【医師監修】「二重幅◯mm」に意味はある?──その“こだわり”が落とし穴かもしれません

「◯mm幅の平行二重にしたい」
「〇mmでお願いします、と伝えたのに思った幅にならなかった」

こういったご相談を受けることがありますが、実は――
埋没法の二重術において、術前に“何mmで作るか”を指定することには、ほとんど意味がありません。

なぜなら、私たち医師がデザインを行う際は、mm単位の数字ではなく、まぶたの構造、目の開き、そして“開いたときにどう見えるか”を基準に判断しているからです。

美容医療で語られる「二重幅」の誤解

美容医療においては「幅広二重=華やか」「末広型=自然」といった印象が先行しがちですが、
本当に大切なのは、まぶたを開けたときにどう見えるかという“動きの中の見え方”です。

これを正しく判断するには、次のような要素を総合的に見極める必要があります。

  • まつ毛の生え際が隠れない
  • 二重のラインに皮膚がかぶさらない
  • 黒目の露出が十分に確保されている
  • 眉の位置が高すぎたり下がりすぎたりしていない
  • 眼瞼下垂の有無

つまり、「似合う二重」は単なる“幅”の問題ではなく、まぶたの構造全体で決まるのです。

【実例で比較】同じ目元でも、mm幅でこれだけ印象が変わる

今回、実際の患者様で同じ目元に対して4mm、6mm、8mm、10mm、12mmのラインを仮想でデザインし、
どれだけ印象が変わるのかを比較した写真をご紹介します。

4mm … 末広でナチュラル。控えめな印象。
6mm … 自然な中にも華やかさが生まれ、清楚系の二重。
8mm … 一般的な“パッチリ二重”のイメージに近く、多くの方に人気。
10mm … 外国人風の広めのデザイン。目の開きが強くないと眠たく見えることも。
12mm … かなり幅広のため、皮膚のたるみや開きが不十分な方には不向き。

数値の違いだけで、これだけ印象が変わります。
しかし逆に言えば、“同じ人でも”数ミリ違えば雰囲気が大きく変わるということ。
これを感覚ではなく、医学的な構造と動きで評価することが重要です。

「似合うライン」は、目の構造から導き出される

  • まぶたの厚み
  • 眼窩脂肪の量
  • 挙筋の強さ(目を開く力)
  • 蒙古ひだの張り具合
  • 骨格や眉との位置関係

こうしたすべての要素を見た上で、「どの位置にラインを作れば開いたときに自然か」を判断します。

ですので、左右で違うラインになるのが自然ですし、数字で決め打ちするのはむしろ危険とも言えます。

埋没法と切開法でも、考え方が異なります

実は、「何mmで切るか」が重要になるのは切開法です。
皮膚を切除する以上、術前の数ミリの設定が仕上がりを左右します。

一方で埋没法はあくまで“引き込みの位置”を調整する術式です。
そのため、手術前に何mmと決めるよりも、開いたときに美しく見える位置に留めることの方がずっと重要になります。

美しい二重をつくるために本当に大切なこと

「ぱっちり見える」「華やかに見える」といった印象は、単に“幅”や“形”だけで決まるものではありません。
まぶたの構造、患者様の理想、そして術者の技術がバランスよく噛み合うことで、はじめて“美しい二重”が完成します。

私が特に重視しているのが、以下の3つの要素です。

① 解剖構造に基づいた安全な設計

どれだけ希望通りの二重を目指しても、まぶたの構造に合っていないデザインは長持ちせず、トラブルの原因になります

  • 皮膚が厚いのに幅広デザインを選ぶと、ラインが食い込まずに不安定になる
  • 眼瞼下垂があるのに無理に高い位置で留めると、眠そうな仕上がりになる
  • 脂肪が多いのに平行型にすると、まつ毛の生え際が見えず重たく見える

こうしたリスクを回避するには、眼瞼の解剖学的知識に基づいた安全な設計が欠かせません。
骨格、皮膚、筋肉、脂肪、眼球の突出度などを総合的に評価し、「その構造で自然に成り立つライン」を見極めていきます。

② ご本人の希望とのすり合わせ

構造だけで判断するのではなく、ご本人が“どうなりたいか”を丁寧にヒアリングすることも同じくらい重要です。

  • 末広で自然な雰囲気を保ちたいのか
  • 平行型で華やかな印象にしたいのか
  • 「やりすぎに見えたくない」と思っているのか
  • 芸能人やモデルの目元を参考にしているのか

こうした理想のイメージを医師と共有し、それを医学的にどう実現できるかを一緒に考える時間が、デザインの質を決めます

ときには「ご希望の形は、この構造では不安定になる可能性があります」と率直にお伝えすることもあります。
大切なのは、“できる”ことと“似合う”ことの両方を擦り合わせた、納得できる設計であることです。

③ わずかな左右差を調整する技術的な対応力

多くの方は、まぶたや眉、黒目の大きさに微細な左右差があります。

  • 右は眼瞼下垂が強い
  • 左はまぶたの脂肪が厚い
  • 眉の高さが左右で違う
  • 眼球の位置がわずかにズレている

これらを事前に把握し、術中に微調整を加えることで「揃って見える」仕上がりに近づける必要があります。

この左右差の調整こそが、経験と技術が求められる部分です。
同じ幅で糸をかけただけでは解消されないため、微妙な位置調整や角度の差、テンションの調整などを細かくコントロールする技術力が問われます。

この3つが高いレベルで融合したとき、
“整形した感”のない、その人らしさを活かした自然で美しい二重が完成します。

数値では表せないこの「バランス」を見極め、導くことこそが、私たち医師の仕事だと考えています。

最後に|「自分に似合う二重」は、必ず見つかります

「ぱっちりさせたいけど、やりすぎたくない」
「埋没で何ミリがいいか分からない」
「自分の目に合ったデザインをプロに提案してほしい」

こういったお悩みをお持ちの方、ぜひ一度ご相談ください。

診察では、まぶたの構造と目の動きの評価をしっかり行った上で、自然で魅力的な目元を一緒に設計していきます。
“何ミリか”ではなく、“どう見えるか”にこだわった医療を、これからも提供していきたいと考えています。

この記事をシェアする
目次
閉じる