他院で入れた脂肪がしこりに…修正できる?再注入の注意点とは

こんにちは。美容外科・形成外科専門医の木下恵里沙です。

今回は「他院で脂肪注入を受けた後にしこりができてしまった」というご相談について、形成外科で数多くの乳房再建手術を行ってきた私の視点から、できる限りわかりやすくお話ししたいと思います。

美容医療には夢がありますが、一方で、情報があふれすぎていて「何が正解かわからない」という声もよく耳にします。
この記事が、今まさに不安を抱えている方にとって、安心できる選択を見つけるヒントになれば幸いです。


目次

脂肪注入豊胸とは|自然だけど難しい施術

まず前提として、脂肪注入豊胸とは「自分の体の脂肪をバストに移動させる」手術です。
太ももやお腹などから脂肪を採取し、精製・濃縮してバストへと注入します。

「異物を入れない」「仕上がりが自然」「術後の感触も柔らかい」といった点が人気の理由ですが、
実は医師の技術差が出やすい、非常に繊細な施術でもあります。

脂肪は「生きている組織」なので、ただ注入しただけでは生着しません。
むしろやり方によっては、脂肪が壊死して“しこり”や“石灰化”などのトラブルにつながることもあるのです。


なぜしこりができるの?|原因と医師の判断ミス

脂肪がしこりになる主な原因は以下の通りです:

  • 一度に脂肪を入れすぎてしまう(過量注入)
  • 注入層の選定ミス(乳腺層・皮下層・筋膜下の設計不足)
  • 採取や加工時のダメージで脂肪が壊れている
  • 無菌操作の不十分さによる軽度感染
  • 注入後の血流が悪く、酸素が届かず壊死

これらはすべて、医師の「設計力」や「安全に対する意識の高さ」によって回避できるトラブルです。

私は形成外科専門医として、がん術後の乳房再建や、血管・神経をつなぐ顕微鏡手術を数多く経験してきました。
だからこそ、美容外科においても“見た目の美しさ”と同じくらい“医学的な安全性”を大切にしています。


実際のしこりはどんなもの?|よくあるタイプと症例

しこりと一言で言っても、状態によって種類が異なります。代表的なものを紹介します。

オイルシスト

脂肪が壊れて液状になり、袋状にたまってしまったもの。
軽度であれば無症状のこともありますが、しこりとして触れることがあります。

石灰化

脂肪が死んで体内で“石”のように硬くなった状態。乳がんとの鑑別が必要になることも。

炎症性のしこり

軽い感染や刺激で赤み・痛みを伴う状態。抗生剤で改善することもあります。

カプセル形成

体が脂肪を「異物」とみなし、周囲に膜(カプセル)を作って隔離する現象です。


しこり除去の方法|手術の種類と特徴

吸引法(オイルシストや液状脂肪向け)

  • カニューレで内容物を吸い出す
  • 傷が小さくダウンタイムも短め

切開法(しっかりしたしこり向け)

  • 局所麻酔または静脈麻酔下で実施
  • しこりが明確に除去できる

内視鏡補助下手術(傷を最小限にしたい方へ)

  • 内部の構造を確認しながら切除
  • 傷が小さく、術後の美しさを保ちやすい

再注入はできるの?|失敗しないための6つの条件

脂肪注入をもう一度行うには、いくつかの条件があります。

  1. しこり除去後、組織が落ち着いていること(最低3〜6ヶ月)
  2. 注入層をしっかり分けて入れる(層別注入)
  3. 過去の注入層や使用量を把握し、設計し直す
  4. 定着率の高い脂肪を使用する(例:コンデンスリッチ)
  5. 分割注入で“入れすぎない”こと
  6. 術後管理(圧迫・安静・生活指導)が徹底できること

脂肪注入で最も重要なのは、「いかに入れるか」ではなく「どこに、どれだけ、どう入れるか」という設計力です。


よくある質問(Q&A)

Q. 脂肪注入の再注入は何回まで可能ですか?
A. 基本的に皮膚の柔軟性と脂肪採取量が許す限り可能です。2〜3回に分けて注入することもあります。

Q. しこりが気になるだけで痛みはないのですが、放置しても大丈夫ですか?
A. 痛みや腫れがなければ経過観察も可能ですが、年に1回はエコー検査をおすすめします。

Q. 再注入後もしこりになるリスクはありますか?
A. 0にはできませんが、設計と管理次第で極めて低く抑えられます。

Q. しこりを除去した後、どのくらいで再注入できますか?
A. 炎症や腫れがなければ、3〜6ヶ月がひとつの目安です。

Q. 脂肪採取がしやすい部位はありますか?
A. 太もも、お腹、二の腕など。吸引痕も考慮し、体型に合わせて設計します。


医師の視点|脂肪注入豊胸に必要なのは“バランス感覚”

豊胸手術において「もっと入れれば、もっと大きくなる」という考えは、必ずしも正しくありません。

実際に、過剰な注入によってしこりや石灰化を起こしてしまった方の修正を、これまで数多く担当してきました。
中には、バストの形が崩れてしまい、思うように服が着られなくなったと悩まれていた方もいらっしゃいました。

だからこそ私は、「安全性と自然な美しさのバランス」を何よりも大切にしています。

バストの構造をきちんと理解し、その方の体にとって無理のない範囲で、最も定着しやすく、見た目にも美しい設計をすること。
それが結果として、長く満足できる仕上がりにつながると考えています。


まとめ

脂肪注入による豊胸は、自然な仕上がりが魅力的な一方で、
注入の方法や術後の管理によっては、しこりや石灰化といったトラブルが起こることもあります。

しこりにはいくつかのタイプがあり、すべてがすぐに手術が必要というわけではありません。
状態によっては経過観察で済むこともありますし、摘出後にバストのボリュームを再構築することも十分可能です。

その際に大切なのは、「しこりの再発を防ぐ」という視点です。
再注入を行うなら、注入層の設計力と、分割注入などの安全対策が欠かせません。

私はこれまで、形成外科で乳房再建を数多く手がけ、美容外科の分野でも多くの豊胸・修正症例に携わってきました。
その経験から常に意識しているのは、「ただ大きくする」ことではなく、
その方の体にとって本当に美しく、長く安心できるバストを作ることです。

「しこりができてしまった」「他院での仕上がりに不安がある」「再注入したいけど不安」
そんな気持ちを抱えながら、このページにたどり着いてくださった方も多いかもしれません。

当院では、美容のデザイン性と医療の安全性、その両方を大切にしながら、
一人ひとりの体に寄り添ったバスト治療をご提案しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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