豊胸のシリコンバッグは一生持つ?医師が解説する「寿命」とメンテナンスの実際

この記事は 木下 恵里沙 医師(形成外科専門医・美容外科医) が監修しています。

目次

シリコンバッグは「一生もの」って本当?

「シリコンバッグ豊胸は一生もの」と言われることがありますが、
医学的にみると“一生持つ可能性はあるが、必ずしも永久ではない”というのが正確な表現です。

シリコンバッグは医療用の高品質な素材で作られ、長期にわたって安全に体内で維持できます。
しかし、人体に入るすべての人工物と同じく、経年による劣化や変化の可能性を完全にゼロにはできません。

医学的に「永久」と言えない理由

バッグの外膜(シェル)は強度の高いシリコンで作られていますが、
年月の経過とともに摩耗や微細な亀裂が起きることがあります。
また、強い衝撃や圧迫、加齢による皮膚の変化によって、バッグの位置や形が変わる場合もあります。

「10年で入れ替え」の根拠と現在の考え方

以前は「10年で入れ替えるのが理想」と言われていました。
これは、1990年代までの旧タイプのバッグ(中身が液状シリコンだった時代)の耐久性が今より低かったことが理由です。

現在のバッグは格段に改良されており、
10年経過しても破損や変形がないケースが多いため、
必ずしも入れ替えが必要とは限りません。

つまり、「10年」はあくまで目安であり、実際は状態を見て判断するのが正しい考え方です。


現在のシリコンバッグが長持ちする理由

コヒーシブシリコンの進化

近年の豊胸バッグは「コヒーシブシリコンジェル」という、
弾力と形状保持力のあるジェルが使われています。
破れても中身が流れ出ない構造で、万一の破損でも安全性が高いのが特徴です。

また、触感も非常に自然で、柔らかさと弾力のバランスに優れています。

被膜拘縮を起こしにくい設計

手術後、体はバッグを異物と認識して「被膜」という薄い膜を作ります。
これは自然な反応ですが、被膜が硬くなると胸が丸く盛り上がったり、硬く感じたりすることがあります。
近年のバッグは表面のテクスチャー(ざらつき)を工夫することで、
被膜拘縮の発生率を大きく低下させています。

主要メーカーの保証制度

Motiva、Mentor、Polytechなどの主要メーカーは、
製品破損やシェル破れに対する長期保証制度を設けています。
中には、10年以上経過しても再手術費用を一部サポートするメーカーもあります。
これらの制度は、バッグの信頼性が高まっている証拠です。


入れ替えが必要になるのはどんなとき?

バッグの入れ替えが必要になるのは、主にトラブルが起きた場合です。
特に多いのは次の2つです。

被膜拘縮

前述のように、バッグの周囲にできる被膜が硬く厚くなると、
胸が不自然に硬くなったり、形が丸く盛り上がるように変形することがあります。
この場合は被膜を除去して新しいバッグに入れ替えることで改善が可能です。

拘縮の原因は、体質、出血や感染、手術技術など複合的ですが、
近年は拘縮発生率がかなり低くなっています。

破損・位置のずれ・左右差

バッグが破れると、触感や形が変化します。
現在のバッグでは内容物が漏れ出ることはほとんどありませんが、
変形や硬さの違和感で気づくことがあります。

また、長年の重力や姿勢の癖によりバッグの位置が下がったり、
左右差が強調されるケースもあります。
その際は入れ替えまたは修正手術を検討します。

加齢による形の変化

加齢によって皮膚や乳腺が下垂すると、バッグの位置にズレが生じることがあります。
バッグ自体が問題でなくても、バランスを整える目的で入れ替えを行うこともあります。


長く安全に使うためのメンテナンス

検診のタイミングと検査内容

バッグの状態は外から見ても分かりづらいため、
手術後1年・以降は2〜3年ごとの検診をおすすめします。

超音波検査やMRIで、

  • バッグの破損の有無
  • 被膜の厚み
  • 周囲の炎症反応
    を確認できます。

特に「形が変わった」「硬くなった」「痛みがある」と感じた場合は、早めの受診が大切です。

バッグを長持ちさせる生活上のポイント

  1. 体重の急な増減を避ける
     → 胸の皮膚が伸び縮みしすぎると、バッグに負担がかかります。
  2. 強いマッサージや圧迫をしない
     → 最近のバッグは自然な位置で固定されるため、過度なマッサージは不要です。
  3. 正しい下着で支える
     → 特に術後半年は安定させるため、サポートブラの着用が重要です。

放置してはいけないサイン

  • 胸の硬さや形が変わってきた
  • 触ると痛みがある
  • 左右差が強くなった
  • 胸が小さくなったように感じる

これらの変化は、バッグや被膜にトラブルが起きているサインの可能性があります。
早期に検査を受けることで、再手術を最小限に抑えることができます。


まとめ:一生持たせるには“定期検診”が鍵

シリコンバッグは非常に信頼性の高い医療材料で、
丁寧に扱えば10年、20年と長期間きれいな状態を保つことが可能です。

ただし、「一生入れっぱなしで何も起きない」とは限りません。
経年変化や体の変化に合わせて、定期的に状態を確認することが、長持ちの秘訣です。

もし豊胸手術から年月が経っている方、
または違和感を感じている方は、一度クリニックで検診を受けてみてください。
きちんとメンテナンスを行えば、シリコンバッグは“安心して長く付き合える一生のパートナー”になります。

木下 恵里沙 医師の他の症例

この記事をシェアする
目次
閉じる