鷲鼻の原因と治し方|ハンプ切除でなめらかな鼻筋に整える方法

この記事は 望月 正人 医師(形成外科専門医・美容外科専門医) が監修しています。

横顔を鏡で見たとき、鼻の真ん中がゴツゴツと出っ張っているように見えて気になったことはありませんか?
この出っ張りは「鷲鼻(わしばな/ワシ鼻)」と呼ばれる状態です。英語では“hump nose”とも表現され、鼻骨や軟骨が盛り上がることで、横顔に独特のラインが出てきます。

鷲鼻は必ずしも「悪いもの」ではありません。欧米では個性や力強さを感じさせる特徴として好まれることもあります。ですが、日本人の顔立ちでは「きつく見える」「老けて見える」「魔女鼻のように見える」といったネガティブな印象に結びつくことが少なくありません。

私のクリニックにも、鷲鼻で悩む方がよく相談に来られます。
たとえばこんなお声です。

  • 「横顔を写真に撮ると、鼻だけが強調されて見える」
  • 「鼻筋を高くしたいと思ってヒアルロン酸を入れたら、逆に大きな鼻に見えてしまった」
  • 「小鼻や鼻先の形は気にならないけれど、鼻の真ん中の出っ張りだけをなんとかしたい」

このような悩みを抱える方に対して、根本的な改善をもたらすのが「ハンプ切除」という手術です。
ハンプとは、鼻の骨や軟骨が盛り上がっている部分を指します。その突出を削ってなめらかな鼻筋に整えることで、自然で上品な横顔に近づけることができます。

本コラムでは、鷲鼻の特徴や原因、そして治し方としてのハンプ切除について、実際の症例写真も交えながら詳しく解説していきます。
「鼻を高くしたいけれど大きな印象にはなりたくない」「自然な横顔を手に入れたい」と考えている方にとって、治療を検討する上で参考になるはずです。

目次

鷲鼻とは?特徴と原因

鷲鼻の特徴

鷲鼻の特徴

鷲鼻とは、鼻筋の途中が前方に盛り上がって見える状態を指します。
医学的には「ハンプ」と呼ばれる骨・軟骨の突出によって起こるもので、横から見たときに鼻のラインがなめらかではなく、段差や出っ張りが目立ちます。

一般的な鼻のラインは、眉間から鼻先にかけてゆるやかに下がり、自然なカーブを描きます。
しかし鷲鼻の場合は、鼻骨と鼻軟骨が交わるあたりが高くなるため、ラインが途切れたり、角度が急になったりして「ゴツゴツした印象」「魔女鼻のようなライン」に見えるのです。

鷲鼻の特徴としてよく挙げられるのは次のようなものです。

  • 横顔で鼻が大きく見える
  • 顔の中心にボリュームが集まり、きつい印象に見える
  • 鼻筋を高くするとさらに出っ張りが強調されてしまう
  • メイクでカバーしづらい

特に写真や鏡で横顔を見たときに気づくことが多く、「真正面から見ると分かりにくいけれど、横顔に自信が持てない」と来院される方も少なくありません。

鷲鼻の原因

鷲鼻は先天的な要素が大きく、骨格の影響によって生じます。

  1. 遺伝的な要因
    ご両親や祖父母の顔立ちに似て、鼻骨が発達しているケース。
  2. 成長期の変化
    思春期に骨や軟骨が成長する過程で、鼻背(鼻の背中部分)が盛り上がることがあります。
  3. 外傷による変形
    過去に鼻を強くぶつけたり骨折した既往がある場合、骨の癒合の仕方によって突出が生じることがあります。
  4. 加齢による変化
    年齢を重ねると皮膚や軟部組織が下がり、もともとの骨の出っ張りが強調されやすくなります。

このように鷲鼻は「骨格的な特徴」であるため、ヒアルロン酸や糸リフトのような“盛る治療”では根本的に解決できません。
むしろ高さを加えることで、さらに鼻が大きく見えてしまうことすらあります。

根本的に鷲鼻を改善するには、出っ張りそのものを削る「ハンプ切除」が有効です。

鷲鼻の治し方|注入・軟骨移植・ハンプ切除

鷲鼻を目立たなくする方法には、「注入でカバーする方法」「軟骨移植で鼻筋を整える方法」、そして「ハンプ切除による根本的な改善」があります。


1. ヒアルロン酸注入

ヒアルロン酸を鼻筋に注入して、出っ張りの前後を高くすることで段差をなだらかに見せることは可能です。
ダウンタイムが少なく、手軽にできるというメリットはあります。

しかし鷲鼻の場合、高さを加えることで鼻全体が大きく見えるリスクが高いのが問題です。
もともと「鼻が大きく見えるのがイヤ」と悩んでいる方にとって、ヒアルロン酸はむしろ逆効果になるケースが少なくありません。

そのため私は、鷲鼻の改善目的でヒアルロン酸を使うことはおすすめしていません


2. 軟骨移植による隆鼻術

当院では、隆鼻術はプロテーゼではなく軟骨移植(自分の耳や肋軟骨を利用する方法)をメインに行っています。
プロテーゼは異物であるため、将来的なリスクや不自然さが懸念されます。
一方、軟骨移植は自分の組織を使うため、なじみが良く、長期的にも安定した結果が得られやすいのが特徴です。

ただし、鷲鼻の出っ張りがそのまま残っている状態で軟骨を移植しても、段差が強調されてしまう可能性があります。
そのため、隆鼻で段差部分を高くする場合でも、必ずハンプ切除を組み合わせることが望ましいです。


3. ハンプ切除(根本的な方法)

鷲鼻を根本から治す方法が「ハンプ切除」です。
鼻骨や軟骨の突出部分を直接削ることで、鼻筋をなめらかなラインに整えられます。

  • 鼻筋を通したいけれど、大きく見えるのはイヤ
  • 横顔を自然で上品に見せたい
  • 鷲鼻を根本的に改善したい

このような方には、もっとも適した方法です。

また、ハンプ切除は単独でも行えますが、鼻中隔延長や骨切りと組み合わせることで全体の調和を取りながら仕上げることが可能です。
顔全体の骨格バランスを見ながらデザインすることが、自然で美しい横顔をつくるために重要だと考えています。

ハンプ切除とは?手術の流れ・メリットとデメリット

ハンプ切除とは

ハンプ切除

ハンプ切除とは、鼻筋の途中にある骨や軟骨の出っ張り(ハンプ)を削り取る手術です。
突出をなくすことで、眉間から鼻先にかけてのラインがなめらかになり、横顔がすっきりと整います。

鷲鼻を根本的に改善する唯一の方法であり、注入や軟骨移植だけでは得られない効果が期待できます。


手術の流れ

ハンプ切除では、鼻の内側を切開し、そこから鼻骨の出っ張った部分を切除し隆起を平らにします。ハンプの大きさによっては鼻骨骨切りを組み合わせて行うこともあります。傷跡もかなり小さいので目立ちません。その後ギブスで固定し、鼻筋を安定させます。


メリット

  • 横顔の印象がやわらかくなる
    ゴツゴツしたラインがなくなり、自然で上品な鼻筋に近づきます。
  • 鼻を高くしなくても美しく見える
    出っ張りを整えるだけで、顔全体のバランスが改善します。
  • 老けて見える印象の改善
    魔女鼻・老婆鼻と呼ばれるような印象がなくなり、若々しい印象になります。

デメリット・リスク

  • 削りすぎによる鞍鼻(サドルノーズ)
    出っ張りを取りすぎると、逆に鼻筋が凹んでしまうリスクがあります。
  • 左右差や段差が残る可能性
    骨と軟骨の境界は個人差があるため、術後に微妙な段差が残ることもあります。
  • 腫れ・内出血
    手術後は1〜2週間程度、腫れや内出血が出ることがあります。
  • 仕上がりは個人の骨格に左右される
    もともとの鼻の高さや皮膚の厚みなどによって、得られる効果は変わります。

ハンプ切除は「ただ出っ張りを削れば良い」という単純な手術ではなく、削る量の見極めと全体のバランス調整が非常に重要です。
私は手術の際、必ず横顔のラインだけでなく、正面から見た印象や中顔面とのバランスも考慮してデザインしています。

症例紹介:鼻中隔延長+ハンプ切除

鼻中隔延長+ハンプ切除 症例
鼻中隔延長+ハンプ切除 症例
鼻中隔延長+ハンプ切除 症例
鼻中隔延長+ハンプ切除 症例

今回の症例は、鼻筋の途中にハンプ(骨の出っ張り)がある鷲鼻の方です。
横顔でゴツゴツとしたラインが強調されており、そのまま鼻を高くしてしまうと「大きすぎる鼻」に見えてしまうリスクがありました。

手術方法

  • ハンプ切除:鼻の中央の骨と軟骨の膨らみを削って、鼻筋をなめらかに整えました。
  • 鼻中隔延長:鼻先に軟骨を移植して、鼻先の位置をコントロールしました。

この2つを組み合わせることで、鼻筋は通っているのに「大きく見えない」自然な仕上がりを実現しました。


術後の変化(Before / After)

  • Before
    ・鼻の真ん中が前方に突出し、横顔でゴツゴツ感が強調されていた
    ・鼻筋を高くするとさらにボリュームが増して見える状態
  • After(術後1か月)
    ・鼻筋の段差がなくなり、なめらかなラインに整った
    ・鼻先が自然に前方へ出たことで、Eラインがバランス良く形成された
    ・横顔全体が上品でやさしい印象になった

鷲鼻の方に「高さを出す」だけの治療をすると、どうしても鼻が大きく見えてしまいます。
今回のようにハンプを削って余分なボリュームをなくし、そのうえで鼻先を整えると、顔全体に調和した自然な横顔をつくることができます。

まとめ

鷲鼻は、鼻の真ん中に骨や軟骨の出っ張りがあることで、横顔のラインがゴツゴツと見えてしまう状態です。
「魔女鼻」「老婆鼻」と表現されることもあり、きつい・老けて見えると悩まれる方が多くいらっしゃいます。

ヒアルロン酸や軟骨移植で一時的に段差をぼかすことはできますが、鼻が大きく見えるリスクがあるため、根本的な解決にはなりません。
鷲鼻を改善する唯一の根本治療が「ハンプ切除」であり、必要に応じて鼻中隔延長・鼻尖形成・骨切りなどを組み合わせることで、自然で上品な横顔をデザインできます。

今回ご紹介した症例のように、「鼻筋は通したいけれど、大きく見えるのはイヤ」という方には特に適した方法です。

手術は「ただ出っ張りを削れば良い」という単純なものではなく、削る量の見極めや全体のバランスの調整が不可欠です。
私はこれまで多くの鷲鼻の方のご相談を受けてきましたが、ひとりとして同じ形の鼻はありません。
だからこそ、顔全体の骨格や雰囲気に合わせたオーダーメイドのデザインが大切だと考えています。

鷲鼻でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
ご自身の顔立ちに合わせた最適な治療法をご提案いたします。

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