全切開法で二重を作ったあと、
「幅が広すぎて眠そうに見える」「まぶたがぷっくりしてハム目になった」
このような理由で修正を希望される方は少なくありません。
診察でよく聞かれるのが「もう切りたくない。できれば埋没で治したい」という希望です。
結論から言うと、全切開後の修正を“埋没だけ”で行える人は限られます。多くのケースでは再切開が必要です。
ただし、条件が合えば、再切開を避けて埋没で改善できることがあります。
このコラムでは、私が外来で実際に確認しているポイントと、埋没修正でできること・できないことを、症例写真の流れに沿って整理します。
全切開後の修正が難しい理由
全切開は、皮膚を切開し、内部の組織(挙筋腱膜や瞼板周囲)と皮膚を癒着させて二重を作ります。
一度できた癒着は、時間とともに硬くなり、ラインが安定します。ここが全切開の強みですが、修正では難点になります。
幅を狭くしたいのに、元の固定が強いと、新しい折れ目(ライン)を下に作っても元のラインに引っ張られます。
その結果、①新しいラインが入らない、②二重が二本に見える、③すぐ戻る、といった問題が起きます。
だから一般的には「再切開が原則」と説明されます。
埋没で修正できる“例外”の条件
私が最初に確認するのは、元の全切開ラインの「食い込み(固定)がどれくらい強いか」です。
具体的には次のような所見を見ます。
- 伏し目で、切開ラインがくっきり残っているか(凹みが強いか)
- 瞬きのたびにラインが強く引き込まれるか
- 皮膚の被さりが強いのに、ラインだけ浅いか
- 術後の経過年数(半年〜1年未満なのか、数年経っているのか)
固定が強い場合、埋没で下にラインを作っても負けます。このような場合は埋没では厳しいです。
一方で、固定が甘い(食い込みが浅い)場合は、切開線より下に“より強い固定点”を作ることで、折れ目を下に移行できる可能性があります。

術前は切開痕がある一方、食い込みが浅く、皮膚がまつ毛側に被さってハム目に見えています。
患者様の希望(再切開は避けたい)と、固定の弱さを踏まえ、埋没での修正を選択しました。
埋没で「ラインを下げる」仕組み:折れ位置の再設計
ハム目の見え方は、単に「皮膚が厚い」だけで決まるわけではありません。
重要なのは、二重ラインからまつ毛までの皮膚がどこで折れるか、そしてその折れが安定しているかです。
全切開後の幅広二重では、二重ラインが高い位置に固定されるため、ライン下の皮膚が余って見え、まつ毛が隠れやすくなります。
そこで私は、切開線より下(まつ毛寄り)に新しいラインを設定し、そこを強く固定します。
言い換えると「皮膚を切って減らす」のではなく、「折り畳む位置を変えて、見え方を整理する」方法です。
ただし、ここで大事なのが固定の“強さ”です。
元の切開固定が弱い場合に限って、新しい埋没固定が優位になり、開瞼時に皮膚が新しいラインで折れます。
逆に元の固定が強いと、折れが上に引き戻されます。

点線が元の切開ラインです。今回の修正では、切開線より下で再固定しています。
1ヶ月で腫れが落ち着き、ラインが安定してきています。
見た目の変化:ハム目の印象はどこで変わるのか
全切開後にハム目になり、相談に来られる方が気にされるのは、
「なんとなく重たく見える」「すっきりしない」「ぱっちり感が出ない」
といった点です。
多くの場合、原因は二重幅そのものではなく、二重ラインからまつ毛までの皮膚が被さり、まつ毛の生え際が隠れてしまっていることにあります。
その結果、黒目の見える範囲が狭くなり、目元全体が重たく見えてしまいます。
埋没で折れ位置を下げることができると、この被さりが持ち上がり、まつ毛の生え際が見えやすくなります。
黒目の露出が増えることで、目が開いて見え、アイラインを強く引かなくても、すっきりした印象になります。

Beforeでは、皮膚の被さりによってまつ毛の生え際が隠れ、重たい印象があります。
Afterでは、被さりが改善し、まつ毛の生え際が見えることで、二重ラインと目元全体が整理されています。
ダウンタイムについて
埋没修正の利点は、再切開と比べて腫れ・内出血が軽いことです。
一般的には腫れのピークは2〜3日、見た目が落ち着くのは1週間前後が目安です(個人差あり)。
一方、再切開では腫れが強く、硬さが抜けるまで数ヶ月かかることもあります。
「仕事を長く休めない」「家族に気づかれたくない」という方には、ダウンタイムの差は大きな要素になります。
今回の症例では裏ハムラ法も同時に行っています。
目の下のふくらみ(クマの原因)を整えることで、二重だけでなく目元全体の疲れ感が減り、結果として印象がよりクリアになります。
二重の被さり改善に加え、下眼瞼のふくらみが整理され、目元全体の印象が整っています。
まとめ
全切開後のハム目は、原則として再切開が必要になることが多い症状です。
ただし、切開ラインの固定が弱い場合には、埋没で新たな支点を作り、二重の折れ位置を下に移行させることで改善できる可能性があります。
診察では、固定の強弱や皮膚の状態を確認し、埋没でどこまで改善が見込めるか、再切開が必要になるラインはどこかを整理して説明します。
そのうえで、目標とする変化を現実的に設定することが重要です。
特に、伏し目や閉眼時の切開痕の残り方は重要な判断材料になります。
閉眼時にも深い凹みが残る場合、埋没ではラインが不安定になりやすく注意が必要です。
一方で、凹みが浅く皮膚の動きが柔らかい場合には、下に作った固定が安定しやすいことがあります。
修正手術で最も大切なのは、適応を正しく見極め、限界やリスクを事前に共有したうえで治療方針を決めることです。
二重や目元の仕上がりで悩まれている場合は、現在の状態を正確に評価したうえで、最適な方法を検討することが大切です。
気になっている方はお気軽にご相談ください。





