2025年4月、韓国で30代の女性2人が「膣ヒアルロン酸注入」施術後に相次いで死亡するという痛ましい事故が起きました。美容目的のヒアルロン酸注入はこれまで主に顔への施術が一般的でしたが、近年では膣や外陰部などデリケートな部位にも広がっています。しかし、こうした施術のリスクについては、十分に知られていないのが実情です。今回は、この分野に潜む危険性や注意点について、医師の視点からお話したいと思います。
目次
実際に起きた症例(韓国メディア「헬스조선」より)
■症例①:膣周囲の血管にヒアルロン酸が広がり「うっ血死」
- 患者:30代女性
- 施術内容:膣壁への大量のヒアルロン酸注入
- 施術後の異変:死亡
▷ 病理解剖所見:
- 膣に大きな血栓が認められた
- 大量のヒアルロン酸が膣周囲の血管に入り込み、血管を物理的に閉塞
- 結果として血液の流れが止まり、肺に血液が戻らず「うっ血状態」に
- 血液がうまく循環せず、死亡に至ったと判断される
■症例②:注入4分後に急変、非血栓性肺塞栓で死亡
- 患者:35歳女性
- 施術内容:産婦人科での膣ヒアルロン酸注入(鎮静麻酔下)
- 使用薬剤:ケタミン、ミダゾラム、プロポフォールなど
- 施術4分後:血中酸素飽和度が低下 → 心停止 → ICU管理
- 集中治療1か月後:低酸素性脳障害と肺炎により死亡
▷ 病理解剖所見:
- 膣内部(粘膜下層〜筋層)において、血管内にフィラーの塊=塞栓が見られた
- 非血栓性閉塞性肺塞栓症(NTPE)と診断
→ 本来血管にない異物(フィラー)が肺血管に詰まり、急激に循環障害を起こす - 発生メカニズムとして、フィラーが静脈内に直接入る、または高圧で注入されて静脈に移動した可能性が指摘された
なぜ膣ヒアルロン酸注入で命を落とすのか?
ヒアルロン酸が血管に入るとどうなる?
ヒアルロン酸は皮膚や粘膜下に注入されることを想定していますが、誤って血管内に注入されると血流に乗って肺や脳へと運ばれ、塞栓症(血管の詰まり)を引き起こします。
- 顔の注入では、失明や脳梗塞
- 膣の注入では、肺塞栓や心停止
膣部は内腸骨動脈系・静脈叢が豊富で、解剖学的にリスクが高い領域です。
非血栓性閉塞性肺塞栓症(NTPE)とは?
これは、血栓ではなく「ヒアルロン酸・脂肪・空気などの異物」によって肺の血管が塞がれる状態です。
ヒアルロン酸が静脈に流入すると、わずか数分で酸素飽和度が低下し、心停止に至ることもあります。
とくに以下の状況ではリスクが上がります。
- 静脈に直接注入されてしまった場合
- 高い圧力で一気に注入された場合
- 鎮静麻酔中で、患者の異変に気づきにくい場合
まとめ
ヒアルロン酸注入は、ダウンタイムが少なく、効果も早く実感できる優れた美容治療です。
しかし一方で、血管塞栓・感染・アレルギー反応など、重い合併症を引き起こすリスクもゼロではありません。
大切なのは、「ヒアルロン酸=安全」ではなく、
正しい知識と技術、そして万全の医療体制のもとで受けることです。
マエクリの医師は、日々外科手術にも携わっているため、
顔面や体の解剖構造に精通しており、安全性を第一に考えた注入施術を行っています。
安心して治療を受けていただくためにも、施術の前には必ずリスクや効果についてしっかり説明し、
納得のいく形での医療を提供することをお約束します。