部にプロテーゼを入れると、手術直後は上唇や小鼻の動きが制限されるため、「笑うと引きつる」「上唇が上がりにくい」と感じることがあります。
これは、プロテーゼがまだ周囲組織になじんでいないためで、数週間〜数ヶ月のうちに自然と改善していきます。
ただし、プロテーゼの形状や入れる位置によっては、長期的に動きが硬く見えることもあります。特に表情の豊かな方は、この違和感を感じやすい傾向があります。
当院では「プロテーゼ」より「軟骨移植」を主に採用
僕自身は、鼻翼基部のボリューム補正にはプロテーゼではなく、肋軟骨などの自家組織(自分の軟骨)を使うことがほとんどです。
理由は大きく3つあります。
- 表情の動きが自然に出る
軟骨は柔らかく、筋肉や皮膚と一体化しやすいため、笑っても突っ張りにくいです。 - 感染やズレのリスクが低い
異物であるシリコンと違い、軟骨は自分の組織なので拒絶反応が起こりません。 - 細かい形の調整が可能
プロテーゼでは厚みを均一にしかできませんが、軟骨なら“土手”を自然に連続させるように形成できます。
つまり、「笑顔までデザインする」には軟骨移植の方が有利なんです。
鼻翼基部手術は「単独」より「全体設計」で考える
鼻翼基部だけを単独で出すと、
小鼻が外に張って見えることがあります。
そのため僕は、
- 鼻先形成
- 貴族手術(鼻翼基部軟骨移植)
- 鼻中隔延長
などを同時にデザインすることで、立体的で自然な中顔面を作るようにしています。
「部分的に出す」ではなく、
“支点の位置”を整えることで全体の調和をとるのが大切です。
鼻翼基部に軟骨を入れる方法
当院で行う鼻翼基部軟骨移植では、ブロック状の硬い軟骨ではなく、細片(さいへん)と呼ばれる細かく砕いた軟骨を使用します。
これを丁寧に層状に重ねることで、
- なじみやすく
- 段差が出ず
- 自然な動きが保たれる
ように設計しています。
この方法では金属ピンなどの固定は不要です。
体の一部として穏やかに定着していきます。
笑顔が自然に戻るまでの期間
軟骨移植後も、一時的に腫れや硬さで笑顔に違和感を感じる時期があります。
多くの方は、
- 軽度な腫れ:2〜3週間ほどで自然に
- 深めの移植や併用手術:1〜3ヶ月ほどで安定
という経過をたどります。
術後は無理に大きく笑わず、
軽く微笑む程度で表情の動きを慣らしていくとスムーズです。
まとめ
鼻翼基部の手術は、笑顔の印象を左右する繊細な領域です。
プロテーゼでも立体感は出せますが、
動きの自然さ・長期安定性を考えると軟骨移植が最もバランスが良いと感じます。
僕は「形」だけでなく「動き」まで含めてデザインすることを大切にしています。
笑ったときに美しく自然であること──
それが本当の意味での“整った顔”だと思います。

