人中(鼻下から上唇までの溝)の長さを短くし、顔の下半分を短く見せる人中短縮術は、顔貌の印象を大きく変える人気の施術です。しかし、この手術は口元や鼻元に影響を与えるため、「上唇の形が変わりすぎるのでは?」「鼻整形もしたいが、どちらを先にすべきか?」といったご相談が多く寄せられます。
本コラムでは、人中短縮術を検討する上で特に重要となる、口角挙上術とのバランス、そして鼻整形との適切な施術順序について、専門的な観点から詳しく解説します。
1. 人中短縮術における上唇の形と口角挙上によるバランス調整
人中短縮術は、鼻の下で皮膚を切除し縫合することで物理的に人中を短くする手術です。この手術の特性上、上唇がわずかにめくれ上がり、上唇中央が強調された「富士山型」に近い形状になる傾向があります。
「人中を短くしたいが、上唇の形はなるべく変えたくない」というご要望がある場合は、この変化を考慮した計画が必要です。
バランスを整えるための選択肢
- 口角挙上術との同時施術: 人中短縮術単独では上唇の中央だけが強調されすぎる可能性があるため、同時に口角挙上術を行うことで、上唇の外側もバランス良く引き上がり、より自然で優しい印象の口元を目指すことができます。口角が上がることで、中顔面全体が引き上がったような視覚効果も期待できます。
- 外側人中短縮術の検討: 人中全体の長さではなく、上唇の外側部分の長さが特に気になる場合は、外側のみを対象とした短縮術を選択することもあります。
最終的な仕上がりは、唇の厚みや人中の長さ、鼻翼(小鼻)の形状といった要因に左右されます。切開を伴う施術だけでなく、切らない人中短縮術(ヒアルロン酸や糸によるアプローチ)も選択肢に含まれますが、効果の持続性や変化の度合いが異なります。最適な組み合わせは、必ず医師との詳細な診察で決定されるべきです。
2. 人中短縮と鼻整形を行う際の最も重要な「順番の原則」
人中短縮術と鼻整形(鼻尖形成、鼻中隔延長術など)の両方を検討されている方にとって、最も迷うのが「どちらを先にすべきか」という点です。
原則として、当院では鼻整形を先に行い、その後で人中短縮術を行うことを推奨しています。
鼻整形を先行すべき理由
- 鼻の形態が人中に影響を与えるため: 鼻の構造、特に鼻中隔延長術などで鼻先の位置や向きが変わると、鼻下にある人中の皮膚や組織のテンション、ひいては人中の見え方に影響を与えることがあります。人中短縮術を先に実行してしまうと、後の鼻整形によって人中の仕上がりが意図せず変化してしまうリスクがあります。
- 手術の難易度と安全性の確保: 人中短縮術を行うと、鼻の下の組織に瘢痕(傷跡)が生じ、皮膚の可動性が低下します。この状態で続けて鼻の手術を行うと、鼻の土台や組織を操作する外科手術の難易度が上がったり、術野の確保が難しくなったりする可能性があります。
したがって、まずは鼻の完成形を確立し、その土台のバランスを見ながら人中短縮術で口元を調整するという順序が、最も理想的で確実性の高いアプローチとなります。
まとめ:オーダーメイドの治療計画が理想の仕上がりを導く
人中短縮術は、口元や鼻元といった顔の中心的なパーツに影響を及ぼすため、関連する他の施術とのバランスを深く考慮する必要があります。中顔面を短く見せるためには、人中短縮や口角挙上に加え、目周りの手術も複合的に検討することが多角的アプローチの鍵となります。
患者様一人ひとりの顔の骨格、皮膚の厚み、そしてなりたいイメージは異なります。ご自身の状態と最適な施術の組み合わせ・順序を知るためにも、まずは専門の医師によるパーソナルなカウンセリングで、オーダーメイドの治療計画を立てることをおすすめします。

