鼻整形を考えている方の中には、「肋軟骨移植をすると時間が経つと曲がることがある」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
肋軟骨は、他の軟骨(鼻中隔軟骨や耳介軟骨)と比較してもボリュームが大きく、強度が高いため、大きな変化を伴う鼻形成手術に適した素材です。 しかし、その一方で、「移植後に変形(ワーピング)する可能性がある」ことが懸念されることもあります。
では、この「肋軟骨が曲がる」という話は本当なのか?また、肋軟骨移植にはどのようなデメリットがあるのか? 本記事では、ワーピング現象の詳細・曲がる理由・変形を防ぐ方法・修正手術の可否 について、医学的な視点から詳しく解説します。
肋軟骨が曲がる理由:ワーピング現象とは?
ワーピング(Warping)とは?
肋軟骨移植後に起こる最も一般的な問題 の一つが、「ワーピング現象(Warping)」です。
これは、移植した肋軟骨が時間とともに曲がってしまうことを指し、特に術後数ヶ月〜1年の間に生じることが多い です。
なぜワーピングが起こるのか?
ワーピングは、以下のような要因によって引き起こされます。
① 肋軟骨の構造上の特性
肋軟骨はもともと胸郭の一部として、体を支えるために「弧を描くようなカーブを持っている」 のが特徴です。
- 軟骨の内部には、異なる方向に引っ張り合う力が存在しているため、直線的に加工しても時間が経つと元の形に戻ろうとする(=リモデリング作用)
- その結果、鼻に移植した後も軟骨自体の弾性応力が働き、徐々に曲がる可能性がある
② 生体組織としての適応変化
軟骨は、移植後も生体組織としての代謝活動を続ける ため、時間の経過とともに以下のような変化が起こります。
- 周囲の組織の影響を受け、細胞レベルで形状が変化する
- 鼻の内部で外力や皮膚の収縮が加わることで、軟骨が変形する
- 瘢痕(傷跡)の収縮によって、軟骨が引っ張られ、ねじれや歪みが生じる
特に、鼻先(鼻尖)や鼻柱部に移植された軟骨は、外部からの圧力を受けやすく、時間とともにワーピングが進行する ケースが多く報告されています。
③ 移植時の固定が不十分
- 軟骨をしっかり固定しないと、時間の経過とともにズレたり変形したりする
- 特に長い肋軟骨を移植する場合、鼻骨や鼻中隔との固定が弱いと、ワーピングが進みやすい
④ 手術技術の影響
ワーピングのリスクは、術者の技術によって大きく変わる ことが分かっています。
- 適切な採取方法を取らないと、変形しやすい部位の軟骨を使用してしまう
- 軟骨の厚みや方向を考慮せずに移植すると、湾曲の力が不均等に働き、曲がりやすくなる
- 軟骨の加工が不十分な場合、時間経過とともにワーピングが発生するリスクが高まる
ワーピングを防ぐ方法
① 湾曲の少ない部位から採取する
- 第7〜9肋骨 は比較的直線に近く、鼻形成に適している
- 強い弯曲のある部位を避け、より直線的な部位を選択する
② 軟骨の適切な加工技術を用いる
- 層状にスライス(Laminated Cartilage Graft)し、均等な応力分布にする
- 湾曲の方向が逆になるように軟骨を反転させて積層する
- 長い軟骨を使用する場合は、鼻骨・鼻中隔としっかり固定し、動きを最小限にする
③ 経験豊富な形成外科医を選ぶ
- 肋軟骨移植の経験が豊富な医師を選ぶことで、ワーピングのリスクを最小限に抑えることが可能
- 軟骨の加工・固定の技術力が非常に重要
肋軟骨が曲がった場合、修正手術は可能か?
修正手術は可能です。
肋軟骨を移植した後に曲がってしまった場合でも、適切な方法を選択することで修正が可能です。修正手術にはいくつかの方法があり、患者の状態や希望する仕上がりに応じて最適な方法が選ばれます。
① 既存の肋軟骨を削り直して修正
すでに移植された肋軟骨が変形している場合、その軟骨を再加工して形を整え、再度移植する方法です。軟骨を削ることで歪みを調整し、より自然な形状に仕上げることができます。この方法は、すでに移植した肋軟骨の量が十分であり、加工によって適切な形に整えられる場合に適用されます。
② 新たに肋軟骨を採取して移植
変形した肋軟骨の修正が困難な場合、新たに別の肋骨部位(反対側など)から軟骨を採取し、再建する方法が選ばれます。この方法では、新しい軟骨を用いるため、形状を最適化しやすく、より安定した結果が期待できます。前回の手術で十分な軟骨が確保できなかった場合や、既存の軟骨が極端に変形している場合に適した方法です。
③ 鼻中隔軟骨・耳介軟骨を併用して修正
肋軟骨のみで修正するのではなく、鼻中隔軟骨や耳介軟骨を補助的に使用する方法もあります。特に鼻先の微調整には、耳介軟骨を使用することで、より柔らかく自然な仕上がりを実現できます。また、鼻中隔軟骨を併用することで、構造的な安定性を高めることが可能です。この方法は、肋軟骨の量が不足している場合や、より繊細な調整が必要な場合に選ばれます。
まとめ
本日は、肋軟骨移植のワーピング現象についてお話しました。
肋軟骨移植は長期的に曲がる可能性があるものの、適切な処理を施すことでそのリスクを最小限に抑えることが可能です。
重要なポイント
✓ ワーピングを防ぐには、軟骨の加工技術と固定方法が重要
- 移植前に適切な加工を施し、軟骨の応力を均一にすることで、変形を防ぐことができます。
- さらに、鼻骨や鼻中隔への確実な固定が、移植後の安定性を高めます。
✓ 万が一曲がった場合でも修正手術が可能
- 既存の肋軟骨を削り直して再加工する方法
- 新たに肋軟骨を採取して移植し、修正する方法
- 鼻中隔軟骨や耳介軟骨を併用して調整する方法
✓ 修正手術は高度な技術を要するため、経験豊富な形成外科医を選ぶことが成功の鍵
- 肋軟骨移植の修正手術は、通常の鼻整形よりも難易度が高いため、専門的な知識と経験を持つ医師を選ぶことが非常に重要です。
私はこれまでに多数の肋軟骨移植の症例を経験し、さらに他院での鼻整形後に曲がってしまった方の修正手術も多く手がけてきました。修正手術には高い技術が求められますが、適切な処置を行うことで、より理想的な仕上がりを目指すことが可能です。
肋軟骨移植や修正手術についてお悩みの方は、ぜひ安心してご相談ください。あなたにとって最適な治療方法をご提案いたします。