【人中短縮の失敗例】人中の凹み・口が閉じない…機能障害と変形を治した他院修正の解説

「人中短縮(リップリフト)」は、鼻の下を短くすることで顔のバランスを整え、間延びした印象を解消する手術として、近年急速に人気が高まっています。 しかし、その需要の急増に伴い、他院での手術後に深刻なトラブルを抱え、当院へ修正相談に訪れる患者様が後を絶ちません。

インターネットで検索すると、傷跡の赤みや広がりについての失敗例が多く出てきます。しかし実際には、それ以上に患者様の生活を脅かす、深刻な「機能障害」や、メイクでは隠せない「不自然な変形(凹み・膨らみ)」も存在します。

今回は、偶然にも「同じクリニック・同じ執刀医・同じ施術」を受け、同様の深刻なトラブルに見舞われた2名の患者様の修正症例をご紹介します。 トラブルの原因と、損傷した組織や機能をどう再建したのか。実際の手術内容と術後の経過について、医師の視点から解説します。

目次

「ただ短くする」だけではない。人中短縮に潜むリスクと失敗の実態

人中短縮術は、一見すると「鼻の下の皮膚を切除して縫い縮めるだけ」のシンプルな手術に見えるかもしれません。しかし、この数ミリ〜十数ミリの範囲には、表情を作る筋肉(口輪筋)、血管、神経が複雑に入り組んでおり、顔全体の印象や口の開閉機能を司る非常に繊細なエリアです。

解剖学的な理解不足や、デザインの誤りによって引き起こされる失敗は、単なる「見た目の好み」の問題を超え、患者様のQOL(生活の質)を著しく低下させます。

傷跡よりも深い悩み。「人中の凹み」と「もっこり変形」

近年、人中を短くするだけでなく、人中窩(鼻の下のくぼみ)を深くして立体感を出そうとする「人中窩形成」や、組織の「厚み取り」を併用するケースが増えています。 しかし、これが裏目に出ると、独特の不自然な変形を引き起こします。

不自然な「深い凹み」

過度な組織除去や、不適切な縫合による引き込みによって、人中の中央が異常に深く窪んでしまう現象です。自然な陰影ではなく、まるで彫刻刀でえぐり取ったような鋭利な段差ができ、照明の下で極端に目立つ影を作ります。

逃げ場を失った組織の「もっこり感」

傷跡が深く食い込むことで、その周囲の皮膚や脂肪組織が行き場を失い、人中が盛り上がってしまうことがあります。これにより、鼻の下全体が分厚く、もっこりとした肉厚な印象(不自然な膨らみ)を与えてしまいます。

生活を崩壊させる「機能障害」の恐怖

さらに深刻なのが、口周りの機能障害です。 皮膚を切りすぎたり、内部の口輪筋を無理に縫い縮めて拘縮(ひきつれ)が起きたりすると、上唇が常に上に引っ張られた状態になります。

  • 口が閉じない(口唇閉鎖不全) 意識して力を入れないと口が閉じず、常に半開きの状態になります。
  • 水がこぼれる コップで水を飲もうとしても、上唇がうまく機能せず隙間ができ、そこから水が垂れてしまいます。ストローを吸う動作や、うがいも困難になります。
  • 発音障害・乾燥 「マ行」「パ行」などの唇を閉じる発音がしにくくなったり、ドライマウスによって虫歯や口臭のリスクが上がったりします。

「人前に出るのが怖い」「食事を見られるのが恥ずかしい」 こうした機能障害は、患者様を社会的孤立(引きこもり)へと追い込むほど、精神的に大きなダメージを与えます。

【症例解説】同じ失敗、異なる難易度。2人の患者様の記録

今回ご紹介するのは、偶然にも同じクリニック、同じ執刀医で、「人中短縮+人中窩形成+厚み調整」という同じメニューの手術を受けられた2名の患者様です。

共通していた「失敗」の状態

お二人に共通していたのは、以下の症状でした。

  1. 人中が過剰に短縮されすぎている
  2. 人中窩(くぼみ)が深く凹み、不自然な影ができている
  3. 鼻下がのっぺりと平坦になり、立体感が喪失している
  4. 笑ったときや話すときに口が閉じにくく、違和感がある

しかし、お二人の決定的な違いは「修正手術を行うまでの期間」でした。 1人は術後2週間、もう1人は術後数ヶ月が経過していました。この「期間の差」が、修正手術の難易度を大きく分けることになります。

【症例①】術後2週間の修正(過剰短縮・深い凹み)

<患者様の状態> 他院での術後、抜糸を終えたばかりのタイミングで来院されました。 鼻の下には前医による切開の痕が鮮明にあり、人中の中央がえぐれたように凹んでいました。また、唇が引っ張られる感覚が強く、閉じにくい状態でした。

<修正のアプローチ:傷を増やさない口腔内手術> 既に表面には傷跡があります。これ以上、皮膚にメスを入れて新たな傷跡を作ることは、傷を目立たせるリスクが高いため避けなければなりません。 そこで、すべて口の中(口腔内)からのアプローチで修正を行いました。

  1. 軟部組織の再配置 凹みすぎてしまった部分に対し、周囲の組織を移動させて埋めるように再配置し、自然なふくらみを取り戻します。
  2. Cカールの再形成 のっぺりと平坦になった鼻下に、横から見た時に美しい「Cカール(丸み)」が出るよう、深部の組織をデザインし直します。
  3. 筋肉層の調整 唇の動きを阻害していた筋肉の突っ張り(緊張)を丁寧に解除し、厚みと可動性を回復させます。

<術後10日目の結果> 術後わずか10日目の時点で、劇的な変化が見られました。 正面から見ると、えぐれていた凹みがなだらかになり、自然な人中のラインが回復。横顔には女性らしい柔らかなCカールが戻りました。 何より、笑った時の不自然な引きつれがなくなり、唇の可動域がスムーズになったことで、機能的なストレスからも解放されました。

【症例②】術後数ヶ月の修正(機能障害・水がこぼれる)

before
after

<患者様の状態> こちらは、術後数ヶ月が経過してからの修正です。 症状は非常に深刻でした。 「口元が気になりすぎて、2ヶ月間仕事を休んで引きこもっていた」 「水を飲むと、口から垂れてきてしまう」 「口は常に半開きで、閉じることができない」 人中の形は不自然に窪み、その周囲がもっこりと膨らみ、上唇はめくれ上がったまま固まっていました。

<修正のアプローチ:癒着との戦い> 術後数ヶ月が経過しているため、傷跡の組織(瘢痕)は硬くなり、組織同士が強力に癒着していました。 症例①と同様に、表面の傷は触らず口腔内からアプローチしましたが、その難易度は格段に高いものでした。

  1. 強固な瘢痕・癒着の剥離 ガチガチに固まった瘢痕組織を、神経や血管を傷つけないよう慎重に、かつ確実に剥離していきます。
  2. 拘縮の解除 短縮された状態で固まってしまった口輪筋をリリースし、上唇が自然に下りてくるように調整します。
  3. 形態の再構築 変形して「もっこり」してしまった部分の厚みを調整し、凹みとのバランスを整え直しました。

<修正後の結果> 術後の検診で、患者様は安堵の表情を浮かべられました。 不自然な段差や肉厚感は消失し、フラットで美しい人中に。そして最も重要だった機能面においても、無理なく口が閉じられるようになり、ストローも問題なく吸えるようになりました。 「人前に出られるようになった」という言葉が、この手術の意義を物語っています。

なぜ「時期」で難易度が変わるのか?修正手術の壁

2つの症例は、修正内容はほぼ同じですが、術後2週間と数ヶ月後では、手術の難易度が天と地ほど異なります。 一般的に、美容整形の修正は「組織が落ち着くまで半年待つ」というのがセオリーと言われることが多いですが、人中短縮の修正においては、時間が経つことがリスクになる側面もあります。

時間経過と共に進行する「瘢痕」と「癒着」

手術直後(〜数週間)の組織は、まだ柔らかく、移動や再配置が比較的容易な場合があります。 しかし、時間が経過して治癒プロセスが進むと、体は傷を治そうとして「瘢痕組織」を作ります。これは通常の皮膚や筋肉よりも硬く、伸縮性がありません。 さらに、皮膚・脂肪・筋肉がベッタリとくっつく「癒着」が完成してしまうと、これを剥がして形を整える作業は非常に困難になります。

「組織の欠損」という最大のハードル

人中短縮は、皮膚を切除(=捨ててしまう)手術です。 一度切り取ってしまった皮膚は、二度と戻ってきません。 修正手術では、「皮膚が足りない」「正常な筋肉が残っていない」というマイナスの状態からスタートしなければなりません。 組織が欠損した状態で、さらに瘢痕で硬く縮こまってしまった場合、修正のための「材料」がどこにもないという事態に陥ります。これが、時間が経つほど修正が難しくなる最大の理由です。

場合によっては、これ以上の操作はリスクが高すぎると判断され、他院では修正を断られるケースや、無理に修正しようとして傷跡が広がり、さらに悪化してしまうケースさえあります。

当院の修正技術:口腔内アプローチで「傷を増やさず」治す

他院修正において、当院が最も大切にしているのは「これ以上、患者様の顔に傷を増やさないこと」です。

表面にメスを入れないという選択

通常、人中短縮の修正といえば、再度鼻の下を切開して形を整える方法が一般的です。しかし、それでは傷跡がさらに太くなったり、新たな瘢痕ができたりするリスクがあります。 当院では、可能な限り「口腔内(口の中)」からのアプローチを選択します。 口の中の粘膜を切開し、そこから筋肉や脂肪層にアプローチすることで、お顔の表面には一切傷をつけずに内部構造を立て直すことが可能です。

Cカールの再構築と筋肉処理

人中の美しさは「長さ」だけではありません。「Cカール」と呼ばれる、横から見た時の緩やかな湾曲が重要です。 失敗例の多くは、このCカールが失われ、のっぺりと平坦になっています。 当院では、口輪筋の深さを調整し、鼻柱基部(鼻の土台)との位置関係を正すことで、人工的ではない自然な立体感(Cカール)を再構築します。 これは、皮膚表面の操作だけでは絶対に作れない、解剖学に基づいた内部処理があってこそ実現できる技術です。

人中短縮は「小さな手術」ではありません

最後に、人中短縮や修正手術を検討されている方に、改めて知っておいていただきたい点があります。

人中短縮術は、決して「小さな手術」ではありません。 人中は、顔の中心に位置し、わずか数ミリの変化で顔全体のバランス、上品さ、そして年齢までも左右する極めて重要なパーツです。 さらに、食事や会話といった生きていく上で不可欠な機能に関わる場所でもあります。

このエリアを手術するには、以下の要素が不可欠です。

  • 顔面解剖の深い理解 筋肉・脂肪・皮膚がどのように重なり、どう動くのかを熟知していること。
  • 動的なデザイン設計 真顔の時だけでなく、笑った時、話した時の「動き」まで計算してデザインすること。
  • マイクロサージェリーの精度 神経や血管を避け、組織をミリ単位で調整する繊細な技術。

「流行っているから」「安かったから」という理由で安易に受けてしまい、取り返しのつかない失敗に苦しむ方が増えています。 一見簡単な手術に見えても、「誰が」「どう設計し」「どこからアプローチするか」によって、結果は大きく異なります。

当院では、他院修正にも積極的に対応しており、皮膚に新たな傷を作らずに機能と自然さの回復を目指す手術を行っています。 「顔の印象がおかしくなった」「口が閉じづらい」とお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。 高度な技術と正しいアプローチによって、機能障害や見た目の不自然さを改善することは十分に可能です。

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