【医師解説】裏ハムラと表ハムラの違い| 切る?切らない?クマ治療を受ける前に知っておきたいこと

この記事は 前之園 健太 医師(美容外科医・整形外科専門医) が監修しています。

目の下のクマ治療を考えたときに、よく耳にする「ハムラ法」。
この手術には、皮膚を切らない“裏ハムラ”と、皮膚を切る“表ハムラ”の2種類があります。

名前だけでは分かりにくいこの違い。
実際に手術を行う立場から、症例写真を交えながら“どんな人にどちらが向くのか”を解説します。


目次

クマの正体は「膨らみ」と「凹み」の段差

目の下のクマは、睡眠不足だけが原因ではありません。
多くの場合、眼窩脂肪という目の奥の脂肪が前にせり出してくる膨らみと、
その下にある骨との間にできる凹みが段差を作り、影となって見えます。

さらに、加齢で皮膚のハリが落ちると、この段差がより強調されていきます。
そのため、単に「脂肪を取るだけ」ではクマが改善しないことも多いのです。

私たちが行うハムラ法は、この“構造そのもの”を整える手術です。


裏ハムラと表ハムラの違いは「皮膚を切るか否か」

左が裏ハムラ、右が表ハムラの術直後。
裏ハムラはまぶたの裏側(結膜)からアプローチするため、外に傷はつきません。
表ハムラは下まつ毛のキワを切開し、脂肪移動と同時に皮膚のたるみも整える方法です。

両者の最大の違いは、
「皮膚を切る必要があるかどうか」。
つまり、“どの層に老化の主因があるか”で、手術の方向性が変わります。


適応の見極めが結果を左右する

これはどちらも術前の写真
左のように皮膚のたるみが軽く、主に膨らみと凹みの段差が目立つタイプは裏ハムラが適応
右のように皮膚が余ってシワが強いタイプは表ハムラが適応です。

私は診察時、皮膚を軽くつまんで「どの層が老化しているか」を必ず確認します。
皮膚がまだしっかりしている方に表ハムラを行うと、必要のない切開になってしまう。
逆にたるみが強い方に裏ハムラだけをすると、クマは取れてもシワが残る。
この見極めこそが、自然で長持ちする結果をつくる鍵です。


手術直後の比較:仕上がりの方向性の違い

裏ハムラ(左)は、皮膚を切らない分、腫れが軽く自然な涙袋が残るのが特徴です。
表ハムラ(右)は、皮膚をしっかり引き上げるため、術直後は腫れやすいですが、たるみ・シワごと改善できます。

実際の治療では、裏ハムラに二重埋没修正を同時施行したり、
表ハムラに目頭切開や下眼瞼下垂修正を組み合わせるケースもあります。
「単にクマを取る」ではなく、「目元全体の構造を整える」ことを意識しています。


メリット・デメリットと術後経過の目安

手術法メリットデメリット
裏ハムラダウンタイムが短い/傷が表に出ない/涙袋が出やすい皮膚のたるみは残る
表ハムラ皮膚のたるみ・シワも改善できる腫れが強い/外反リスクがある

裏ハムラのダウンタイムは約1〜2週間。
表ハムラは2〜3週間程度で落ち着いてきます。

どちらが優れているというより、老化の主因がどこにあるかで選択することが重要です。
私は30代・40代の方には裏ハムラ、50代以降やたるみが強い方には表ハムラを提案することが多いです。


「切るのが怖い」方へ ― 段階的治療という考え方

表ハムラの切開は、下まつ毛のキワに沿って行うため、時間が経つとほとんど分からなくなります。
それでも「傷を作りたくない」「まずは軽く改善を試したい」という方には、
まず裏ハムラでクマを改善し、必要なら後から皮膚切除を追加する方法もあります。

私はこの“段階的アプローチ”を大切にしています。
やりすぎず、足りなければ次のステップへ。
手術は「一度で完璧に終わらせる」よりも、「長く自然に保つ」ことが本質だと思います。


実際の仕上がり例:裏ハムラの場合

裏ハムラでは、膨らみと凹みを同時に整え、涙袋の立体感を残しながらクマを改善します。
皮膚を切らないため、仕事復帰の早い方にも人気があります。
「自然に若返った」「疲れて見えなくなった」と言われる方が多いです。


実際の仕上がり例:表ハムラの場合

表ハムラは、クマだけでなく皮膚のゆるみや小ジワまで改善
たるみが強い方や、下まぶた全体の印象を変えたい方に向いています。
術直後は腫れていますが、時間とともに自然なラインになります。


どちらを選ぶべきか

裏ハムラと表ハムラは、どちらが「良い・悪い」ではありません。
それぞれの目的と適応が異なるだけです。
診察では必ず、

  • 皮膚の余り
  • 脂肪の位置と量
  • 眼輪筋の張り
    を確認し、最も自然なバランスになる方法を提案します。

美容外科医として大切にしていること

手術は「足す・引く」だけの作業ではありません。
顔全体のバランスを壊さず、本人の印象を残すこと。
これが美容外科の難しさであり、面白さでもあります。

目元の印象は、その人の“感情の伝わり方”を左右する場所。
だからこそ、私はハムラ法を行うとき、「若返り」ではなく「自然な調和」を意識しています。


まとめ

比較項目裏ハムラ表ハムラ
切開部位結膜(内側)下まつ毛キワ(外側)
傷の目立ちやすさなしほぼ目立たない
ダウンタイム約1〜2週間約2〜3週間
改善範囲クマ・凹みクマ・たるみ・シワ
向いている人20〜40代/軽度たるみ50代〜/たるみ・皮膚余りあり

裏ハムラと表ハムラは、どちらも「目の下のクマを根本から改善する」ための手術です。
しかし、そのアプローチは大きく異なります。

裏ハムラは、皮膚を切らずに膨らみと凹みを整える方法。
ダウンタイムが短く、自然な若返りを希望される方に向いています。

一方の表ハムラは、皮膚のたるみやシワまで同時に整える治療。
よりしっかりとしたリフトアップ効果を求める方に適しています。

重要なのは、「どちらの手術が良いか」ではなく、あなたの目元の状態にどちらが合うかを見極めることです。
脂肪の膨らみ、皮膚の余り、骨格のバランスは人によってまったく違います。

私が診療で一番大切にしているのは、“自然で、やりすぎない若返り”です。
クマが消えても「何か変わった」と思われるより、「疲れが取れた」「印象が明るくなった」と言われるような仕上がりを目指しています。

目の下のクマは、年齢の印象を最も左右するパーツ。
どちらの方法が合うか迷っている方は、ぜひ一度ご相談ください。
診察でしっかり状態を拝見し、無理のない最適なプランをご提案します。

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