【症例解説】口唇裂で変形した鼻の修正手術|耳介軟骨+皮膚の一体移植で“丸み”を再建


目次

「唇の手術は終わったのに、鼻の形が気になる…」

口唇裂は唇の先天異常として知られていますが、実際には“鼻の変形”も強く関わってくる疾患です。

  • 鼻の縁が左右で違う
  • 鼻の穴が変形している
  • 鼻の下が潰れて広がって見える

こうした状態は、幼少期に受けた口唇裂修正の影響や、骨格・軟部組織の発育によって起こることが多く、見た目だけでなく呼吸や発音にも関係します


術前の状態|鼻の縁が潰れ、広がった印象に

今回の患者様も、口唇裂の手術のあと、保険診療で鼻孔縁下降の手術を受け、耳介軟骨を移植されていました。

しかし
✅ 鼻の縁は下がったまま潰れた状態
✅ 軟骨を入れても見た目の左右差は改善せず

という状態でした。


なぜ形が崩れたのか?構造上の“落とし穴”

鼻の縁(鼻孔縁)を下げるには、軟骨だけでなく皮膚の補填も必要です。

鼻の縁=「中身を支える骨+覆う皮膚」

過去の手術では軟骨のみを移植したため、皮膚が足りず潰れてしまったと考えられます。
このような構造不全には、「皮膚と軟骨を一体化した再建」が必要です。


今回の手術|耳介軟骨と皮膚の一体移植で再構築

アプローチの概要

  • 耳の軟骨と3mm幅の皮膚を一体化して採取
  • 鼻の縁のカーブに合うように湾曲加工した軟骨を作成
  • 皮膚側を表面に出して、潰れていた縁をふっくら補強

手術直後の状態

  • 鼻孔縁の左右差が改善
  • 鼻の縁に自然な丸みと立体感が生まれた
  • 呼吸路も開放され、機能面の安定性も確保

比較で見る変化|“左右対称”な縁に

術前と術後の比較では、潰れて下がっていた鼻の縁が整い、対称性が大きく改善されています。


「人中短縮後の変形」も、実は同じ構造問題

今回ご紹介したような「鼻孔縁の潰れ」や「縁の非対称」は、口唇裂だけに特有のものではありません
実は、美容目的で行われる人中短縮手術(リップリフト)のあとにも、同様の構造崩壊が起きてしまうことがあります

人中短縮では、鼻の下の皮膚を切除して縫い上げることで、鼻柱を中心とした皮膚や軟部組織に強いテンションがかかります

このとき──

  • 鼻柱が後方へ引っ張られ、潰れたような印象になる
  • 鼻翼が横に引かれ、小鼻が開いて見える
  • 鼻孔縁の丸みがなくなり、不自然なカーブになる

といった現象が起きやすくなります。

これは皮膚を切除したことで「覆う組織が不足した」状態になっているためで、口唇裂の術後と同様に「皮膚と軟骨の構造バランスが崩れたことが原因」と考えられます。

つまり、人中短縮後の鼻変形も“構造的な欠損”から起こる問題であり、
・ただ軟骨を足すだけ、
・切除部を寄せて縫うだけ、
では根本的な改善にはつながりません。

必要なのは、皮膚・軟骨を含めた“立体的な構造再建”です。
僕たちは、人中短縮後の鼻変形に対しても、今回のような「皮膚+軟骨の一体移植」や「内部構造の再設計」を組み合わせることで、自然で安定した形へと修正しています。


まとめ

美容外科では、「鼻先を整える」「小鼻を小さくする」など、目に見える変化に注目が集まりがちです。
けれど、本当に壊れにくく、長く美しさを保てる整形を目指すなら、見た目ではなく構造そのものに目を向けなければなりません。

僕たちマエクリが大切にしているのは、「構造から整える」という考え方です。

鼻を支えているのは、軟骨・靱帯・皮膚・血流といった組織が連動する複雑な構造体。
そのうちどこか一部でもバランスが崩れれば、他の部位にもひずみが生じ、結果として形の乱れや機能の低下を招きます。

特に再建手術や他院修正では、

  • どこに軟部組織が不足しているか
  • どの方向に引っ張られているか
  • どこに“支点”を作れば自然な動きが戻るか

といった要素を、解剖学と構造力学の視点から分析することが不可欠です。

構造を正せば、見た目は自然とついてきます。
その逆はありません。


まとめ|構造を見直すことで、再建は可能です

鼻の再建手術は、見た目の修正だけでなく、構造そのものをどう立て直すかが問われる高度な治療です。
過去の手術で一度処理された組織には、瘢痕や癒着、血流の変化などが生じており、それを理解したうえで再構築できるかどうかが結果を左右します

僕自身、これまで多くの再建・修正症例を担当してきました。
・口唇裂後の鼻変形
・人中短縮後の鼻の縁の潰れ
・他院で行われた不十分な軟骨移植の修正 など、
複雑な構造異常に対して、皮膚・軟骨・軟部組織を総合的に設計し直すことで、安定した結果を出してきた自負があります。

マエクリでは、単なる整形ではなく“構造的な再建”を専門的に行っている数少ないクリニックのひとつとして、個々の解剖と状態に応じた治療設計を重視しています。

修正や再建において重要なのは、「どこをどれだけ治せるか」を冷静に判断し、それを無理なく、確実に形にできる技術と経験があるかどうかです。

もし過去の手術で悩みを抱えているなら、ぜひお気軽にカウンセリングにお越しください。

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