「なんとなく人より大きい気がする…」
「パートナーに見られるのが恥ずかしい」
「デリケートゾーンがこすれて痛いことがある」
小陰唇の形や大きさについて、誰にも相談できずに悩んでいる方は意外と多くいらっしゃいます。SNSなどで「小陰唇縮小をした」という情報を目にすると、「もしかして、私も切った方がいいのかな…?」と不安になる方もいるかもしれません。
今回は、形成外科専門医である私・木下恵里沙が、“小陰唇の正常なサイズ”というものが本当にあるのか?
そして、「切った方がいい」と判断するポイントについて、医療的な視点からわかりやすく解説します。
小陰唇の“正常なサイズ”ってあるの?
正解は「とても個人差が大きい部位です」
まず最初にお伝えしたいのは、小陰唇に“正常なサイズ”という医学的な基準は存在しないということです。
長さも厚みも、色も形も、人それぞれまったく違うのが当たり前であり、「〇cm以下が普通」「〇〇の形が理想」といった“基準”はどこにもありません。
中には、「大陰唇から小陰唇が1cm以上出ていると異常」という情報を目にした方もいるかもしれませんが、それはあくまで誰かの主観や美容的なイメージにすぎません。
実際には、2〜3cm出ている方でも全く問題のない生活を送っている方がほとんどです。
小陰唇の形や左右差は、耳や乳頭と同じように“個性”であって、異常ではありません。
“小陰唇の役割と構造”

小陰唇は、大陰唇の内側にある薄いひだ状の皮膚で、尿道や膣の入り口を守るように存在しています。皮膚というよりは粘膜に近く、非常に柔らかくデリケートな組織です。
見た目だけでは判断しにくいですが、実は小陰唇にはとても大切な生理的・保護的な役割があります。
デリケートゾーンの“保護”機能
小陰唇は、膣口や尿道口に異物や細菌が侵入するのを防ぐ天然のカバーのような働きをしています。とくに下着や衣類による摩擦から粘膜を守るバリアとなり、乾燥や傷つきを防いでくれます。
また、排尿時には尿の方向を整えるなどの補助的な役割も果たしています。
感覚器としての役割
小陰唇の表面には感覚神経が豊富に分布しており、性感にも関係する部位です。触覚や温度などの刺激を敏感にキャッチし、性的快感にも関与します。
手術の際はこの神経の走行をなるべく損なわないよう、繊細な操作が必要となります。
ライフステージで変化する組織
小陰唇のサイズや色、厚みは、思春期・出産・加齢によって変化します。特に思春期に急激に成長し、左右差が出てくることも珍しくありません。
また、女性ホルモンの影響で妊娠中や更年期にも変化が起こることがあり、こうした“ライフステージによる自然な変化”を異常と捉える必要はありません。
「大陰唇よりはみ出してる=異常」ではありません
重要なのは“機能”と“本人の悩みの程度”
外見だけを見て「大陰唇よりはみ出ている=手術対象」と思われることもありますが、はみ出ていること自体は全く問題ではありません。
当院でも、左右差がある方、片側だけが張り出している方、色が濃い・しわがあるなど、さまざまな個性を持った患者様がいらっしゃいますが、それらは決して「異常」ではなく、自然な個体差です。
むしろ、見た目ではなく、日常生活で困っていることがあるかどうかが重要な判断ポイントとなります。
手術を考えるべき“医学的に必要なケース”とは?
痛み・摩擦・衛生面などの支障があるなら適応です
美容的な悩みよりも、まず優先して考えるべきは、生活の中で機能的に困っているかどうかです。
以下のような症状がある方は、医学的な視点からも手術を検討する価値があります。
主な手術適応の例
- 小陰唇が下着にこすれて痛い、赤くなる
- 自転車や長時間の歩行で擦れてヒリヒリする
- 尿がまっすぐ出ず、分かれて飛び散る
- 排尿後に小陰唇に尿がついて残り、かぶれる
- 性交時に引っかかって痛い
- 炎症や感染を繰り返している
このように、見た目の問題よりも“機能的な困りごと”がある方には、縮小手術が非常に有効です。
「見た目は気になるけど困ってない」場合はどうする?
手術は義務ではなく、自分の気持ちを大切に
「少し出てるのが気になる」「温泉やパートナーとの関係で恥ずかしい」といった理由も、決して軽視すべきではない悩みです。
見た目のコンプレックスが自信のなさや気分の落ち込みにつながっている場合、手術を通じて前向きになれる方も多くいらっしゃいます。
ただし、以下のような状況であれば、焦って手術を決断する必要はありません。
- 他人と比べて不安になっただけ
- 一時的に気になっただけ
- 口コミやSNSで見て影響された気持ち
「本当に私は変わりたいのか?」という気持ちに向き合う時間を持つことが、後悔しないためにとても大切です。
手術に迷っている方へ|医師としての正直なアドバイス
小陰唇縮小は「やらなければいけない手術」ではありません。
むしろ、自分の価値観と、日常生活の困りごと、そして“納得感”が大切です。
以下の3つを、確認してみてください。
- 生活に支障がある症状があるか?
- 自分の体を見たときに“本当に気になる”と思っているか?
- 変わりたいという“前向きな意思”があるか?
このうち1つでも当てはまれば、カウンセリングだけでも受けてみる価値は十分あると思います。
形成外科専門医だからできる、自然で安全な小陰唇縮小
私はこれまで、乳房再建・顔面の再建手術・女性器形成など、繊細な形状形成が必要な外科を数多く経験してきました。
その経験から、ただ「切る」のではなく、感覚や見た目の自然さを保ちながら、日常生活での快適さを取り戻す手術を心がけています。
当院のこだわり
- 厚み・左右差・将来の感覚まで評価してデザイン
- 溶ける糸で縫合し、抜糸不要・通院最小限(※糸は吸収、非吸収選択可)
- 術後の腫れや痛みに配慮した繊細な手術操作
- 傷跡が目立ちにくく、自然な仕上がり
女性医師だからこそ話せる悩み、一人で抱え込まず、どうぞ安心してご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 手術はどのくらい時間がかかりますか?
A. 局所麻酔で行い、通常は30〜60分ほどで終了します。日帰り手術が可能で、術後はすぐにご帰宅いただけます。
Q2. 術後の痛みや腫れはどの程度ありますか?
A. 術後1週間ほどは腫れや軽度の痛み、違和感があります。歩行や排尿時に軽い刺激を感じることもありますが、日常生活は可能です。痛み止めを処方いたしますので、必要に応じてご使用ください。
Q3. 術後はどのくらいで普段通りの生活に戻れますか?
A. 通常は術後2〜3日でデスクワーク程度のお仕事には復帰できます。軽い運動は2週間後から、性行為や自転車・激しい運動などは1ヶ月以降が目安です。
Q4. 傷跡はどれくらい残りますか?
A. 小陰唇は粘膜に近い組織なので、時間の経過とともに傷跡はほとんど目立たなくなります。術後1〜2ヶ月で赤みが引き、最終的な仕上がりは3〜6ヶ月ほどかけて落ち着きます。
Q5. 性行為はいつから再開できますか?
A. 性行為は、傷の治癒や感覚の回復を考慮して、手術から約1ヶ月以降が目安です。ただし、個人差があるため、痛みや違和感が完全になくなってからをおすすめします。
Q6. 術後にナプキンは必要ですか?
A. はい、術後数日間は滲出液や微量の出血がみられることがあるため、清潔を保つためにもナプキンの使用が推奨されます。ナプキンは柔らかいタイプを選ぶと快適です。
Q7. 将来の出産や性機能に影響はありますか?
A. 小陰唇縮小は外陰部のみに行う手術のため、妊娠・出産や性機能に影響することはありません。性感帯や神経を避けて丁寧に手術を行いますので、ご安心ください。
まとめ
小陰唇の大きさや形に「普通」や「正解」はありません。
SNSや美容情報があふれる時代だからこそ、「見た目がはみ出ている=異常」と思ってしまう方も多いのですが、実際にはとても個人差が大きく、それぞれが“その人らしさ”です。
とはいえ、
- 下着に擦れて痛い
- 自転車に乗ると違和感がある
- 性交時に引っかかる感じがある
- パートナーに見られるのが恥ずかしい
こういった悩みが日常の中でふと気になるなら、それは“自分らしく過ごすために向き合っていい悩み”です。
私はこれまで、形成外科医として再建手術から美容医療まで幅広い女性の手術に携わってきました。
そして、同じ女性として、デリケートゾーンに関する悩みがどれほど相談しにくく、長く抱えがちなものかもよく理解しています。
この手術は“見た目を変える”ことが目的ではなく、
「痛みがない」「違和感がない」「自信を持てる」――そうした自然な状態で過ごせる毎日を取り戻すことが本質です。
私は医師としてだけでなく、女性としての視点も大切にしながら、一人ひとりに寄り添ったご提案と手術を行っています。
小さな悩みでも構いません。
気になることがあれば、どうぞ安心してご相談ください。

