この記事は 木下 恵里沙 医師(形成外科専門医・美容外科医) が監修しています。
デリケートゾーンの色や形は、人によって大きく異なります。
「昔より色が濃くなった気がする」「左右で違いがある」――
そう感じて不安になる方は少なくありません。
小陰唇の黒ずみは、誰にでも起こり得る生理的な変化です。
多くは体質や刺激によるもので、病気や不潔さとは関係ありません。
ただ、見た目の印象や清潔感に関わる部分でもあるため、気になる方が多いのも事実です。
ここでは、形成外科専門医の立場から、黒ずみの原因と治療法をわかりやすく解説します。
黒ずみは“誰にでも起こり得る生理的な変化”です
小陰唇は、外陰部の中でも粘膜に近い柔らかい皮膚でできています。
この部位はメラニンという色素を多く含み、刺激やホルモンの影響を受けやすい構造です。
そのため、摩擦や加齢、ホルモンバランスの変化などによって徐々に色が濃く見えるようになります。
もともとの肌の色や体質によって個人差があり、左右で色味が違うことも珍しくありません。
つまり、小陰唇の色味には幅広い「正常の範囲」があり、多少の黒ずみは特別な異常ではありません。
黒ずみが濃くなる主な原因
① 摩擦や刺激
下着やナプキン、自己処理(カミソリ・シェーバー)などによる摩擦が、最も多い原因です。
特にサイズが合っていない下着や、化繊素材など通気性の悪い布地は皮膚への刺激を強め、長期間続くことで色素沈着が生じやすくなります。
また、汗やムレによる軽い炎症を繰り返すことも、黒ずみを進行させる要因になります。
② ホルモンバランスや加齢
妊娠中や思春期、更年期など、女性ホルモンの変動によってメラニンが作られやすくなります。これは乳首や脇の色が濃くなるのと同じしくみで、身体が自然に変化していく過程のひとつです。
また、加齢により皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)が遅れると、一度沈着したメラニンが排出されにくくなり、色が残りやすくなります。
③ 小陰唇の形や大きさによる擦れ
小陰唇がやや大きい方では、歩行や運動のたびに下着と擦れやすくなります。摩擦が続くことで、皮膚が厚くなったり黒ずみが強くなったりすることがあります。この場合は、「色」だけでなく「形」も一緒に整える治療が効果的です。
日常でできるケアと予防
まずは、日常生活の中でできる小さな工夫から始めてみましょう。
- 通気性の良い下着(綿やシルクなど)を選ぶ
- 下着やナプキンはこまめに交換する
- 自己処理は避け、医療脱毛など刺激の少ない方法を選ぶ
- 入浴後に保湿クリームでやさしくケアする
これらを意識するだけでも、慢性的な刺激を減らすことができます。
また、医療機関で処方される美白外用薬(トラネキサム酸・ハイドロキノン・ビタミンC誘導体など)を用いて、皮膚のターンオーバーを整える治療も効果的です。
ただし、市販薬を自己判断で使用すると、かえって炎症を起こすこともあります。安全にケアするためには、必ず医師の診察を受けて、自分の肌に合った方法を選びましょう。
「形と色」を同時に整える小陰唇縮小術

黒ずみが外側に集中している場合や、小陰唇が大きく擦れやすい方には、小陰唇縮小術が選択肢になります。
小陰唇縮小術は、余分な皮膚を整えることでバランスを取り、黒ずんだ部分を自然に取り除くことができる形成外科的な手術です。見た目を整えるだけでなく、擦れやムレの解消など「機能面」の改善にもつながります。
手術は局所麻酔で行い、日帰りが可能です。
腫れや軽い痛みは数日で落ち着き、1〜2週間で普段の生活に戻れます。抜糸の有無やデザインの方法によって仕上がりが変わるため、経験豊富な形成外科医に相談することが大切です。
術後の経過と過ごし方
術後は腫れや内出血が出ることがありますが、ほとんどが1週間ほどで改善します。
翌日からシャワーは可能で、抜糸ありの場合でも1〜2週間で落ち着きます。
生理や性交渉は、傷の回復を待って医師の許可が出てから再開しましょう。
手術後に注意したいのは、
・下着やナプキンとの摩擦を避けること
・入浴時に石けんで強く洗わないこと
・清潔を保ちつつ、乾燥を防ぐ保湿ケアを続けること
正しいアフターケアを行うことで、より自然で美しい仕上がりを保つことができます。
まとめ:気になる黒ずみは“自然なこと”でも、改善は可能です
小陰唇の黒ずみは、誰にでも起こり得る生理的な変化です。
放っておいても問題がない場合がほとんどですが、見た目や擦れなどで気になるときは、形成外科的な治療で改善できます。
「形と色を整える」というと美容目的に聞こえるかもしれませんが、実際には清潔さや快適さを取り戻すための医療でもあります。
私は医師としてだけでなく、女性としての視点も大切にしながら、一人ひとりに寄り添ったご提案と手術を行っています。
小さな悩みでも構いません。気になることがあれば、どうぞ安心してご相談ください。

