この記事は 前之園 健太 医師(美容外科医・整形外科専門医) が監修しています。
目の下のクマは「疲れて見える」「老けて見える」といった印象を強め、患者さんが強く改善を希望される部位の一つです。クマの存在は本人の心理的負担も大きく、実際にカウンセリングにいらっしゃる患者さんの中でも「マスクをしていてもクマが気になる」「写真に写ると老けて見える」といった声を頻繁に耳にします。
クマ取り手術には数多くの方法がありますが、その中でも代表的であり、かつ比較されやすいのが 「脱脂術」 と 「裏ハムラ法」 です。どちらも下まぶたの裏側(結膜側)からアプローチする手術ですが、目的・効果・適応は大きく異なります。
本記事では、症例写真や図解を交えながら、両手術の違いを徹底的に解説していきます。
クマの原因を知ることが大切
クマの原因は大きく分けて2つです。

- 眼窩脂肪の突出(膨らみ)
加齢や隔膜のゆるみにより、眼窩内の脂肪が前方へ押し出され、膨らみとして目立ちます。 - 靱帯による段差(凹み)
眼窩下縁には強固な靱帯が存在し、この部分で皮膚と骨が固定されています。その直下が凹むことで影が生じ、膨らみと相まってクマを強調します。
つまり「膨らみのみ」か「膨らみ+凹み」かによって、治療法は大きく変わるのです。
脱脂術の詳細と注意点

脱脂術は、余分な眼窩脂肪を切除するシンプルな方法です。膨らみが原因のクマを改善するのに適していますが、靱帯による凹みには対応できません。
メリット
- 手術時間が短く、腫れも少ない
- 費用が比較的安い
- 傷跡は外から見えない
デメリット
- 凹みは改善できない
- 脂肪を取りすぎると逆にくぼんだ印象になる
- 術後に脂肪注入を併用するケースが多い
裏ハムラ法の詳細とメリット

裏ハムラ法は、単に脂肪を切除するのではなく、膨らんだ脂肪を凹み部分に移動・固定する方法です。さらに靱帯を剥離して段差をなくすため、膨らみと凹みの両方を同時に解決できます。
メリット
- 膨らみと凹みを同時に改善
- 脂肪注入やヒアルロン酸に頼らず自家組織で完結
- 頬との境目がなめらかで自然な仕上がり
- 再発リスクが低く、長期的な効果が期待できる
デメリット
- 脱脂より手術時間が長い
- ダウンタイムがやや長い
- 費用が高め
脱脂術と裏ハムラ法の基本的な違い

- 脱脂術:脂肪を取り除き、膨らみだけを改善
- 裏ハムラ法:脂肪を凹みに移動して固定し、膨らみと凹みを同時に改善
同じ「クマ取り」でも、このように治療のアプローチは全く異なります。
症例で見る裏ハムラ法の効果
術前と術後3ヶ月の横顔比較


術前は脂肪の膨らみと靱帯による凹みがはっきり見えます。術後3ヶ月では、脂肪を再配置することで段差がなくなり、頬への移行が滑らかになっています。
術前に見られた「影」がなくなり、目元が明るく若々しい印象になっています。
術後経過の違い
- 脱脂術
腫れや内出血は軽度。1週間前後でメイク可能。社会復帰も早い。 - 裏ハムラ法
靱帯の処理や脂肪の移動を伴うため、腫れや内出血がやや強め。2週間程度で落ち着き、1ヶ月で自然に。3ヶ月で完成形に近づく。
まとめ
- クマの原因は「膨らみ」と「凹み」
- 脱脂術=膨らみだけを改善
- 裏ハムラ法=膨らみと凹みを同時に改善
- 年齢や骨格によって最適な術式は異なる
- 長期的で自然な仕上がりを求めるなら裏ハムラ法の適応が広い
クマ取りは単に「見た目を整える」だけでなく、印象や自己肯定感を大きく変える施術です。
ただし術式を誤ると「老けて見える」「不自然な凹みが出る」といったリスクもあります。
私たちは骨格・脂肪量・皮膚の質をしっかり評価した上で、患者さん一人ひとりに合った治療法をご提案します。
「自分には脱脂と裏ハムラ、どちらが適しているのか?」と思った方は、ぜひ一度ご相談ください。