痩せ型のシリコン豊胸はバレる?リップリングの原因と自然に見せる3つの対策

日々の診療で患者さまと向き合っていると、特に痩せ型の方や、授乳を終えられた方から、ある共通したご相談をいただくことがあります。

それは、
「身体は細いけれど、しっかりとサイズアップしたい。でも、バッグのフチが浮き出てしまって、豊胸したことが分かってしまわないか不安」
というお悩みです。

この現象は、医学的には「リップリング」と呼ばれます。
インターネットで検索すると「失敗例」として紹介されていることも多く、それを見て怖くなってしまう方も少なくありません。

ただし、正しい解剖学的な知識と、リップリングが起こる理由を理解したうえでの丁寧な手術手技があれば、華奢な体型であっても、「もともと胸が大きかったかのような」自然なバストを目指すことは十分に可能です。

今回は、このリップリングについて、なぜ起こるのかというメカニズムから、私が「バレない仕上がり」のために大切にしているポイントまで、専門医の視点で分かりやすくお話ししていきたいと思います。

目次

「リップリング(波打ち)」とは何か?

まずは、リップリングが具体的にどんな状態なのか、正しく理解することから始めましょう。

皮膚表面に現れる「不自然なシワ」

リップリング(Rippling)は、英語で「さざ波」という意味です。その名の通り、体内に入れたシリコンバッグの表面にできたシワやたわみが、皮膚を通して波打つように見えたり、手で触れたりできてしまう現象のことです。

特に以下のような動作や部位で目立ちやすい傾向があります。

  • 前かがみになった時: 重力でバッグが下に移動し、上部や側面にシワが寄った時。
  • デコルテ(胸の上部): 皮膚や脂肪が最も薄い部分です。
  • 胸の外側(脇側): 皮膚が引っ張られ、バッグの縁(エッジ)が浮き出やすい場所です。

なぜバッグはシワになるのか?

シリコンバッグは、常にまん丸の形状を保っているわけではありません。体内で重力の影響を受けたり、周囲の組織から圧力を受けたりすることで変形します。 水が入った袋を想像してみてください。水がパンパンに入っていれば袋は丸いままですが、少しでも余裕があると、袋の表面に「折れ目」や「シワ」ができますよね。これが体内で起こり、かつそれを隠す「カバー」が足りない場合に、リップリングとして表面化してしまうのです。


痩せ型・授乳後の人はなぜバレやすい?解剖学的リスク

「ふくよかな人はバレにくく、痩せている人はバレやすい」
これはイメージの話ではなく、医学的に見ても事実です。

私はこれまで乳房再建の手術を通して、皮膚や筋肉の厚みを内側から何度も見てきましたが、その差ははっきりしています。

「カバー組織」の厚みが仕上がりを左右する

豊胸手術の自然さを大きく左右するのは、バッグの上にどれだけの組織が乗っているか、つまり「カバー組織」の厚みです。

具体的には、次の3つが関係しています。

  • 皮下脂肪:バッグを覆う、最も重要なクッションの役割
  • 乳腺組織:授乳前は厚みがありますが、授乳後は萎縮して薄くなる傾向があります
  • 大胸筋:胸全体を支える土台となる筋肉

ふくよかな方の場合、シリコンバッグの上には十分な脂肪の層があります。
この脂肪が分厚いクッションとなり、たとえバッグ自体に多少のシワができても、その凹凸を吸収し、表面には出にくくしてくれます。

一方で、痩せ型の方(BMIが低い方)や、授乳後で乳腺が萎縮し皮膚が薄くなっている方は、このクッションとなる組織が非常に少ない状態です。

バッグを覆っているのが、ほぼ「薄い皮膚だけ」というケースも珍しくありません。
そのため、バッグ表面にできたわずかなシワや、バッグの輪郭が、皮膚の上からそのまま触れて分かってしまうのです。

これが、痩せ型の方や授乳後の方で、リップリングが起こりやすい物理的な理由です。
生まれ持った皮膚や脂肪の厚みそのものを、大きく変えることは簡単ではありません。

だからこそ私が手術で重視しているのは、
中に入れる「バッグそのものの質」と、それを収めるための「ポケット作成の技術」です。

この2つをどう考え、どう工夫するかで、自然な豊胸になるか大きく変わってきます。


リップリングを防ぐために、私が大切にしている3つの考え方

「痩せているから、豊胸は難しいですよね」
そう不安そうに来院される方は少なくありません。

しかし、形成外科専門医として、また乳房再建にも長く携わってきた立場からお伝えすると、体型だけで豊胸の可否が決まることはありません。

解剖学的条件を正しく見極め、それに合った方法を選べば、リスクは大きく下げることができます。

私は主に、次の3つを組み合わせて考えています。


① バッグ選びで、まずリスクを減らす

最初に重要なのが、体内に入れるシリコンバッグそのものです。

近年のバッグは大きく進化しています。
以前主流だったものは、中のジェルに余裕があり、体勢によってシワができやすい構造でした。

当院では、こうしたリスクを減らすため、Motiva(モティバ)を正規採用しています。
ジェルが100%充填された構造で、形が安定しやすく、非常に柔らかいのが特徴です。

皮膚が薄い方でも、「入っている感じ」が出にくい点は大きなメリットです。


② バッグを入れる場所で差が出る

次に重要なのが、バッグをどの層に収めるかという点です。
これは豊胸の仕上がりを左右する、非常に大切な判断になります。

一般論として、痩せ型の方では
筋肉という厚みを利用できる大胸筋下が選択されることが多いのは事実です。
筋肉が一枚クッションとして加わることで、バッグのシワやフチが表面に出にくくなるためです。

ただし、私が診察で最も重視しているのは、
「筋肉下か、乳腺下か」という二択ではありません。

皮膚の質や厚み、乳腺の残り方、
そして使用するバッグの柔らかさやサイズまで含めて、
その方にとって“十分なカバーが確保できる層はどこか”を総合的に判断します。

条件が揃えば、筋肉の下に入れなくても、乳腺下で自然に仕上げることは十分に可能です。

つまり大切なのは、術式そのものではなく、仕上がりを想定した立体的な設計なのです。


③ 脂肪で“境目”をなだらかにする

最新のバッグを選び、適切な層に入れても、デコルテや外側など、どうしても薄くなりやすい部分があります。

そこで私がよく提案するのが、ハイブリッド豊胸です。これは単なるサイズアップ目的ではありません。

注入した脂肪は、バッグのフチや段差をなだらかにし、仕上がりを自然にするクッション材になるのです。

人工物の存在感をできるだけ消すための、大切な仕上げ工程だと考えています。

【実例解説】華奢な体型でも自然に仕上がったシリコン豊胸

・シリコンバッグ豊胸(Motiva Ergonomix2 250cc) ・乳腺下留置 ・乳房下溝切開 経過1ヶ月 木下恵里沙医師症例
・シリコンバッグ豊胸(Motiva Ergonomix2 250cc) ・乳腺下留置 ・乳房下溝切開 経過1ヶ月 木下恵里沙医師症例
・シリコンバッグ豊胸(Motiva Ergonomix2 250cc) ・乳腺下留置 ・乳房下溝切開 経過1ヶ月 木下恵里沙医師症例
・シリコンバッグ豊胸(Motiva Ergonomix2 250cc) ・乳腺下留置 ・乳房下溝切開 経過1ヶ月 木下恵里沙医師症例

私が担当した非常に華奢なモニター様のケースをご紹介します。

一般的には「痩せ型=大胸筋下法」がセオリーとされています。
しかし、体型・皮膚の状態・バッグの特性を慎重に検討した結果、必ずしも筋肉下が最適とは限らないと判断した一例です。

Case Data

  • 19歳女性
  • 身長150cm / 体重40kg
  • 使用バッグ:Motiva Ergonomix2 250cc
  • 術式:乳腺下法

私の診断とアプローチ

リップリングのリスクは高い体型ですが、
・バッグの特性
・サイズ選定
・ポケット作成をミリ単位で調整

これらを徹底することで、自然な仕上がりを目指しました。

術後6ヶ月、デコルテから自然に立ち上がる柔らかなバストラインが完成しています。


まとめ

「痩せているから、不自然になるのは仕方がない」
「リップリングが出るのは、我慢するしかない」

そう思って、豊胸を諦めてしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。

医療技術やシリコンバッグの進化により、現在では痩せ型の方であっても、自然で本物の胸と見分けがつかない仕上がりを目指せる時代になっています。

大切なのは、患者さま一人ひとりの身体的特徴(皮膚の厚み・骨格・筋肉のつき方)を正確に診断し、それに合わせてオーダーメイドで設計することです。

当院では、カウンセリング時に超音波エコーなどを用いて組織の厚みを丁寧に評価し、リスクをできる限り抑えた治療プランをご提案しています。

「脂肪が少なくて、豊胸を諦めていた」
「自然さはそのままに、しっかりメリハリのあるバストにしたい」

そんな方はぜひ私にお任せください。
あなたの体型に合った最適な方法を、一緒に考えていきましょう。

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