鼻の形が変わり続ける?異物による骨萎縮と修正手術の考え方

「昔より鼻が下がった気がする」
「横顔のラインがぼやけてきた」
「プロテーゼを抜いたら一気に鼻が低くなった」
「ヒアルが減っただけ…とは思えない変化がある」

こういった相談を、僕は毎日のように受けています。

鼻の変化は加齢だけでは説明できないことが多く、実際には “内部の構造が変化している” ケースが少なくありません。

特に、
・シリコンプロテーゼ
・L型プロテーゼ
・長期持続型ヒアルロン酸
・硬い異物系の素材
などが入っていた鼻では、時間の経過とともに骨や軟部組織が変形してしまうことがあります。

そのため、

「抜いたら元に戻る」
「時間が経てば自然になじむ」

とは限らないのです。

このコラムでは、異物が与える鼻の“構造変化”をできるだけ分かりやすく解説しながら、修正手術でどう立て直すのかという専門的な視点もお伝えしていきます。

目次

異物が引き起こす“内部の変化”とは?

鼻の中に異物が長期間入ると、主に次の3つの変化が起こります。

① 骨萎縮(こついしゅく)—“土台が薄くなる”現象

人間の骨は、思っているよりも柔らかく、長期間押され続けると 少しずつ薄くなる ことがあります。

これは「圧迫性骨萎縮」と呼ばれる現象で、プロテーゼや硬いヒアルなどが原因になることがあります。

骨が薄くなると
・鼻根が低く見える
・鼻筋がぼやける
・鼻先の支えが弱くなる
といった見た目の変化が生じます。

特にプロテーゼ抜去後に「急に鼻が平らになった」と感じるのは、骨萎縮が進んでいた証拠です。

② 鼻先の皮膚が薄くなる(菲薄化)

プロテーゼの先端が長い期間“鼻先の皮膚”を内側から押し続けると、少しずつ皮膚が薄くなり、次のような状態が起こることがあります。

・赤みが出る
・皮膚が透けて白っぽく見える
・プロテーゼの形が浮き出る
・最悪の場合、露出寸前になる

特に
長期間L型や硬めのI型プロテーゼが入っていた人
拘縮(皮膚が硬く縮む反応)が強い人
では、このリスクが高まります。

鼻先は血流が豊富ではないため、一度薄くなると回復が難しく、再建が必要になることも珍しくありません。

③ 被膜の収縮—鼻が“引っ張られて”曲がる

体は異物を守るために“被膜”という膜を作ります。
しかしこの膜が縮むと、鼻が下向きに引っ張られたり、左右に曲がったりします。

・鼻先が下がる(タレ鼻化)
・鼻筋が曲がる
・不自然な角度になる

といったトラブルの原因の多くが、この被膜による変形です。

異物により“骨萎縮して陥没した中顔面”を、構造から再建したケース


Before の段階では、鼻だけでなく中顔面が全体的に“陥没して見える状態”でした。

異物による骨萎縮や軟部組織の減少で、顔の中心部のボリュームが失われ、中顔面が陥没してしまっています。

・鼻根が落ち込み、眉間〜鼻根のラインが途切れている。
鼻背のラインが曲がって見え、形が不自然になっている。
・中顔面がへこみ、奥行きが失われている。
・鼻先の支持が弱く、軟骨が押されてアップノーズ気味になっている。
・額 → 鼻 → 口元の立体が途切れ、顔の中心軸が乱れている。

これらの変化は、骨萎縮・皮膚の菲薄化・鼻柱軟骨の圧迫変形など、異物を長期間入れていた際に起こる典型的な所見です。

特に鼻先は、高さではなく“支える柱”が失われた状態のため、高さを足すだけの治療では自然な改善は得られません。

この症例では、鼻の支柱と中顔面の立体を同時に再建する必要がありました。

こうした構造の崩れを元に戻すため、鼻形成と猫貴族手術を併用し、鼻も含め中顔面をまとめて再建 しています。

行った施術は以下のとおりです。

  • プロテーゼ抜去
  • 鼻尖形成
  • 鼻中隔延長(肋軟骨)
  • 隆鼻(必要最小限の高さ補正)
  • 眉間軟骨移植
  • 猫貴族手術

これらを組み合わせることで、必要な箇所に最小限のボリューム補正と軟部組織の再配置を行い、欠損していた支持構造を本来の位置へ整えること を目指しました。

術後1ヶ月の段階でも、構造の再建による変化がはっきり現れています。

  • 鼻根の落ち込みが改善し、眉間〜鼻根が自然につながる
  • 鼻背ラインの曲がりが解消し、横から見てもまっすぐに
  • 鼻先の角度が安定し、アップノーズ傾向が改善
  • 中顔面に奥行きが戻り、平坦な印象が軽減
  • 額 → 鼻 → 口元 の立体が一つのラインとして連続する

過度に大きく変えるのではなく、本来あるべき位置に骨・軟骨・軟部組織を戻すことで、自然な仕上がりが再現されています。

修正手術の考え方:“盛る整形”では治らない理由

鼻整形の相談を受けていると、
「高さを足せばいいのかと思った」
という方がとても多いです。

しかし、骨萎縮や軟部組織の変形が進んでいる鼻では、高さを足しても自然な立体は戻りません。

むしろ、
構造が弱ったまま高くすると
・すぐに崩れる
・横から見た時に不自然
など、新たな違和感を生むこともあります。

必要なのは高さではなく “支持構造の再建”。

ここが修正手術の最も重要なポイントです。

支持構造をどう再建するのか?

僕が行う修正手術では、次の流れで構造を立て直します。

① 欠損している部分を評価する

・骨の萎縮範囲
・軟部組織の厚み
・被膜の収縮方向
・鼻先〜鼻背の角度
・横顔の“連続性の崩れ方”

これらをミリ単位で評価します。

② 支えとなる“鼻の土台”を再構築する

・鼻中隔を補強し、中心軸を安定化
・押しつぶされていた軟骨を整え、鼻先の支柱を再建
・鼻背が折れないよう、本来の“面”として連続させる
・骨萎縮部には最小限のボリューム補正を行い、形態を回復

③ 必要に応じて中顔面の支持を強化:猫貴族手術

・鼻だけでは補えない中顔面の落ち込みを改善
・顔の土台となる中顔面の支持を補強し、額→鼻→中顔面→口元の流れを整える
・立体の“つながり”を作り、横顔に自然な奥行きを生む

形成外科専門医としての視点:ミリ単位の調整が“自然さ”を決める

僕はこれまで、外傷や再建分野で“崩れた構造を組み直す”手術に多く関わってきました。

その経験から感じているのは、鼻ほどミリ単位の調整が必要な部位はない、ということ。

鼻は顔の中心で影を作り出すパーツです。
軟骨・骨・軟部組織の位置が1〜2mmズレるだけで影の落ち方が変わり、印象が大きく変化します。

逆に言えば、正しい位置に組み直すだけで大きな変化を加えなくても自然な美しさは戻る。

修正手術は“足す整形”ではなく、“位置を整える整形”。

これが、僕がもっとも大切にしている考え方です。

まとめ

・鼻が昔と比べて低くなった
・横顔のバランスが悪くなった
・プロテーゼを抜いたら一気に平らになった
・ヒアル減少だけでは説明がつかない違和感がある

こういった悩みは、内部の構造が変化しているサインです。

表面を変える施術だけでは改善できないことが多く、必要なのは“構造から立て直す修正手術”。

自然な立体を取り戻すために、鼻だけでなく“顔全体の連続性”まで含めて診ることが大切です。

もし
「最近鼻が変わってきた」
と思う方は、一度相談に来てください。

あなたの鼻の変化の理由を、構造の視点で丁寧に診させていただきます。

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次