この記事は 前之園 健太 医師(美容外科医・整形外科専門医) が監修しています。
「まぶたが重くて眠たそうに見える」
「二重のラインが出にくい」
「年齢とともに目が小さくなった気がする」
こうしたご相談で来院される方はとても多いです。
しかし、原因はひとつではありません。
大きく分けると、
- 目を開く筋肉の力が弱い(眼瞼下垂)
- 皮膚が余ってかぶさっている(皮膚のたるみ)
この2つが関係しています。
そしてそれぞれに対応する代表的な手術が、眼瞼下垂手術と眉下リフトです。
名前は似ていませんが、患者さんの中では「どちらが自分に合っているのかわからない」と混同されることが多い部分です。
今回は、この2つの手術の違いをわかりやすく解説していきます。
眼瞼下垂手術とは?

眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)の働きが弱くなり、目が十分に開けられない状態のことを指します。
眼瞼下垂手術の目的は、「目を開く力を強める」こと。
具体的には、まぶたの奥で筋肉や腱膜を処理して、まぶたを引き上げる力を改善します。
特徴
- 黒目が大きく見えるようになり、目力がアップする
- 二重のラインもはっきりして、眠たそうな目がパッチリする
- 若い方でも「目つきが悪い」「眠そう」と言われる悩みに適応
適応になるケース
- 目の開きが弱く、常に力を入れていないと視界が狭い
- 二重にしても眠そうに見えてしまう
- まぶたの筋肉の衰えを感じる
弱点
- 皮膚のたるみそのものは改善しない
- 年齢が上がると「開きは良くなったけれど、皮膚がかぶさっている」という問題が残ることもある
眉下リフトとは?

眉下リフトは、眉毛のすぐ下の皮膚を切除して縫い合わせることで、余分なたるみを取り除き、まぶたを軽くする手術です。
特徴
- 上まぶたの皮膚のかぶさりを直接取り除ける
- 二重のラインが隠れてしまった方も、再びラインが見えるようになる
- 傷跡は眉毛の下に隠れるため、比較的目立ちにくい
適応になるケース
- 年齢とともに皮膚の余りが増え、二重が隠れてきた
- 目の開き自体は悪くないのに、まぶたが重く感じる
- アイプチやメイクで二重が作れない原因が「皮膚のたるみ」である場合
弱点
- 目を開く力そのものは改善しないため、「眠たそうな目」の原因が筋肉の弱さにある場合は効果が不十分
- 切除量が多いと、二重が広がりすぎたり、目元の印象が変わることがある
- つり目っぽく見える可能性もゼロではない

「目を開く力」が弱い場合 → 眼瞼下垂手術が必要
「皮膚の余り」による重さ → 眉下リフトが有効
術後の仕上がりの違い
眼瞼下垂手術と眉下リフトは、どちらも「まぶたの重さを改善して目を大きく見せる」効果がありますが、仕上がりには明確な違いがあります。
眼瞼下垂手術の仕上がり
- 黒目がしっかり見えるようになり、目の開きが改善
- 眠たそうな印象がなくなり、目力のあるハッキリとした二重に
- 特に「目の開きそのものが弱い方」では劇的な変化を感じやすい
ただし、皮膚の余りや厚みが残っていると、二重の上にたるみがかぶさることもあるため、追加で眉下リフトや皮膚切除を組み合わせる場合があります。
眉下リフトの仕上がり
- 上まぶたの余分な皮膚が取り除かれることで、二重ラインがはっきり出る
- まぶたの重さが減り、スッキリと軽い印象に
- 40代以降の「二重が隠れてきた」「まぶたが厚く見える」という悩みに有効
ただし、目を開く力が弱い方では「開きが改善しない」「眠そうな印象が残る」という可能性があります。その場合は眼瞼下垂手術との併用が必要になります。

眼瞼下垂手術 → 目を開く力を強くしてパッチリ二重に
眉下リフト → 皮膚の余りを取ってスッキリ自然に
どちらを選ぶべきか?──適応の見分け方
「眼瞼下垂手術と眉下リフト、どちらが自分に合っているのか?」
多くの患者さんが迷うポイントです。実は判断のカギはとてもシンプルで、「目を開く力の問題なのか」「皮膚の余りの問題なのか」 という点にあります。
眼瞼下垂手術が向いているケース
- まぶたを開く力が弱く、黒目がしっかり見えていない
- 二重にしても眠たそうに見える
- 若い年代でも「目つきが悪い」と言われることがある
- 額の筋肉(眉毛)を無意識に使って目を開けている
このような場合は、根本的に「目を開く力」を強める必要があり、眼瞼下垂手術が有効です。
眉下リフトが向いているケース
- 目の開き自体は悪くないが、皮膚の余りで二重が隠れている
- 加齢でまぶたが重く感じる
- アイプチで二重は作れるが、皮膚の厚みで自然に維持できない
- 「若いころの二重に戻したい」という希望がある
このような場合は「皮膚のたるみ」を取り除く眉下リフトが適しています。
両方を組み合わせるケース
- 目の開きも弱く、かつ皮膚の余りも多い
- 「眠たそうな印象」+「二重がかぶさって見えない」という二重の問題が同時にある
- 50代以降で、開瞼機能の低下と皮膚のたるみが重なっている
この場合、眼瞼下垂手術+眉下リフト の併用で、より自然で若々しい仕上がりになります。
まとめ
眼瞼下垂手術と眉下リフトは、どちらも「まぶたを軽くして目を大きく見せる」ための手術ですが、その役割は全く異なります。
- 眼瞼下垂手術:目を開く筋肉を強め、眠たそうな印象を改善する
- 眉下リフト:余分な皮膚を取り除き、二重ラインをはっきり出す
つまり、
「目を開く力が弱い人」には眼瞼下垂手術が、
「皮膚の余りが多い人」には眉下リフトが向いている、ということです。
そして、どちらか一方で十分なケースもあれば、両方を組み合わせた方が自然で若々しい目元になるケースもあります。
自分では「たるみが原因」と思っていても、実際には「目を開く力の弱さ」が大きな要因になっていることも少なくありません。逆に「眼瞼下垂だと思っていたら、皮膚の余りだけだった」という方も多いです。
最も大切なのは、診察でしっかり原因を見極めること。
そのうえで、自分に合った方法を選ぶことが、自然で後悔のない仕上がりにつながります。