【骨切り後に人中が伸びる?】原因と対策を専門医が解説

この記事は 前田 翔 医師(形成外科専門医・美容外科専門医) が監修しています。

骨切り手術(ルフォー、SSRO、セットバックなど)を受けたあと、
「人中が伸びた気がする」
「顔は小さくなったのに、鼻下が間延びして見える」
と感じる方は少なくありません。

実際、僕の外来でも骨切り後の患者さんから「人中が長くなったのでは?」というご相談をよく受けます。

ただし結論から言えば──骨切りによって人中そのものが物理的に“伸びる”ことは多くありません。
しかし、骨格の位置が変わることで

  • 鼻下の皮膚や筋肉が余って下に引き伸ばされたように見える
  • 上唇が後退し、相対的に人中が長く感じられる
  • 横顔のEラインが変わり、人中が強調される
    といった理由で「長くなったように見える」ことはあります。

人中は顔の印象に直結する重要な部位です。伸びて見えると、間延び感や老け感につながるため、多くの方が気になるのも当然です。

本記事では、骨切り後に人中が伸びる原因とその見え方のカラクリ、さらに実際の対策方法について専門医の立場から解説します。

目次

骨切り手術と人中の関係

骨切り手術は、顔の輪郭や口元を根本から整えるために行われる大きな手術です。代表的なものにルフォー(上顎骨切り)、SSRO(下顎枝矢状分割)、セットバック(前歯部骨切り)などがあります。これらはいずれも、骨そのものを切り、位置を前後・上下に移動させることで、突出感や咬合の問題を改善します。

では、この「骨の移動」がなぜ人中(鼻下〜上唇の距離)に影響を与えるのでしょうか。

骨格と人中の位置関係

人中は鼻の下から上唇までの皮膚の部分ですが、単なる皮膚ではなく、その奥には 上顎骨・歯槽骨・筋肉 が存在しています。つまり骨格の変化は、直接的に人中や口唇の形に影響します。
たとえば、上顎を後退させると、鼻下の皮膚が余ってしまい「距離が伸びたように見える」ことがあります。

口唇と人中はセットで動く

骨切りでは上顎や下顎を後退させることが多いため、口元全体が平坦になります。その結果、上唇が薄く見えたり、前方への張りが弱まったりします。すると、人中が相対的に強調され、実際以上に長く感じられるのです。

美容目的の骨切りと人中の変化への配慮

骨切りは「小顔にしたい」「口元の突出感を改善したい」と希望して行われることが多い手術です。
ただし、骨格の位置を大きく変える性質上、人中の長さや口元の印象が思わぬ形で変化することがあるのも事実です。

特に、上顎や下顎を後退させた場合には、鼻下の距離が強調されて「人中が伸びたように見える」ことがあります。
これは必ずしも手術の失敗ではなく、骨切りの影響で顔全体の重心や皮膚の張力が変わることによる“術後特有の見え方”といえます。

そのため、美容目的の骨切りを考える際には、咬合や輪郭だけでなく、人中・唇・鼻とのバランスもあらかじめ理解しておくことが大切です。

骨切り後に人中が「伸びる」と感じる主な原因

骨切り手術のあと、人中が実際に数ミリ長くなっているケースもあれば、実際の長さは変わっていないのに「伸びたように見える」ケースもあります。
ここでは、その代表的な原因を整理します。


上顎骨の後退による皮膚の余り

ルフォーⅠ型骨切りやセットバックなど、上顎骨を後退させる手術では、骨が後方へ移動する分だけ、鼻下から上唇にかけての皮膚が余りやすくなります。
この「皮膚の余り」が下に引き伸ばされたように見え、人中が長く感じられる大きな要因です。


上唇のボリューム減少

骨切りによって口元全体が後退すると、上唇の厚みや前方への張り出しが弱く見えます。
唇の丸みが失われると、鼻下から唇の赤い部分までの距離が間延びして見え、人中が強調されてしまいます。


皮膚と筋肉の張力低下

骨格を動かすと、それに付随する筋肉・軟部組織も新しい位置に適応しなければなりません。
しかし手術直後は張力のバランスが不安定で、皮膚や筋肉が緩んで見えることがあります。
このため「人中が伸びている」と感じるのです。


横顔バランス(Eライン)の変化

骨切りによって口元が後退すると、鼻や顎との位置関係が変わります。
特にEライン(鼻先〜唇〜顎先を結ぶライン)のカーブが変わると、相対的に鼻下の距離が強調され、人中が長くなったように錯覚するケースがあります。


術後の腫れや癒着による一時的な変化

骨切りは大きな手術であり、術後しばらくは腫れや組織の癒着が残ります。
このため一時的に人中が伸びて見えることもありますが、多くの場合は半年〜1年かけて落ち着いていきます。

実際には「伸びていない」場合もある

骨切り後に「人中が伸びた」と感じる方の中には、実際の距離はほとんど変わっていないケースも多くあります。
つまり、“物理的な伸び”ではなく、“見え方の問題”であることが少なくないのです。


錯覚による「伸びた感じ」

人中の長さは、単に皮膚の距離だけでなく「唇の厚み」や「顔全体のバランス」で決まります。
骨切りによって口元が後退すると、唇が薄く見え、鼻下から唇までの距離が強調されるため、実際に伸びていなくても長く見えてしまうのです。


横顔の印象変化

術前は口元が前に出ていたため、人中が短く見えていたケースがあります。
骨切りで口元が後退すると、正面から見ても横から見ても人中が「露出」される形になり、結果的に長く見えることがあります。


術後の腫れや浮腫

骨切り直後は腫れや浮腫みが強く残るため、唇の動きや表情筋のバランスが制限されます。
その一時的な影響で「鼻下が間延びしているように見える」ことがあり、時間の経過とともに改善するケースも多いです。

骨切り後に人中が伸びた場合の対策

骨切り後に「人中が長く見える」と悩んでも、必ずしも大きな問題ではありません。
しかし、顔の印象やバランスに直結する部分だけに、改善を希望される方も少なくありません。
ここでは、代表的な対策法を解説します。


人中短縮術

最も直接的な方法が、人中を短く整える「人中短縮術」です。
鼻下の皮膚を切除して距離を縮める方法が一般的ですが、近年は 裏人中短縮 といって口腔粘膜側からアプローチする方法もあります。

骨切り後に「人中が間延びして見える」方にとっては、バランス改善の有効な選択肢になります。


口角挙上術との併用

人中が長く見えるだけでなく、口角が下がっていると「間延び感」がさらに強調されます。
その場合は、人中短縮+口角挙上を組み合わせることで、口元全体が引き締まって若々しい印象になります。


唇のボリューム調整

「実際の人中の長さは変わっていないが、唇が薄く見えるせいで長く感じる」ケースでは、

  • ヒアルロン酸注入
  • 自家脂肪注入
    によって上唇のボリュームを補うことで、相対的に人中を短く見せることが可能です。

特に骨切り後は唇の張りが弱まりやすいため、この方法で印象を自然に改善できるケースが多いです。


経過観察という選択肢

術後間もない時期は、腫れや筋肉の緊張が残っているため「人中が伸びて見える」ことがあります。
その場合、半年〜1年程度は様子をみることが推奨されます。
時間とともに皮膚や筋肉が馴染み、自然と気にならなくなる方も少なくありません。


骨切り後に人中が長く見えると感じても、必ずしも「失敗」ではなく、いくつかの改善策があります。

  • 人中短縮術で距離を縮める
  • 口角挙上で全体のバランスを整える
  • 唇のボリューム補正で相対的に改善する
  • 時間経過で自然に馴染むのを待つ
    といった方法があり、症状や希望に応じて選択可能です。

症例紹介:骨切り後に人中短縮で整えたケース

人中短縮 症例
人中短縮 症例
人中短縮 症例
人中短縮 症例
人中短縮 症例
人中短縮 症例

症例の背景

骨切り後に「人中が長く見える」とお悩みの方の症例です。

鼻下から上唇までの距離が強調され、顔全体が間延びして見える状態でした。
人中は顔の中心に位置するため、わずかな変化でも全体の印象に大きく影響します。


行った施術

  • 拡大人中短縮:確実な短縮効果を出しつつ、傷跡が目立たないデザイン
  • 人中厚み調整3D:平坦な鼻下に厚みを持たせ、立体感を形成
  • 人中窩形成術:中央のくぼみを整え、自然な陰影を演出
  • 口角挙上:口元全体を引き締め、柔らかい印象を付与

結果(術後3ヶ月)

  • 人中の長さが自然に短縮され、間延び感が改善
  • 上唇の丸みと立体感が戻り、若々しい印象へ
  • 傷跡はほとんど目立たず、自然に馴染んでいる

人中は数ミリの差で印象が大きく変わる非常に繊細な部位です。
骨切り後のバランス修正として人中短縮を行う場合、単なる切除ではなく、厚み・くぼみ・口角の位置まで立体的に調整することが重要です。

構造を理解せずに手術を行えば、

  • 傷跡の露出
  • 口唇閉鎖不全
  • 鼻翼・鼻柱の変形
    といったリスクを伴います。

そのため「どの部分を・どの程度・どの方向に操作するか」を精密に設計することで、自然で長期的に安定した仕上がりが得られます。

骨切り+鼻・口元整形の総合的デザインの重要性

骨切り手術は、顔全体の骨格バランスを根本から変える強力な方法です。
しかし、それだけで「完成形」になるわけではありません。

実際には──

  • 鼻の位置や角度
  • 人中の長さや厚み
  • 唇の丸みや口角の角度
  • 顎先との前後バランス
    これらすべてが連動して、初めて自然で美しい口元・横顔のラインが完成します。

骨切りだけでは解決しきれない部分

骨切りで口元の突出感を改善しても、人中や鼻の形が相対的に強調されることがあります。
「顔が小さくなったのに、どこか不自然」
「Eラインは整ったのに、口元だけ間延びした」
と感じるのはこのためです。


鼻・人中・口元をセットで考える

特に鼻下(人中)は、鼻の基部と上唇の両方に挟まれた部位です。
骨切りで上顎を後退させると、鼻や唇とのバランスがずれるため、鼻整形や人中短縮を組み合わせることで本来の調和が得られるケースが多くあります。


総合的なデザインこそが「自然さ」の鍵

美容外科のデザインは、部分ごとに見るのではなく「全体の流れ」として捉えることが重要です。
骨格・鼻・人中・唇・顎をトータルで設計することで、どこか一箇所だけが不自然に浮いてしまうリスクを減らせます。

僕自身も手術計画を立てる際には、骨切りの有無にかかわらず、顔の中心(鼻〜人中〜唇)を基準に全体像を設計することを大切にしています。

まとめ

骨切り手術のあとに「人中が伸びたように見える」と感じる方は少なくありません。
実際には骨格移動によって

  • 鼻下の皮膚や筋肉が余って間延びして見える
  • 唇のボリュームが減って相対的に長く見える
  • 横顔バランスの変化で錯覚が強調される
    といった要因が重なって起こる現象です。

多くの場合は「本当に伸びた」のではなく、術後特有の見え方バランスの変化が原因であり、時間の経過で改善することもあります。
しかし、中には骨切り後に人中が強調されてしまい、修正を希望される方もいらっしゃいます。

その場合の改善策としては、

  • 人中短縮術(裏人中短縮を含む)
  • 口角挙上術との併用
  • 唇のボリューム調整(脂肪注入・ヒアルロン酸)
  • 経過観察(半年〜1年で自然に馴染むことも)
    といった方法があります。

実際の症例でも、骨切り後に間延びした人中を 拡大人中短縮+3D厚み調整+人中窩形成+口角挙上 で自然に整え、若々しい口元を取り戻すことができました。

重要なのは、人中だけを短くするのではなく、鼻・唇・顎を含めた顔全体のバランスを見ながら設計することです。
骨格手術であっても、ゴールは「自然で美しい調和」。そのためには解剖学的な理解と繊細なデザイン力が欠かせません。

もし骨切り後に人中の長さや口元の印象が気になる場合は、焦らずにまずはご相談ください。
専門医の視点から、顔全体の調和を考えたうえで、最も自然で長期的に安定した方法をご提案いたします。

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