鼻整形の感染で軟骨が溶けた|鼻中隔穿孔からの修正・再建手術を解説

鼻整形後の感染は、適切に対処すれば多くの場合は改善します。しかし、対処が遅れたり、感染源を放置し続けたりすると、取り返しのつかない状態に陥ることがあります。

その最悪のケースの一つが、感染によって鼻の中の軟骨が溶けて消失し、左右を隔てる鼻中隔に穴が空いてしまう「鼻中隔穿孔」です。

今回は、度重なる感染によって鼻中隔穿孔を来した状態からの完全再建手術について、経緯と手術の考え方をお伝えします。

目次

鼻整形後の感染はなぜ起きるのか

鼻の手術後に感染が起きる原因は、主に細菌が手術部位に侵入することです。皮膚や鼻の穴の中には常に細菌が存在しており、手術で切開した部位から細菌が入り込むことがあります。

特に問題になるのが、プロテーゼなどの人工物や移植した軟骨が体内にある場合です。自身の組織には血流があり、細菌と戦う免疫細胞が働きます。しかし人工物には血流がないため、一度細菌が付着すると繁殖しやすく、感染が長引く原因になります。

感染が起きたとき、「傷が治るまでは再手術できない」と説明を受けて様子を見ているケースがあります。しかしこれは形成外科的には誤った対処です。感染源である異物が体内に残っている限り、体はその異物を排除しようと反応し続けます。傷が閉じないのではなく、閉じられない状態が続いているのです。感染源の除去こそが治療の第一歩であり、放置するほど組織のダメージは広がります。

感染を放置するとどうなるか

感染が起きても初期段階で適切に対処すれば、多くの場合は大きな後遺症なく回復します。問題は、感染源を放置したまま時間が経過した場合です。

まず、移植した軟骨が感染によって溶けていきます。自家軟骨であっても、感染した環境では組織が壊死し、消失することがあります。

次に、感染が鼻中隔の軟骨にまで及ぶと、鼻中隔そのものが破壊されて穴が空いた状態(鼻中隔穿孔)になります。鼻中隔は左右の鼻の穴を隔てる壁であり、鼻全体の形を支える構造上の要です。ここに穴が空くと、鼻の形を保つことが極めて難しくなります。

さらに、感染が長期化すると皮膚や粘膜が拘縮し、組織が硬く縮んで伸びない状態になります。こうなると再建手術の際に皮膚が足りなくなり、手術の難易度が大幅に上がります。

今回の症例:鼻中隔穿孔からの完全再建

今回の患者様は、度重なる感染により鼻の中の軟骨が失われ、鼻中隔に大きく穴が空いた状態になっていました。

過去に肋軟骨による再建を試みたこともありましたが、術後1ヶ月で移植した軟骨が鼻先から露出してしまいました。その後は鼻先を支える軟骨が溶けてなくなり、粘膜や皮膚も拘縮して伸びない状態に。鼻全体として形を保つことさえ難しく、プロテーゼで鼻筋だけをなんとか維持するしかない状態でした。

鼻中隔延長(肋軟骨) 鼻尖形成 鼻尖軟骨移植 隆鼻(肋軟骨) 猫貴族手術(肋軟骨) 前田翔医師症例
鼻中隔延長(肋軟骨) 鼻尖形成 鼻尖軟骨移植 隆鼻(肋軟骨) 猫貴族手術(肋軟骨) 前田翔医師症例
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鼻中隔延長(肋軟骨) 鼻尖形成 鼻尖軟骨移植 隆鼻(肋軟骨) 猫貴族手術(肋軟骨) 前田翔医師症例

他院で難しいと判断され断られ続けた症例でしたが、「形を整える」のではなく「構造をつくり直す」という視点で対応しました。

施術内容:
鼻中隔延長(肋軟骨):¥860,000〜、鼻尖形成:¥337,000、鼻尖軟骨移植:¥240,000、隆鼻(肋軟骨):¥650,000、猫貴族手術(肋軟骨):¥660,000

経過:術後5ヶ月

再建手術で重要なこと

今回の手術で最も難しかったのは、鼻中隔に軟骨を入れることができない状態からの設計です。

通常の鼻中隔延長は、鼻中隔に軟骨を固定することで土台を作ります。しかし今回は穿孔があり、鼻中隔自体が支持構造として機能しない状態でした。そのため、残っている鼻骨(鼻の上部)と上顎骨(鼻の下部)という、鼻の上下の端から支持構造を組み直す設計が必要でした。通常の鼻整形とは根本的に異なるアプローチです。

失われていた鼻中隔・鼻柱を含む支持組織を一つひとつ再構築し、鼻尖形成・鼻尖軟骨移植・隆鼻(肋軟骨)を組み合わせて鼻全体の構造を作り直しました。さらに猫貴族手術を組み合わせることで、中顔面のバランスも同時に整えています。

「次がない手術」でもあったため、感染への細心の注意が必要でした。使用する器具・縫合糸・手術環境すべてにおいて感染リスクを最小限に抑えながら進めました。

術後5ヶ月では腫れも落ち着き、自然な形に仕上がっています。

再建には自家組織(肋軟骨)を最大限に活用しています。感染が起きた部位への人工物の再挿入は再感染リスクが高く厳禁です。自家組織は体との親和性が高く血流もあるため、感染リスクを抑えながら安定した再建が可能になります。

感染が疑われたら早めに対処を

鼻整形後の感染の主な兆候は以下の通りです。

  • 手術部位の異常な熱感が続く
  • 鎮痛剤が効かないほどの強い痛みが長引く
  • 腫れが引かない
  • 鼻が赤くテカテカしている
  • 傷口から膿が出る

これらの症状が2週間以上続く場合は、感染が疑われます。通常のダウンタイムの腫れや痛みとの区別が難しいこともありますが、「なんとなくいつもと違う」と感じた段階で早めに受診することが重要です。

感染の初期段階であれば、抗生剤の投与や患部の洗浄で対処できることがあります。それでも改善しない場合は、感染源である異物の抜去が必要になります。抜去は後退ではなく、治癒に向けた正しい第一歩です。

重要なのは、「様子を見る」期間を長引かせないことです。感染源が体内にある限り傷は治りません。放置するほど軟骨へのダメージが広がり、最終的な再建の難易度が上がります。「手術したクリニックに相談しにくい」「他院で断られた」という場合でも、早めにご相談ください。

まとめ

鼻整形後の感染を放置すると、移植した軟骨が溶けて消失し、鼻中隔に穴が空く(鼻中隔穿孔)という深刻な状態になることがあります。こうなると、形を整える手術ではなく、構造をゼロからつくり直す再建手術が必要です。

感染が疑われる場合は早期対処が重要であり、感染源の除去が治療の第一歩です。「傷が治るまで待つ」という判断が状況を悪化させることがあります。今回の症例のように、鼻中隔穿孔・軟骨消失・皮膚拘縮が重なった状態でも、形成外科的な再建の知識と経験があれば対応できることがあります。

他院で断られた重度の症例でも、まずは現状を正確に把握した上で、できることをご説明します。諦める前に一度診察にいらしてください。

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