顎下たるみに効く:ペリカン手術の術中解説で知る“構造からの改善”

「顎下のもたつきが気になる」「脂肪吸引をしたのに、思ったよりすっきりしなかった」
そんな経験はありませんか?

顎下(あごした)のたるみは、年齢とともに誰にでも起こる変化のひとつですが、その原因が「皮膚」や「脂肪」だけだと思っている方も多いかもしれません。実は、それだけではなく、“筋肉”の緩みや張りも大きく関係しています。

今回は、術中の実際の映像をもとに、「ペリカン手術(顎下筋肉縛り)」という首元のたるみ治療について、より深く、構造的な視点から解説していきます。


目次

広頚筋ってなに?首のたるみとどう関係しているのか

顎下のたるみを医学的に考えると、主に以下の3つの要因が絡みます。

  • 皮膚のたるみ(皮膚の質・弾力の低下)
  • 皮下脂肪の蓄積(浅層・深層)
  • 広頚筋(こうけいきん)の緩み・開き

この中で、意外と見落とされがちなのが「広頚筋」という筋肉です。広頚筋は、あご下〜首の前面にかけて左右に広がる薄い筋肉で、加齢や姿勢の変化などにより、中央に寄っていた筋肉が左右に引っ張られ、首の中央に“縦スジ”のようなラインが浮かんできます。

これが、いわゆる「ペリカンの喉袋」のようなたるみの正体です。


術中で見える「広頚筋処理」のリアル

今回の術中映像では、実際にこの広頚筋に対して行う操作が詳しく映されています。

広頚筋は、単に切って終わりではなく、“どう処理するか”が非常に重要です。僕が採用しているのは、「下側を中心にカットして、左右の筋肉を縫い寄せる」という手法。術中の感覚で言うと、「右のカーテンを左に引っ張って寄せるような動き」に近いです。

この処理をすることで、真ん中にできていた“突っ張り”や“縦のスジ”が物理的に解消され、顎下がスムーズなラインになります。

なお、上側の筋肉も一部処理しますが、メインは下部。これは、張りの強い部分を重点的に処理することで、より自然な仕上がりが得られるという知見に基づいています。


脂肪吸引だけでは足りない理由

ペリカン手術では、筋肉への処理だけでなく、脂肪の深い層までしっかり除去することも重要です。
実際、「脂肪吸引はしたけれど、顎下がいまひとつスッキリしない」と感じる方の多くは、浅い層の脂肪しか処理されておらず、深部に脂肪が残っているケースが少なくありません

今回のケースでも、皮膚のすぐ下だけでなく、筋肉に近い部分にまで詰まっていた脂肪を丁寧に除去しました。
その結果、筋肉の輪郭がはっきりと現れ、フェイスライン全体がシャープで引き締まった印象に仕上がります。

浅い脂肪だけでは変化が出にくい場合も、構造を意識した深層アプローチを組み合わせることで、仕上がりに大きな差が出てきます。


“たるみの構造”を理解すれば治療の選択肢が見えてくる

ペリカン手術は、「皮膚を切らずに、筋肉を縫い直す」手術です。
つまり、構造的な原因に対して直接アプローチできるのが最大のメリット。

こんな方に向いています。

  • 脂肪吸引後も“縦スジ”が気になる方
  • 皮膚はまだそれほど緩んでいないけれど、顎下に締まりがない方
  • フェイスリフトまでは必要ないけれど、首元をすっきりさせたい方

顎下たるみを“構造から治す”という考え方

美容医療では、つい「脂肪を取ればすっきりする」と思いがちですが、本当の意味で自然な輪郭を作るには、「骨格」「筋肉」「脂肪」「皮膚」のすべてを理解して調整する必要があります。

ペリカン手術はその中でも「筋肉」に着目した、構造レベルでのアプローチです。
脂肪を取るだけでは解消しきれなかった“突っ張り”や“たるみ”に、しっかりと効果を発揮します。


まとめ

顎下のもたつきに対して、「脂肪吸引をしたのに変わらなかった」「皮膚のたるみは少ないのに、シャープな輪郭にならない」と感じている方へ。
その原因は、脂肪や皮膚だけではなく、首の深層構造にある“広頚筋のゆるみ”かもしれません。

広頚筋は、首の前面を覆う薄い筋肉で、年齢や習慣、体質によって緩みや開きが起こると、顎下に“ペリカン状”のたるみや縦スジを作り出します。
この筋肉にアプローチせずに脂肪だけを取っても、思ったようなフェイスラインには仕上がらないケースも少なくありません

ペリカン手術(顎下筋肉縛り)は、そうした“構造的なたるみ”に対して、筋肉そのものを縫合・整復することで根本から改善を目指す手術です。

実際の術中映像を見ていただくとわかるように、筋肉の処理は非常に繊細で、医学的な知識と経験が求められます。
僕自身、形成外科・美容外科の専門医として、解剖学的構造を深く理解したうえで、見た目の美しさを“設計する”ような手術を日々心がけています。

もし、「これまでの治療では満足できなかった」「本当の原因が知りたい」と思われているなら、一度“構造からの改善”という選択肢を検討してみてください。
患者さん一人ひとりの状態に応じて、最適な方法をご提案します。

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