手術を考えている方にとって「術後の痛みがどれくらいあるのか」は、とても大きな不安のひとつです。
特に豊胸や骨切り、鼻の再手術といった施術は、数日間強い痛みが出やすく、「手術は受けたいけれど、痛みに耐えられるか心配」という声を多くいただきます。
そのような中で近年、美容外科でも注目されているのが エクスパレル麻酔 です。
従来の麻酔と違い、最大72時間ものあいだ効果が持続し、術後のつらい時期をぐっと楽にしてくれる可能性があります。
僕自身も顔の骨切りの際にエクスパレル麻酔を使用した経験があり、術後の痛みがかなり軽く感じられました。実体験としても「導入する価値がある」と思える麻酔です。
この記事では、エクスパレル麻酔の仕組みや効果、従来の麻酔との違い、美容外科での具体的な活用例、そしてメリット・デメリットまでわかりやすく解説していきます。
エクスパレル麻酔とは?

ブピバカインをベースにした局所麻酔薬
エクスパレル麻酔の主成分は ブピバカイン という局所麻酔薬です。
ブピバカイン自体は昔から手術や処置で使われてきた成分で、神経の働きを一時的に抑えることで「痛みを感じにくくする」効果があります。
ただし、通常のブピバカインは数時間で効果が切れてしまい、術後しばらくすると痛み止めの点滴や内服薬が必要になります。
リポソーム製剤という特殊な形
エクスパレルが従来の麻酔薬と大きく違うのは、このブピバカインを リポソーム という特殊なカプセルに閉じ込めている点です。
リポソームは脂質(二重膜)でできた小さな粒で、中の薬を少しずつ放出する仕組みになっています。
そのため、一度注射すると薬がゆっくりと時間をかけて体内に広がり、 最大72時間(3日間) も効果が持続するとされています。
「術後3日が楽になる」と言われる理由
手術後の痛みは、特に最初の2〜3日が一番強いと言われています。
エクスパレル麻酔を使うと、このつらいピークをしっかりカバーできる可能性があり、患者さんにとって「術後の回復がずっと楽になる」というメリットがあります。
従来の麻酔との違い
通常の局所麻酔は数時間で切れる
一般的な局所麻酔薬(リドカインやブピバカインなど)は、手術中や直後の痛みを抑える効果があります。
ただしその効果は 数時間程度。
手術が終わってしばらくすると麻酔は切れ、痛みが強くなってしまうため、点滴の鎮痛剤や内服薬を追加で使う必要があります。
エクスパレルは「一度の注射」で数日間持続
エクスパレル麻酔は、リポソーム製剤によって薬がゆっくりと放出されます。
そのため 最大72時間(3日間) ものあいだ痛みを抑えられるとされており、追加の鎮痛薬に頼る回数を減らせます。
「一度注射するだけで長時間持続する」という点が、従来の麻酔との大きな違いです。
鎮痛薬に頼る回数を減らせる
術後の痛みを抑えるために点滴や飲み薬を何度も使うのは、患者さんにとっても負担になります。
エクスパレルを使うことで、こうした追加投与の必要が少なくなることがあり、回復の初期をより快適に過ごせる のがメリットです。
美容外科での使用例
豊胸手術|胸周囲の痛みをやわらげる
豊胸手術では、胸の大きな筋肉(大胸筋)の下にインプラントを入れる場合や、脂肪注入を行う場合があります。
手術後は胸を動かすたびに痛みが出やすく、特に初期の数日は日常生活の動作が負担になる方も少なくありません。
エクスパレル麻酔を使うと、術後3日ほど胸周囲の痛みが軽減されるため、呼吸や起き上がりが比較的楽に感じられることがあります。
「手術は受けたいけれど、仕事復帰までの期間が心配」という方にとっても安心材料になるでしょう。
骨切り手術|数日間続く強い痛みを軽減
顔の骨を切る手術は、美容外科の中でも特に術後の痛みが強い施術のひとつです。
従来は術後に点滴や飲み薬を組み合わせてコントロールしていましたが、どうしても痛みが残ってしまうことがありました。
僕自身も顔の骨切りの際にエクスパレル麻酔を使用しましたが、想像していたよりも術後の痛みが軽く、動き出しも楽 でした。
もちろん痛みがまったくゼロになるわけではありませんが、「3日間が楽になる」ことの価値は、実際に体験してみて大きいと感じています。
鼻手術(肋軟骨移植など)|採取部位の痛みを軽減
鼻の再手術や鼻先をしっかり支えるために、肋軟骨を使った移植 を行うことがあります。
このとき胸から軟骨を採取するのですが、鼻そのものよりも 肋軟骨の採取部位(胸)の痛み が強く出ることが多いです。
エクスパレル麻酔は、この胸の採取部位に注射することで術後の痛みをやわらげることができます。
「胸が痛くてつらい」という声を減らせるのは、大きなメリットです。
脂肪吸引|広範囲の術後痛を軽減
脂肪吸引は太もも・お腹・二の腕など広い範囲を扱うことがあり、術後の数日は動作のたびに痛みを感じやすい手術です。
エクスパレル麻酔を使用すると、吸引部位の広範囲にわたる痛みを長時間やわらげられる ため、日常生活への復帰を助けます。
その他の小部位手術にも応用可能
エクスパレル麻酔は、豊胸・骨切り・鼻(肋軟骨)・脂肪吸引といった大きな手術だけでなく、目元・口元・小陰唇・乳頭形成などの比較的小さな部位にも適応があります。
このような手術では「激しい痛み」ではないものの、チクチクした違和感やヒリつきが数日続くことがあります。
特に「痛みに敏感な方」「少しの痛みでも不安を感じやすい方」にとっては、エクスパレルを併用することで安心感が大きく、術後をより快適に過ごしやすいのが利点です。
エクスパレル麻酔のメリットとデメリット
メリット
- 術後の痛みを長時間やわらげられる
→ 通常の麻酔は数時間で切れてしまいますが、エクスパレルは最大72時間持続します。
豊胸・骨切り・脂肪吸引・肋軟骨移植など「痛みが強い手術」で特に効果を発揮します。 - 多くの方にしっかり効く
→ 僕の臨床経験でも、ほとんどの患者さんが「想像していたより楽だった」と実感されています。 - 鎮痛薬に頼る回数を減らせる
→ 点滴や内服薬を繰り返し追加する必要が減り、患者さんの負担が少なくなります。 - 回復のスタートを快適に
→ 痛みがやわらぐことで「起き上がる」「歩く」といった動作がスムーズにでき、術後の生活が比較的楽に始められます。
デメリット
- 保険適用外で自費になる
→ 日本ではまだ保険がきかず、数万円単位の追加費用がかかります。
当院でのエクスパレル麻酔の費用
エクスパレル麻酔は現在、日本では保険が適用されないため、自費での追加オプションとなります。
当院では、手術の範囲や部位に応じて以下のように設定しています。
- 大きな手術部位(Max 10cc)
例:肋軟骨採取、脂肪吸引、骨切り、豊胸、その他大部位
→ 98,000円(税込) - 小さな手術部位(Basic 5cc)
例:口元、鼻、目元、小陰唇、乳頭、その他小部位
→ 48,000円(税込)
※部位や手術内容に応じて、必要な量を調整しながら使用します。
まとめ
エクスパレル麻酔は、従来の麻酔と比べて効果が長く続くことが特徴です。
特に豊胸、骨切り、脂肪吸引、鼻の肋軟骨移植など術後の痛みが強いとされる手術では、術後3日間をより快適に過ごせる大きなメリットがあります。
また、目元や口元、小陰唇、乳頭といった小さな部位の手術でも、違和感やヒリつきをやわらげるために有効です。
実際に使用した患者さまからは、
「術後痛み止めの飲み薬を使わずにすんだ」
「思ったよりずっと楽だった」
といった声も多くいただいています。
「痛みが不安で手術に踏み切れない」という方にとって、エクスパレル麻酔は安心して治療を受けるための一つの選択肢になるでしょう。
当院では手術の内容に応じてオプションとしてご案内していますので、興味がある方はカウンセリング時にお気軽にご相談ください。