小鼻(鼻翼)の広がりや大きさが気になり、小さく整えたいと考える方は非常に多いです。 しかし、いざ手術を検討し始めると、インターネットやSNSで「小鼻縮小の失敗例」を目にしてしまい、恐怖心を抱く方も少なくありません。
「鼻の穴がコンセントのように不自然な形になった」 「笑った時にひきつれが起きる」 「鼻の下の“土手”がなくなり、のっぺりとした顔になった」 「鼻水が垂れやすくなった気がする」
これらは、決して珍しいトラブルではありません。なぜ、美しくなるための手術でこのような「不自然さ」や「機能障害」が生まれてしまうのでしょうか。
その最大の原因は、「鼻の土手(Nasal Sill)」に対する配慮の欠如と、「ただ切り取って縫えばいい」という安易な手術設計にあります。
小鼻縮小は、美容外科の手術の中でも特に「一度切り取ってしまうと、二度と元に戻せない」という不可逆性の高い手術です。だからこそ、切除のデザインと、組織をどう処理するかという技術が結果を左右します。
今回は、僕が執刀した実際の手術動画をもとに、土手がなくならない小鼻縮小の方法について解説します。
美しい小鼻の絶対条件「鼻の土手」とは?
まず、手術の話に入る前に、小鼻縮小において最も守らなければならない解剖学的構造についてお話しします。それが「鼻の土手」です。
「土手」が作る鼻の立体感
鏡を持って、ご自身の鼻の穴の下を見てみてください。 鼻の穴の入り口下部(人中との境目)に、ふっくらとした堤防のような隆起があるはずです。これが「土手(Nasal Sill)」です。
この土手には、単なる皮膚の膨らみ以上の、以下の重要な役割があります。
- 鼻の穴を隠す視覚的バリア: 土手が壁となることで、下からの視線を遮り、鼻の穴を正面から見えにくくしています。
- 自然な丸みの形成: 鼻の穴の形を、人工的な鋭角ではなく、やわらかい「丸型・卵型」に保っています。
- 機能的なダム: 鼻腔内の分泌物(鼻水)がすぐに垂れてこないよう、物理的な「ダム」の役割を果たしています。
一般的な手術が招く「土手の消失」


しかし、一般的な小鼻縮小術(特に安易な内側法や、単純な切除縫合)では、鼻の幅を狭くすることだけを優先し、この土手の部分をスパッと直線的に切り落としてしまうケースが多々あります。
土手を切り取って無理やり縫い合わせると、どうなるか。 鼻の下のふくらみが消滅し、鼻の穴の床と人中(鼻の下)がなだらかな坂道のように繋がってしまいます。 すると、正面から鼻の穴が丸見えになり、鼻の穴の形も「無理やり寄せたような鋭角な三角形」や「コンセントの差し込み口」のような不自然な形状になってしまうのです。
動画解説「皮弁」を入れ替える技術
では、どうすれば土手を残しながら小鼻を小さくできるのでしょうか。 ここで登場するのが、僕が専門とする形成外科・再建外科のテクニック「皮弁法」です。
「切り取る」のではなく「活用する」
動画の0:15あたりで、「皮弁を入れ替えているので、切り口が変わっている」と解説しています。
通常の小鼻縮小(単純切除)では、余分な皮膚は単に切除されてしまいます。 しかし、私の行う「皮弁法」では、その組織を無駄にはしません。血流を保った状態の組織片(これを医学用語で「皮弁」と呼びます)を作成し、それを土手の形成材料として有効活用します。
具体的には、本来なら切除してしまう皮膚の一部を、血流を残した状態で皮弁として温存します。そして、その皮弁をパズルのピースのように回転させたり、スライドさせたりして、鼻の穴の内側(土手があった場所)に埋め込むのです。
土手の再構築
この操作によって、皮膚自体は切除して幅を狭めているにも関わらず、土手となるボリュームはしっかり残っている(あるいは新しく作られている)という状態になります。
移動させた皮弁が、新しい土手の材料になるのです。 これにより、術後の鼻の穴の形は、カクカクとした鋭角にならず、生まれつきのようななめらかな丸みを描くことができます。
「切って小さくする」のではなく、「組織を移動させて形を作り変える」。 これが、形成外科専門医としての視点に基づいたアプローチです。
小鼻縮小の弱点をカバーする「鼻翼挙上」
今回の動画には、土手の温存ともう一つ、非常に重要なポイントが含まれています。 それは「鼻翼挙上」の併用です。
小鼻縮小の構造的弱点「小鼻が下がる」
動画の0:36付近で、僕は「小鼻縮小の弱点である、小鼻が下がってしまうことをカバーしている」と述べています。
実は、小鼻を横方向に縮める(内側に寄せる)と、皮膚の余剰や構造的な変化により、どうしても小鼻の付け根の位置が下がって見えやすくなります。 小鼻が下がると、以下のような審美的なデメリットが生じます。
- 鼻全体が重たく、野暮ったい印象になる。
- ほうれい線にかぶさるようになり、ほうれい線が深く見える。
- 人中(鼻の下)が短く見えすぎたり、バランスが悪くなる。
せっかく小鼻を小さくしてスッキリさせたいのに、位置が下がって老けて見えてしまっては本末転倒です。
上側の皮膚を切り取り、引き上げる
そこで僕は、単に横幅を縮めるだけでなく、小鼻の上側の皮膚(外側の付け根部分)を三日月状に切除する「鼻翼挙上」の操作を同時に行っています。
この操作には2つの大きなメリットがあります。
- 小鼻の位置補正: 小鼻の付け根を物理的に高い位置に移動させることで、下がって見えるのを防ぎ、スッキリとした印象にします。
- 肉厚感の軽減: 小鼻自体の肉厚な組織を切除するため、小鼻の厚みが減り、よりコンパクトに見えます。
「横幅を狭める(縮小)」操作と、「位置を上げる(挙上)」操作。 この2つを組み合わせることで、「小鼻自体の大きさ(面積)」を確実に小さくしつつ、決して垂れ下がらない洗練されたバランスを実現しています。
形成外科専門医としての「再建」の思想
僕が「土手」や「皮弁」を重視するのは、元々専門としていた形成外科の考え方がベースにあるからです。
機能と形態の両立
形成外科医として、僕は長年、顔面外傷や、癌切除後の欠損などを治す「再建手術」に携わってきました。 再建の現場で常に求められるのは、「いかに元の自然な状態に戻せるか」、そして「機能を損なわないか」ということです。
これは美容外科の手術でも同じだと考えています。 美容整形といっても、単に形を変えたり、小さくしたりすれば良いわけではありません。 呼吸のしやすさや、表情の自然な動きといった生理的な機能を守りながら、解剖学的にも無理のない美しさを作ることが必要です。
「土手を切り取る」ことは、本来あるべき構造をなくしてしまうことにも繋がります。 だからこそ、多少の手間や時間はかかりますが、皮弁を工夫して構造を温存する方法を第一に選んでいます。
傷跡へのこだわり
また、皮弁法には「傷跡を目立たなくする」という効果もあります。
単純に切って縫うと、傷跡は一直線になり、力がかかった時に赤く盛り上がったり(肥厚性瘢痕)、逆に凹んだりしやすくなります。 しかし、皮弁を入れ替えてジグザグに縫合したり、解剖学的な境界線(鼻翼溝など)に沿って切開線をデザインすることで、傷跡にかかる緊張を分散させることができます。
結果として、傷跡は小鼻のシワや溝に同化し、最終的にはメイクなしでもほとんど分からないレベルまで馴染んでいきます。 「切ったことが分からないくらい自然に治す」。これもまた、顔面再建で培った技術の一つです。
実際の症例の検証

【右側(向かって左):手術終了】
- 大きさ: 左側に比べて明らかに小鼻の幅が縮まり、全体的にコンパクトになっています。
- 土手: 鼻の穴の下(土手)は平坦にならず、ふっくらとした自然な丸みが残っています。
- 形状: 鼻の穴の形も、コンセント型ではなく、自然な楕円形を保っています。
- 位置: 挙上効果により、小鼻が垂れ下がることなく、スッキリとした位置に収まっています。
【左側(向かって右):手術前】
- 大きさ: まだ手術をしていないため、右側に比べて小鼻の張り出しが強く、鼻の穴も大きく見えます。
- デザイン: これから切除する部分に紫色のマーキングがされています。小鼻の外側上部までデザインが伸びており、ここで「挙上(持ち上げ)」を行う計画であることが分かります。
「あんなに切っているのに、なぜこんなに自然なのか?」 その答えは、すべて「皮弁法」と「挙上術」による解剖学的な再構築にあります。
まとめ
小鼻縮小は、美容外科手術の中でも満足度が高い手術ですが、同時に「やらなければよかった」という後悔の声も聞かれる手術です。 その分かれ道は、「土手を残せるか」そして「不自然な形にならないか」という点に尽きます。
切り取られた土手は、戻ってきません。 一度コンセントのような形になってしまった鼻の穴を、元の自然な形に戻す修正手術は、初回手術の何倍も難易度が高くなります。
だからこそ、クリニック選び、医師選びは慎重に行う必要があります。 「簡単です」「すぐに終わります」という言葉や、費用の安さだけで選ぶのではなく、「どのような術式で切るのか」「土手は残るのか」「皮弁法などの工夫はあるか」をしっかりと確認してください。
当院の小鼻縮小の特長
- 皮弁法による土手保存: 土手を再構築し、コンセント鼻やのっぺり顔を防ぐ。
- 鼻翼挙上の併用: 小鼻を小さくしながら、位置を引き上げバランスを整える。
- 形成外科専門医の技術: 解剖学に基づいた、機能的かつ美しいデザイン。
- 傷跡への配慮: 再建外科の縫合技術で、傷跡を最小限に抑える。
「小鼻を小さくしたいけれど、不自然な整形鼻にはなりたくない」 「過去の手術で土手がなくなってしまったが、修正できるか相談したい」
そのような悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、ご相談ください。 あなたの鼻の組織の状態を正確に診断し、最適な治療プランをご提案させていただきます。





