この記事は 前田 翔 医師(形成外科専門医・美容外科専門医) が監修しています。
横顔を鏡で見たときに「なんとなく口元が出ている気がする」「顔全体が平坦に見えて垢抜けない」──そんな悩みを抱える方は少なくありません。
近年SNSや美容関連の情報発信でよく耳にする「口ゴボ」という言葉は、まさにこの状態を指しています。
「口ゴボを治すには骨切りが必要」と思っている方も多いのではないでしょうか。
たしかに顎変形症レベルの重度なケースでは、ルフォーやSSROといった骨切り手術が根本治療になります。しかし骨切りは大掛かりな手術で、ダウンタイムやリスクも大きく、すべての方が踏み切れる治療ではありません。
実は、骨切りをしなくても中顔面を整えることで口ゴボ感を軽減できる症例があります。
今回ご紹介するのは、鼻整形と猫貴族手術を組み合わせることで、骨切りを行わずに横顔の印象を大きく改善できたケースです。
この記事では、
- 口ゴボとは何か?
- なぜ骨切りがよく選ばれるのか?
- 骨切りなしでできる改善法
- 実際の症例紹介
について、専門医の視点から分かりやすく解説していきます。
「できれば切る手術は避けたい」「自然な横顔を手に入れたい」──そんな方にとって参考になる内容になっています。
口ゴボとは?
「口ゴボ」という言葉をSNSや美容関連のサイトで見かけたことがある方も多いと思います。医学的な正式名称ではありませんが、日常的な表現として広まりつつある言葉です。
口ゴボとは、横から見たときに口元全体が前に突き出して見える状態を指します。
特に鼻先から顎先を結んだライン(いわゆる「Eライン」)に対して、上唇や下唇が外側に出ていると「口ゴボ」と言われます。
口ゴボが与える印象
口元が前に出ているだけで、顔全体のバランスが崩れて見えることがあります。
- 横顔がもっさりして見える
- 顔が平坦に見え、立体感がない
- 口元が強調されて、上品さや清潔感が損なわれる
特に日本人やアジア人はもともと骨格的に中顔面が平坦で、欧米人に比べてEラインが整いにくい傾向があります。そのため、軽度の口ゴボでも「なんとなく洗練されない」「老けて見える」といった印象を与える原因になります。
口ゴボの原因
口ゴボの原因は一つではなく、複数の要素が関わっています。
- 歯並びや歯列の問題:上顎前突(出っ歯)、下顎の後退
- 骨格の問題:上顎骨や中顔面が前に出ている
- 鼻や顎のバランス:鼻が低い・顎が小さいと、相対的に口元が出て見える
つまり「口ゴボ」と一言でいっても、歯列矯正が適応になる場合もあれば、美容外科的なアプローチ(鼻・顎・中顔面のデザイン)が効果的な場合もあります。
骨切り手術が選ばれる理由とその課題
口ゴボの原因が「骨格そのもの」にある場合、最も根本的な改善方法とされるのが骨切り手術です。
具体的には、上顎や下顎の骨を移動させて噛み合わせや口元のバランスを整える「ルフォーⅠ型骨切り術」や「下顎枝矢状分割術(SSRO)」といった手術が代表的です。
骨切りで改善できること
- 根本的な改善が可能:骨格レベルで前に出ている上顎や後退している下顎を移動させるため、歯列矯正だけでは治らない骨格性の口ゴボにも対応できます。
- 噛み合わせの改善:審美面だけでなく、咬合の不具合や機能面も改善できるケースがあります。
- 長期的に安定:骨の位置自体を変えるため、後戻りが少なく安定した効果が期待できます。
このように「根本治療」という意味では骨切りが非常に有効であり、特に重度の口ゴボ(上顎前突・顎変形症)では適応になります。
骨切りの課題
しかし一方で、骨切り手術には避けられないハードルも存在します。
- 大掛かりな全身麻酔下の手術
顎の骨を切って移動するため、入院や全身麻酔が必要です。 - ダウンタイムが非常に長い
腫れやしびれが数週間〜数ヶ月続くことがあり、社会復帰まで時間を要します。 - リスクの存在
神経損傷による感覚の鈍さ、骨の癒合不良、咬合のずれなど、一定のリスクを伴います。 - 心理的なハードル
「骨を切る」という言葉そのものに抵抗を感じる方が多く、実際に希望されても決断に至らないケースがあります。
すべての人に必要なわけではない
ここで強調したいのは、すべての口ゴボに骨切りが必要なわけではないということです。
骨格的に大きなずれがある場合は骨切りが適応ですが、軽度〜中等度のケースでは「中顔面の立体感を補う」ことで十分に改善できる場合があります。
つまり、口ゴボ治療を考えるときには、
- 骨切りでしか解決できないケース
- 骨切りまでは不要なケース
をしっかり見極めることが大切になります。
骨切りなしでできる改善法
「口ゴボを改善するには骨切りしかない」と考えている方は少なくありません。
たしかに骨格そのものに大きなずれがある場合は、ルフォーやSSROといった顎の骨切り手術が根本的な治療になります。
しかし、すべての症例に骨切りが必要というわけではなく、骨を切らずとも印象を整えられる方法がいくつか存在します。
例えば軽度の口ゴボであれば、歯列矯正やヒアルロン酸注入で改善が期待できることもあります。
ただし、中顔面の平坦さが強く「横顔がのっぺりしている」タイプの方では、注入や矯正だけでは効果が不十分なことも多いです。
その場合に有効なのが、鼻整形や猫貴族手術による中顔面の立体化です。
- 鼻整形
鼻中隔延長・鼻尖形成・隆鼻術などを組み合わせ、鼻の高さや鼻先の位置を補うことで、中顔面に奥行きを与えます。 - 猫貴族手術
鼻柱基部と鼻翼基部に軟骨を移植し、へこんだ部分を前方にボリュームアップさせます。
この部位が平坦だと口元が余計に出て見えるため、持ち上げることで相対的に口ゴボ感を和らげる効果があります。
実際の臨床では、この二つの施術を組み合わせることで、骨切りを行わずとも横顔全体の調和が得られるケースがあります。
もちろん、症例によっては脂肪注入や顎形成を加えたほうが良い場合もあり、治療はオーダーメイドです。
大切なのは「骨切りしか選択肢がない」と思い込まず、まずは骨切り以外の方法でどこまで改善できるかを検討することです。
症例紹介:軽度の口ゴボ感を解消|中顔面の凹みと鼻先の丸みを整えた複合整形症例






術式
- 鼻中隔延長(肋軟骨)
- 鼻尖形成
- 鼻尖軟骨移植
- 猫貴族手術(肋軟骨)
【経過】術後7ヶ月
術前の状態
患者様は、横顔を見たときにわずかな口元の突出感(いわゆる口ゴボ)を気にされていました。
原因は「中顔面の軽度な陥没」にあり、鼻柱基部・鼻翼基部のボリューム不足が口元を強調する要因となっていました。
行った施術とデザインの意図
- 猫貴族手術(肋軟骨移植)
鼻柱基部と鼻翼基部に軟骨を移植し、凹みを前方に持ち上げることで中顔面の陥没を改善。 - 鼻中隔延長・鼻尖形成・鼻尖軟骨移植
丸みの強かった鼻先を自然に整え、顔全体の重心を前方に移動。
これにより、骨格から導き出す“本当に似合う美しさ”を再構築しました。
術後の変化(7ヶ月後)
- 中顔面が持ち上がり、口元の突出感が軽減
- 鼻先の丸みが自然に整い、横顔のEラインが改善
- 過度な変化ではなく、“上品に垢抜ける”という自然なアップデート感
僕が治療で大切にしているのは、鼻や口元といったパーツ単体ではなく、顔全体のバランスです。
写真での仕上がりだけでなく、笑ったとき・話したときといった表情の動きの中で自然に見えることも欠かせません。
そのため、筋肉の動きや骨格の特徴を踏まえながら、長期的に崩れにくく、馴染むデザインを設計することを心がけています。
まとめ
「口ゴボ」と一言でいっても、その原因は単純ではありません。
歯並びや噛み合わせといった歯科的な要因に加えて、上顎骨の突出や下顎骨の後退など骨格の問題、さらには中顔面の立体感不足も大きく影響します。
この複合的な要素によって、横顔で口元が強調されて見えてしまうのです。
多くの方は「根本から治すには骨切りしかないのでは?」と考えがちですが、必ずしもそうではありません。
もちろん顎変形症レベルの重度な症例では骨切りが適応となることもありますが、軽度〜中等度の口ゴボであれば、骨を切らずとも十分に改善できるケースは少なくありません。
今回ご紹介した症例のように、鼻整形と猫貴族手術を組み合わせて中顔面を立体的に補うことで、横顔の印象は大きく変わります。
鼻柱基部や鼻翼基部の凹みを持ち上げ、鼻先を自然に整えるだけで、口元の突出感は相対的に和らぎます。
これは骨格そのものを切って動かしたわけではなく、「必要な場所にボリュームを補う」という発想で得られる変化です。
美容医療において重要なのは、単に「パーツを変えること」ではなく、顔全体のバランスを再構築することです。
鼻・口元・顎・中顔面、それぞれが調和してはじめて、自然で上品な印象が生まれます。
そしてこの「全体設計」こそが、静止画の美しさだけでなく、笑顔や会話といった日常の表情の中で違和感のない仕上がりへとつながります。
僕自身は、CT画像や骨格診断に基づきながら、表情の動き・筋肉の作用・将来的な安定性まで考慮して手術を設計しています。
「できるだけ切らずに改善したい」という患者様の気持ちを尊重しつつ、もし骨切りが必要な場合はその選択肢も含めて丁寧に説明を行います。
今回の症例はその一例ですが、骨切りをしなくても十分に改善できるケースがあることを知っていただきたいと思います。
「骨切りしかない」と思い込まず、まずは鼻整形や猫貴族手術などの可能性を検討すること。
それが、自然で長期的に安定した横顔美を手に入れる第一歩となります。
気になる方は、ぜひ一度カウンセリングでご相談ください。