アイプチ常用者のまぶた、手術時に起こる問題とは?

長年アイプチやアイテープを使い続けたまぶたは、見た目以上に皮膚や組織の構造が変化しています
「そろそろ手術でちゃんとした二重にしたい」と考える患者さんも多く来院されますが、実はこの“癖づけまぶた”には、手術時に特有の注意点がいくつもあります。

私は美容外科の現場で、アイプチ常用歴10年以上の方も多く手術してきました。この記事では、アイプチ常用によるまぶたへの影響・術式の選択肢・リスクと対策まで、専門的に解説します。


目次

アイプチがまぶたに与える影響|5つの構造的変化

① 皮膚の菲薄化と癒着

毎日の粘着剤の刺激により、皮膚表面のバリア機能が低下し、菲薄化(ひはくか=薄くなること)します。加えて、何度も同じ部位に圧力がかかることで、皮下組織との癒着(癒合)が起こることがあります。

癒着があると、埋没糸が食い込みにくくなり、ラインの持続性に影響します。

② 重瞼線の偽形成と組織の固着

人工的に“二重ライン”ができていたまぶたは、本来の解剖学的な重瞼線とは異なる位置に癖がついていることが多く、ラインの固定が不安定になります。

また、皮膚〜挙筋腱膜〜眼窩隔膜の間で不規則な癒着がある場合、組織の滑走性(動き)が失われているため、埋没法で自然な開閉がしづらくなります。

③ 眼瞼挙筋の不均衡

アイプチに合わせた表情筋の使い方を繰り返していると、まぶたを引き上げる筋肉(眼瞼挙筋)や前頭筋の動きがアンバランスになることがあります。
結果として、手術後も眼瞼下垂様の開きの悪さや左右差が残りやすくなります。

④ 脂肪分布の偏り

まぶたの押し上げ・圧迫により、隔膜前脂肪が不自然に癒着したり、偏って移動しているケースがあります。術前に左右の厚みをしっかりと評価しないと、ラインが浮いたり凹んだりする原因になります。

⑤ 皮膚の弛緩(たるみ)

長年の粘着テープ使用により、まぶたの皮膚が物理的に伸びてしまっているケースもあります。特に30代以降では、たるみが顕著で、切開法を併用しないと理想的な形に整えるのが難しい場合も。


手術の選択肢|埋没法で本当に対応できるのか?

埋没法で十分なケース

  • 若年層(20代前半以下)で皮膚の弾力があり、アイプチ歴も短い
  • 癖はあるが皮膚の菲薄化・癒着が軽度
  • 幅の狭いナチュラルラインを希望している

上記であれば、埋没法で問題ないケースがほとんどです。

埋没が不安定になりやすいケース

  • アイプチ歴が5年以上で毎日使用
  • すでにラインの戻り癖が強い
  • 中等度のたるみや皮膚肥厚がある

この場合、糸が食い込みにくく、すぐに戻る・左右差が出やすい・腫れが強く出るといったトラブルにつながります。


切開法のメリットと適応

切開法(部分切開/全切開)は、アイプチによる構造変化が大きい方にこそメリットがあります。

  • 癒着を解除し、解剖学的に正しい位置に二重を再形成できる
  • 過剰な脂肪を除去・再配置することで、厚みや凹凸の調整が可能
  • ラインの左右差を根本的に修正できる
  • 同時に眼瞼下垂の補正や皮膚切除が可能なため、若返り効果も高い

術前診察で必ず確認すべきポイント

  1. アイプチ使用歴(年数・頻度・使用部位)
  2. まぶたの皮膚の質感(硬さ・厚み・弾力)
  3. 癖のラインがどこにあるか、希望のラインとの差
  4. 脂肪の量と分布、皮膚のたるみ
  5. 開瞼機能の評価(眼瞼下垂の有無)

当院でのアプローチ|“見た目の癖”ではなく“構造の本質”を診る

当院では、アイプチ常用者のまぶたには次のような方針で診察・治療を行っています:

  • 皮膚の癒着・厚みを診ながら癖のラインにとらわれず、最も安定するラインを提案
  • 希望ラインだけでなく、眼球との距離・骨格とのバランスも診て設計
  • 若い方にも切開を勧める場合もあるが、その理由を丁寧に説明
  • 術後に癖が残りにくい手技を選択

二重埋没の症例

埋没症例
埋没症例

左右差のあるまぶたに対し、埋没法(裏留め2ループ)を行った症例です。
術前は右まぶたのたるみと眉毛の挙上が強く、二重ラインも不安定な状態でしたが、術後は眉毛の高さが自然に整い、左右差の少ないパッチリ二重に仕上がりました。

まぶたの開き・皮膚の厚み・表情筋のバランスまで考慮してデザインすることで、切らずにここまで自然な結果が得られます

埋没法は、まぶたへの負担を減らす“正しい二重習慣”

アイプチやアイテープを長く使い続けていると、まぶたの皮膚や内部組織には少しずつ変化が起こります。
癒着やたるみ、左右差の助長など、気づかないうちに手術に不利な条件が積み重なってしまうこともあります。

毎日接着剤を塗り、まぶたを引っ張る習慣が、肌や筋肉にとって負担になっているのは事実です。

そんな状態を卒業し、まぶたの構造に合わせた医療としての二重形成=埋没法に切り替えることは、まぶたの健康を守るうえでも理にかなった選択肢といえます。


埋没法のメリットは、美しさだけではありません

  • 毎日の接着や引っ張りから解放され、皮膚への刺激がなくなる
  • 肌トラブルやかぶれのリスクを減らせる
  • 安定した二重ラインが得られ、メイク時間が大幅に短縮
  • たるみ・左右差・眼瞼下垂などに合わせたオーダーメイド設計が可能

長くアイプチを使ってきた方ほど、手術に対する不安は大きいと思います。
でも、ずっと負担をかけ続けるよりも、一度専門医の診察を受け、まぶたの状態を正確に把握したうえで適切な選択をすることが、将来の自分の目元を守る一歩になります。

毎朝の「今日はラインがうまくいかない…」というストレスから解放され、肌にも気持ちにも余裕が生まれる。
それが、埋没法のもう一つの価値だと私は考えています。

私自身、埋没法こそ“まぶたの構造を正確に理解しているかどうか”が結果を大きく左右する手術だと感じています。
まぶたの皮膚・脂肪・筋肉、そして目の開きや左右差などを正しく評価した上で初めて、本当に自然で持続する結果が得られます。

私は、ただ「二重にする」のではなく、「その方のまぶたにとってベストな方法」をご提案することを大切にしています。

まずは一度、医師の目でまぶたの状態を診せてください。
「埋没でいいのか? 切開が必要か?」の判断を含め、あなたに合った最適な方法を一緒に考えていきましょう。

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