鼻整形では、切開した部位や軟骨・皮膚の固定のために「溶ける糸(吸収糸)」が使われることがあります。
「◯ヶ月で自然に吸収されるから安心ですよ」と説明されたけど、「まだ残ってる気がする」「糸が出てきた」といった不安を感じる方も一定数いらっしゃいます。
今回は、縫合目的で使われる吸収糸に焦点を当てて、本当に溶けるのか?何か月で消えるのか?といった疑問に専門医の立場からお答えします。
吸収糸とは?鼻整形での役割
鼻整形の術中に使用する「溶ける糸」とは、体内で時間をかけて分解・吸収される素材の縫合糸を指します。代表的なものには以下の種類があります。
- Vicryl®(ポリグリコール酸系):およそ60〜90日で吸収
- PDS II®(ポリジオキサノン):およそ180日程度で吸収
- Monocryl®(ポリグリカプロン):およそ90〜120日で吸収
これらは鼻整形において、
・皮膚の縫合
・軟骨移植の固定
・皮下組織の安定化
などに使われます。
「糸が何年も残る」は基本的に別素材の話
吸収糸が数年単位で体内に残ることは、基本的にはありません。
よくSNSなどで見かける「溶ける糸が数年後も残っていた」というケースの多くは、PODスレッドやPLA素材(乳酸系ポリマー)を使った補強材(例:オステオポール)といった、構造形成やボリューム維持を目的とした“太く長めの糸やプレート”の話です。
一方で、縫合糸として使われる吸収糸は“残り続けない”のが前提の素材です。
個人差はありますが、最大でも半年程度で体内から消失し、異物感を残すようなケースはきわめて稀です。
吸収糸はいつ溶けるの?
糸の種類や太さ、使われた部位によって吸収速度に差がありますが、一般的には以下のような目安になります。
糸の種類 | 使用目的 | 吸収完了の目安 |
---|---|---|
Vicryl | 皮膚・皮下縫合 | 約60〜90日 |
PDS II | 軟骨固定などの深部 | 約150〜180日 |
Monocryl | 表層縫合・固定 | 約90〜120日 |
なお、吸収は“急に消える”わけではなく、徐々に水分や酵素で分解されていくため、途中で組織の中に溶けかけた断片が見られることもあります。
糸が出てきた…これも「溶ける糸」?
術後しばらくして、皮膚から細い糸のようなものが出てきたと相談されることがあります。
この場合考えられるのは:
- 表層近くに使われた吸収糸の一部が押し出された
- まれに残存した非吸収糸や異物片
体外に出てきた糸は、体内での吸収がすでに完了している可能性が高いため、残っている部分は吸収されないと考えられます。
無理に引っ張らず、気になる場合は医師の診察を受けて安全に処置してもらいましょう。
まとめ|鼻整形で使われる「溶ける糸」は、通常半年以内に吸収されます
- 鼻整形で使用される吸収糸は縫合や固定目的に使われるもので、数年も残存することは基本的にありません。
- 「数年後も残っていた」という情報は、ボリューム形成目的のスレッドやプレート(PODやオステオポール)の話である可能性が高いです。
- 体質や部位によって若干の吸収期間の差はあるものの、術後半年〜1年で自然に消失します。
鼻の整形後、「糸が気になる」「出てきたかも」と思ったら、まずはご自身で触らず、医師に相談するのが安全です。