眉の上から眉間にかけての骨が前に出ていると、横顔に段差ができたり、正面から見てもきつい印象やごつごつした印象を与えたりすることがあります。
この出っ張りは、骨の表面を削るだけでは十分に下げられない場合があります。その理由は、眉の上の骨の内側に「前頭洞(ぜんとうどう)」という空洞があるためです。
この記事では、眉の上の出っ張りができるしくみと、前頭洞セットバックという手術の方法、削る手術との違い、ダウンタイムやリスクについて説明します。
眉の上から眉間の骨が出っ張る理由

出っ張りの正体は「前頭洞の前の壁」
眉の上の骨の内側には、前頭洞と呼ばれる空洞があります。鼻の奥につながる副鼻腔のひとつで、空気が入っています。
眉の上から眉間にかけての出っ張りは、多くの場合、この前頭洞の前の壁が前に張り出していることでできています。つまり、出っ張って見える骨のすぐ裏側は空洞になっています。
骨の厚みや空洞の大きさには個人差がある
前頭洞の大きさや、前の壁の厚みには個人差があります。前頭洞が小さい方や前の壁が厚い方もいれば、空洞が大きく前の壁が薄い方もいます。
この違いによって、出っ張りを下げるために適した手術が変わります。外から見た出っ張りの大きさが同じでも、骨の中の状態によって選ぶ方法が異なるため、手術前にCT検査で確認することが欠かせません。
前頭洞セットバックとはどんな手術か
前頭洞セットバックは、前頭洞の前の壁を一度取り外し、形を整えたうえで後ろに下げた位置に戻して固定する手術です。
手術の方法

頭髪内(冠状切開)または髪の生え際に沿って切開し、骨膜の下で皮膚と組織を剥がして、眉の上の骨を出します。
前頭洞の前の壁を骨切りして取り外し、裏側を削って厚みと形を整えます。整えた骨を後ろに下げた位置に戻し、プレートで固定します。最後に周囲の骨とのつなぎ目をなめらかに整え、縫合します。
眉の上や眉間まわりには、額の感覚を担う神経や眉を動かす神経が通っているため、これらを傷つけないよう注意しながら操作します。手術は全身麻酔で行います。
骨を削る手術との違い
眉の上の出っ張りを整える方法には、骨の表面を削る方法もあります。ただし、前頭洞の前の壁は厚みが限られているため、削れる量は骨の厚みの範囲内に限られます。削りすぎると空洞に穴が開いてしまうおそれがあるため、空洞が大きく前の壁が薄い方では、削るだけでは十分に下げられないことがあります。
前頭洞セットバックは、壁そのものを後ろに移動させるため、骨の厚みに左右されずに出っ張りを下げられるのが特徴です。一方で、骨を切って固定する分、削る手術に比べて手術の範囲は大きくなります。
額の骨の手術の選び方
眉の上の出っ張りを改善したい場合でも、「出っ張りそのものを下げる」のか、「周囲のくぼみを埋めて段差をなくす」のかによって適した手術は異なります。当院では主に次の4つの術式に対応しています。
| 手術名 | 施術の概要 | 適した状態・お悩み |
| 眉骨骨削り | 眉の上の突出した骨の表面を削って整える | 前頭洞が小さい方、または前頭洞の前壁に十分な厚みがある方 |
| 前頭洞セットバック | 前頭洞の前壁を骨切りし、後方へ移動させて固定する | 前頭洞が大きく骨の壁が薄いため、骨削りでは十分な後退が得られない方 |
| 前額削り | 額から眉の上にかけて広く骨を削り、凹凸を整える | 額全体の骨ばった印象を減らし、なだらかな丸みを出したい方 |
| 前額形成 | ハイドロキシアパタイト(骨補填材)で高さを出す(必要に応じて削りも併用) | 額全体の平坦さやくぼみが気になり、丸みやボリュームを出したい方 |
アプローチの判断基準
- 出っ張り自体を後ろへ下げたい場合:骨の厚みや前頭洞の大きさに応じて「眉骨骨削り」または「前頭洞セットバック」を選択します。
- 段差やくぼみを目立たなくしたい場合:眉の上の凹みに骨補填材を補填してなめらかにつなぐ「前額形成」が適しています。
どの術式が適しているかは、骨の厚みや前頭洞の広がりをCT検査で正確に確認したうえで、ご希望の仕上がりイメージに合わせて決定します。
前額リフトを同時に行う場合
額の皮膚のたるみや眉の下がりが気になる方は、前頭洞セットバックと同時に前額リフトを行うこともできます。
前額リフトは、髪の生え際などを切開して額の余分な皮膚を取り除き、眉やまぶたを引き上げる手術です。骨の出っ張りを下げると同時に額のたるみも整えることで、眉の上から目元にかけての印象をまとめて整えることができます。
前額リフトを同時に行うかどうかは、皮膚のたるみの程度や眉の位置を見て判断します。
前頭洞セットバックと前額リフトを同時に行った症例
眉間や額の骨格がしっかりしていて、ごつごつとした強い印象から、やわらかく中性的な顔立ちに近づけたいとご希望された方の症例です。




眉間の出っ張りの原因は、前頭洞の前の壁の張り出しでした。そこで、前頭洞セットバックで前の壁を後ろに下げ、額から鼻の付け根にかけてのラインがなだらかにつながるよう整えました。
あわせて、生え際を切開する前額リフトを行い、額の余分な皮膚を取り除いています。この方は額の皮膚のたるみや重みによってまぶたが開きにくい状態でしたが、額のたるみを整えたことで、上まぶたが開きやすくなりました。
写真は術後3年の状態です。傷跡は生え際に沿った位置にあり、髪の生え際になじんでいます。経過や仕上がりには個人差があります。

施術内容:前頭洞セットバック、前額リフト(生え際切開)
施術費用:¥1,700,000
※これ以外に、検査費用・麻酔費用等がかかることがあります。
リスク:感染、変形、後戻り、麻痺(一時的な顔面神経麻痺・知覚鈍麻)、瘢痕(切開線の赤み・硬さ)、ひきつれ、脱毛(切開線周辺)、骨癒合不全、感覚障害、内出血、血腫、左右差、イメージとの相違等
手術前の検査と準備
手術の前に、採血とCT検査を行います。CT検査の結果をもとに骨の状態を確認し、手術当日のデザインで最終確認を行います。採血とCT検査には別途費用がかかります。
全身麻酔で手術を行うため、手術の前には飲食の制限があります。詳しい注意事項は、カウンセリングの際にご説明します。
前頭洞セットバックのダウンタイムと術後の経過
腫れは2週間程度で落ち着きます。
額から目元にかけて腫れが出るため、術後しばらくは目が開きにくくなることがあります。腫れやむくみが完全に引くまでには3か月程度かかり、内出血は1〜3週間で消失します。抜糸は術後1週間目に行います。
術後は翌日、3日目、1週間目に来院いただき、その後も経過を確認していきます。
仕上がりの目安は術後半年から1年です。腫れが残っている間は、仕上がりよりも額が出て見えたり、左右差が目立ったりすることがあります。
前頭洞セットバックのリスク・副作用
前頭洞セットバックでは、次のようなリスク・副作用が起こることがあります。
・痛み、腫れ、むくみ
・内出血、血腫
・感染(化膿)
・額や頭皮のしびれ、知覚の鈍さ
・顔面神経麻痺(眉毛が動きにくくなる)
・傷跡の赤み、硬さ、盛り上がり
・傷の周囲の脱毛
・骨を切った部分の段差
・骨癒合不全
・変形、後戻り
・左右差
・イメージとの相違
額や頭皮のしびれは、手術の部位の近くを通る感覚の神経の影響で起こります。多くは時間の経過とともに軽くなっていきますが、回復までに半年〜1年かかることがあり、まれに感覚が完全には元に戻らないこともあります。術後のしびれについては、こちらのコラムで詳しく説明しています。

感染が起きた場合、まれに骨を固定するプレートが原因となり、取り出す必要が出ることがあります。
前頭洞セットバックの費用
前頭洞セットバック:¥1,300,000
前頭洞セットバック+前額リフト:¥1,700,000
前額リフト併用(同時施術時):+¥400,000
※これ以外に、検査費用・麻酔費用等がかかることがあります。
よくある質問
- 傷跡は目立ちますか。
-
頭髪内または髪の生え際に沿って切開するため、傷跡は髪に隠れやすい位置になります。赤みは半年〜1年かけて徐々に薄くなりますが、傷が完全に消えることはありません。また、傷の周囲の髪が薄くなることがあります。
- 骨を削るだけで済むこともありますか。
-
前頭洞が小さい方や、前の壁に十分な厚みがある方は、骨を削る方法で対応できる場合があります。どちらが適しているかは、CT検査で骨の状態を確認したうえで判断します。
- 前頭洞に手を加えて、鼻や副鼻腔に悪影響はありませんか?
-
前頭洞は鼻腔とつながっている空洞ですが、手術では前壁の骨を移動させて形を整えるため、前頭洞の排泄路(自然孔)を塞がない設計・処置を行います。基本的に慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症)を誘発したり、鼻呼吸に支障が出たりする可能性は極めて低いです。ただし、術前に副鼻腔炎の既往がある場合はあらかじめCT画像で状態を確認します。
- 仕上がりが完成するのはいつ頃ですか?
-
大きな腫れは2週間程度で引き、目元の開きづらさなども徐々に改善します。細かなむくみや組織の硬さが落ち着くまでには約3か月かかり、骨の癒合を含めた最終的な仕上がりの目安は術後半年から1年程度です。
- 術後のしびれや感覚の麻痺は治りますか?
-
手術部位の周囲には額の感覚を司る神経が通っているため、術後に額や頭皮へ一時的な知覚鈍麻(しびれ、触った感覚の鈍さ)が出ることがあります。多くは神経の回復に伴い半年から1年程度かけて自然に軽快しますが、個人差によりわずかに鈍さが残る場合もあります。神経修復を促す内服薬(メチコバールなど)を併用して回復を促します。
まとめ
眉の上から眉間にかけての骨の出っ張りは、多くの場合、骨の内側にある空洞「前頭洞」の前の壁が張り出していることによって生じています。
骨の厚みや空洞の大きさには個人差があり、骨の壁が薄く空洞が大きいケースでは、表面を削るだけでは十分な変化が得られません。前頭洞の前の壁を骨切りして後ろへ下げる「前頭洞セットバック」は、骨の厚みに制限されることなく、出っ張りを根本から後退させられる手術です。また、皮膚のたるみや眉の下がりが伴う場合は、前額リフトを併用することで額から目元全体のバランスを一度に整えることも可能です。
出っ張りを削るのか、セットバックで下げるのか、あるいは周囲のくぼみを埋める前額形成が適しているかは、外見の印象だけでなくCT検査による骨構造の正確な把握が欠かせません。眉の上の骨っぽさや額のラインでお悩みの方は、まずはカウンセリングと検査で骨の状態を確認することをおすすめします。
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