「鼻先がシャープ」「鼻筋が通っている」「小鼻が小さい」──そんな理想の鼻でも、「なぜかバランスが悪い」と感じたことはありませんか?
その原因は、鼻そのものではなく中顔面の凹みにあるかもしれません。
中顔面とは目の下から口元までの範囲。この部分がへこんでいると、鼻だけが際立ち、不自然に見えることがあります。
顔全体のバランスが整っていなければ、どんなに理想的な鼻も“なんか変”に感じられるのです。
その中顔面の凹みを改善するのが「猫貴族手術」です。今日はその猫貴族手術について解説します。
中顔面が凹んでいると及ぼす影響

中顔面が凹んでいることが他の部位にどんな影響を及ぼすのでしょうか?
整容的に問題となるのは鼻翼基部や鼻柱基部の凹みです。ここは鼻先の土台となるところで、建物で言うと基礎の部分にあたります。
この中顔面にあたる鼻翼基部や鼻柱基部が後退している(凹んでいる)ことで、以下のような“見た目の悩み”が生じやすくなります。

横顔で鼻が埋まって見える
鼻そのものが低いわけではなくても、土台である鼻柱基部や鼻翼基部が凹んでいることで、鼻先が頬に埋もれたように見え、メリハリのない横顔になりがちです。
鼻唇角が鋭くなり、口元が前に出て見える
鼻柱と上唇がなす角度(鼻唇角)が狭くなることで、人中が長く見えたり、口元が突き出して見えるといった印象を与えます。いわゆる「口ゴボ」にも見えやすくなります。
顔全体がのっぺりと平坦な印象に
中顔面の凹みは、顔に奥行きや立体感がなくなる原因となり、光の陰影がつきづらいため、表情が乏しく見えたり、実年齢よりも老けて見えることもあります。
このような見た目の変化は、骨格的な要因によるものが大きく、特に東アジア人(日本人を含む)は、欧米人と比べて鼻翼基部や上顎の骨格が後方に位置しやすい傾向にあります。
そのため、いわゆる「ディッシュフェイス(dish face)」と呼ばれる凹んだ顔貌が起こりやすくなるのです。
中顔面の凹みを解消するには「猫貴族手術」

中顔面の凹みを根本から改善する方法として有効なのが、凹んだ鼻翼基部や鼻柱基部に硬い移植物を移植する手術です。
この手術では、柔らかいヒアルロン酸や脂肪ではなく、軟骨や骨、プロテーゼといった硬い素材を使用します。柔らかい素材では時間とともに変形したり吸収されたりする可能性がありますが、硬い素材であれば土台からしっかりと中顔面を支えることができます。
つまり、凹んだ顔の土台を硬い移植物で持ち上げ、顔全体の立体感を整える──これが「猫貴族手術」の本質です。
単なる見た目の調整ではなく、構造的な改善を目的とした治療法なのです。
この手術が向いている方
・中顔面が凹んでいる方
・顔に立体感がない方
・鼻翼基部、鼻柱基部が凹んでいる方
・口元が出ているように見える方
猫貴族手術:手術方法と移植材料について
猫貴族の手術方法
猫貴族手術では、中顔面の土台となる鼻翼基部や鼻柱基部に、硬い移植物を正確に留置するためのスペース(ポケット)を骨膜上に作成します。
アプローチ方法は、鼻翼の内側、鼻柱、または口腔内から選択され、使用する移植物の種類や併用する他の手術内容に応じて適切に決定されます。
形成したスペースに、軟骨、骨、プロテーゼなどの硬質な移植物を挿入します。ヒアルロン酸や脂肪などの柔らかい素材は時間とともに吸収・変形しやすいため、長期的に安定した支持力を得るには不向きです。中顔面をしっかりと支えるには、変形しにくく構造を保ちやすい硬質素材の使用が望まれます。
こうして凹んだ部分に硬い素材を移植することで、
鼻翼基部:凹んだ部位が前方に持ち上がり、顔に立体感が生まれ、ほうれい線の軽減や口元の突出感の改善が期待できます。
鼻柱基部:鼻唇角の角度を鋭角→鈍角に変化させ、口元の突出感を和らげ、横顔の印象を整える効果が期待できます。
こうして土台から中顔面を持ち上げることで、顔全体に自然な立体感を生み出します。凹みをただ埋めるのではなく、顔の構造そのものを再構築するのが猫貴族手術です。
移植材料について
手術では、鼻柱基部・鼻翼基部にポケットを作成し、軟骨やプロテーゼを移植・固定します。使用する移植材料にはそれぞれ特性があり、目的や状態に応じて選択されます。
材料 | 特徴(メリット) | 注意点・デメリット | よく使われる部位 |
---|---|---|---|
耳介軟骨 | 傷跡が目立たず、採取が比較的簡単 | 採取できる量が少ない | 鼻柱基部、補助的移植 |
肋軟骨 | 大量に採取でき、しっかりとした形成が可能 | 採取部への負担がやや大きい | 複数部位(鼻中隔延長など) |
シリコンプロテーゼ | 感染に強く、取り出しやすい | 触れるとわかることがある | 鼻柱基部・鼻翼基部 |
ゴアテックス | 自然な質感でズレにくい | 取り出しにくい | 鼻翼基部など |
当院では、猫貴族手術は鼻整形と同時に行うことが多いため、肋軟骨を使用するケースが多いです。肋軟骨は十分な量が確保できるため、中顔面全体のバランスを整える際に適しています。
また、ブロック状(塊)のまま移植すると皮膚の上から触れてわかりやすくなるため、当院では細かく砕いた“細片軟骨”として使用し、より自然な仕上がりを目指しています。
リスクとデメリット(および対処法)
猫貴族手術は、顔全体のバランスを整える上で非常に有効な手術ですが、以下のようなリスクやデメリットが起こる可能性もあります。当院では、これらを最小限に抑えるよう、術前のシミュレーションや素材選び、術後のケアを徹底しています。
リスク・デメリット | 内容・原因 | 対処法・予防策 |
---|---|---|
① 移植物が触れる | 皮膚が薄い場合や、ブロック状の移植物を使用した場合に触感として現れることがあります。 | 細かく砕いた細片軟骨を使用し、外から触れにくくなるよう調整します。 |
② 表情の違和感(特に笑顔) | 笑ったときに筋肉の動きと移植物の位置が干渉し、違和感を覚えるケースがあります。 | 表情筋の動きを考慮した移植位置・サイズ設計を行い、術後の表情変化も想定したプランで対応します。 |
③ 感染・血腫・腫れ | 手術に伴う一般的なリスクで、まれに起こることがあります。 | 清潔な環境での施術、術後の抗生剤・定期チェックで早期発見・早期対応を行います。 |
④ 小鼻が広がって見える | 鼻翼基部が持ち上がることで、相対的に小鼻が広がったように見えることがあります。 | 必要に応じて小鼻縮小術で調整し、バランスを保ちます。 |
⑤ 鼻が低く見える | 鼻翼基部を前に出すと、鼻筋との高低差が目立ち、鼻が低く見える場合があります。 | 鼻中隔延長や隆鼻術で高さを補い、全体の立体感を調整します。 |
実際の症例










まとめ 〜顔の立体感を総合的に考える〜
「理想の鼻になりたい」と思ったとき、大切なのはパーツ単体の美しさではなく、顔全体との調和と立体感です。
中顔面の凹みを土台から整える「猫貴族手術」は、単に高さを出すのではなく、構造的な美しさと自然なバランスを生み出す施術です。
僕自身、鼻整形だけでなく中顔面形成も得意としており、輪郭や表情筋、さらには体格まで含めた立体構造全体のバランスを重視しています。
鼻や口唇といった一部位だけを整えると、かえって不自然さが際立つこともあります。
だからこそ、鼻翼や口唇、頬、顎などとの位置関係を丁寧に見極めたうえで、治療法を計画することが何より重要だと考えています。
一人ひとり異なる骨格や印象に合わせて、“本当に似合う美しさ”をデザインする。
そのためのカウンセリング・診察・手術を、丁寧にご提供しています。
「もう少しだけ印象を整えたい」「横顔に立体感が欲しい」──そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。

