他院修正のご相談をいただくなかで、複数の施術が重なり合い、鼻の形が大きく崩れてしまったケースに対応することがあります。
今回ご紹介するのは、他院でプロテーゼ・耳軟骨移植・鼻中隔延長を組み合わせた施術を受けた後、鼻筋の曲がりや鼻先の方向のアンバランスが生じた患者様の修正手術です。
異物の除去から鼻全体の再建、さらに輪郭(頬骨削り・Vライン形成)まで含めた複合手術でしたが、今回は鼻の修正について詳しくお伝えします。
術前の状態:何が起きていたのか
今回の患者様は、他院で2回の鼻の手術を受けていました。
1回目:鼻尖形成・耳介軟骨移植・鼻柱下降・小鼻縮小(内外法)
2回目:鼻フル(肋軟骨)・プロテーゼ挿入・貴族手術・鼻骨骨切り
2回の手術を経て、鼻筋の曲がりや鼻先の方向のアンバランスが生じていました。術中を開けてみると、想定以上に複雑な状態でした。

まず、プロテーゼが斜めに入っていました。鼻筋が曲がっていたのはそのためと考えられますが、プロテーゼの右側にのみ肋軟骨が固定されており、左側にはありませんでした。意図的な調整だったのか、施術上のばらつきだったのかは判断できませんが、左右で異なる構造になっていたことは確かです。
次に、鼻中隔延長は途中までしか行われておらず、その上に耳軟骨を3枚重ねることで鼻先の高さを補っていました。鼻中隔延長で鼻先を十分な位置まで伸ばすのではなく、軟骨を積み重ねることで高さを出しているような構造です。
この状態では、鼻先を下方向に向けることが難しくなります。鼻翼軟骨が奥からしっかり支持されていないため、鼻の穴を下に持っていくことができず、鼻先がアップノーズになりやすい。高さは出ているように見えても、方向と形のコントロールが難しい状態でした。
また、皮膚の浅い層で剥離が行われていたため、鼻先の皮膚にもダメージが生じており、組織の状態として非常に難しいケースでした。
修正手術の内容
今回の修正手術では、以下の術式を組み合わせて対応しました。
鼻中隔延長(肋軟骨):¥860,000
鼻尖形成:¥337,000
鼻尖部軟骨移植:¥240,000
猫貴族手術(肋軟骨):¥440,000
まず、既存のプロテーゼと重ねて移植されていた耳軟骨をすべて除去しました。異物と過剰な軟骨を取り除くことで、鼻の本来の構造を確認し、再建の土台を整えます。
次に、鼻翼軟骨をしっかり剥離し、奥からきちんと支持できる状態を作った上で、肋軟骨を用いた鼻中隔延長を行いました。今回の患者様のように、鼻先を十分な位置まで下方向に伸ばしたい場合、鼻中隔延長で土台からしっかり方向を決めることが重要です。軟骨を積み重ねるだけでは、方向のコントロールに限界があります。
鼻筋については、肋軟骨を用いた自家組織隆鼻で高さと形を整えました。プロテーゼは使用せず、すべて自身の組織で再建しています。
鼻翼基部(小鼻の付け根)には猫貴族手術を行い、鼻全体のバランスを整えました。
なぜ「プロテーゼ+自家軟骨」の組み合わせが問題になるのか
今回のケースで気になったのは、プロテーゼと自家軟骨(耳軟骨・肋軟骨)を同じ部位に混在させていたことです。僕自身は、この組み合わせをしない方針をとっています。理由はいくつかあります。
①感染リスクの問題
プロテーゼは異物であるため、感染が起きた場合に抗生剤が効きにくく、抜去しなければ治癒しないケースがあります。自家軟骨と混在している状態では、どちらが感染源かの特定も難しくなり、対処が複雑になります。
②長期的な安定性の問題
プロテーゼは周囲に被膜を形成しながら存在しますが、自家軟骨は組織と癒着・生着していきます。この異なる動きをする素材が同じ部位にあると、長期的に形が安定しにくくなることがあります。
③修正時の難易度が大きく上がる
後から修正しようとすると、プロテーゼと癒着した自家軟骨を分離する操作が必要になり、周囲組織へのダメージが増えます。今回のケースでも、その複雑さが術中の操作に影響しました。
そもそも、肋軟骨が使える状況であれば、プロテーゼを選ぶ必要はないと考えています。肋軟骨は量も十分に確保でき、強度もあり、自家組織なので体との親和性が高い。感染リスクも低く、長期的な安定性も自家軟骨の方が優れています。プロテーゼと同等かそれ以上の高さと形を、自家組織だけで実現できるなら、あえて異物を体内に入れる理由はないというのが僕の考えです。
胸への切開という採取の負担はありますが、長期的なトラブルリスクを考えると、肋軟骨を使った自家組織での再建の方が患者様にとってメリットが大きいと判断しています。
重度修正手術で求められること
修正手術の難しさは、既存の構造をすべて把握した上で、どこをどう変えるかを設計しなければならない点にあります。
今回のように、プロテーゼ・耳軟骨・鼻中隔延長が複合的に入っているケースでは、単に「取り除く」だけでなく、取り除いた後に何が残るのかを術前から想定した上で計画を立てる必要があります。
また、皮膚のダメージがある場合は、再建の際に皮膚への負担を最小限にする操作が求められます。無理に引っ張らない、血流を保つ、組織を丁寧に扱う。地味な作業の積み重ねが、最終的な仕上がりに影響します。
修正手術は、初回手術よりも選択肢が限られます。残っている組織の量、瘢痕の状態、血流。これらをすべて考慮した上で、現実的に何ができるかを判断します。「こうしたい」という理想と、「今の状態でどこまでできるか」という現実のバランスをとることが、修正手術の設計で最も重要なことだと思っています。
まとめ
他院でプロテーゼ、耳軟骨移植、鼻中隔延長を組み合わせた結果、鼻筋の湾曲や鼻先のアンバランスが生じてしまった重度修正の症例をご紹介しました。
実際に手術を開始してみると、内部は想像以上に深刻な状態でした。プロテーゼと自家軟骨が複雑に混在し、癒着も激しく、皮膚組織自体にもダメージが及んでいたのです。こうしたケースでは、単に異物を取り除くだけでなく、傷んだ組織をいかに丁寧に扱いながら土台を再構築できるかが鍵となります。
今回は、それらすべてを慎重に整理した上で、肋軟骨を用いた鼻中隔延長・鼻尖形成、そして猫貴族手術によって、鼻全体の構造をゼロから正しく再建しました。
「修正を繰り返すと、もう治らないのではないか」と一人で悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、今の状態を正しく把握して、適切な処置を施せば、改善できる部分は必ずあります。
今の鼻の状態に違和感や不安を感じている方は、一度診察へお越しください。あなたの鼻が今どのような状態にあるのか、そしてどのような修正が可能なのか、経験に基づいた正確な診断と、方針をご提案させていただきます。





