美容医療におけるヒアルロン酸の基礎知識|種類・適応・注入部位の正解とは

今回は、ご質問の多い「ヒアルロン酸注入」について、専門的な視点からわかりやすくお話しします。

ヒアルロン酸注入は、美容医療の中でも特に人気の高い治療法です。しわやたるみの改善、輪郭の調整、肌のハリ感アップなど、目的に応じて幅広く活用されています。

しかし実は、「どのヒアルロン酸製剤を、どの部位に、どのような方法で注入するか」によって、仕上がりや満足度には大きな差が出てきます。

だからこそ、患者様一人ひとりのお悩みや骨格、肌質を丁寧に見極めたうえで、適切な製剤と注入技術を選ぶことが重要です。

本記事では、ヒアルロン酸注入の基本から注意点まで、専門医の立場からやさしく解説していきます。


目次

ヒアルロン酸ってなに?

ヒアルロン酸は、もともと人の体の中にある成分です。肌や関節、目の中などにあって、水分をしっかりと抱え込む働きをしています。

この保水力を活かして、美容医療では以下のような目的で使われています。

  • シワやたるみの改善
  • 頬やこめかみのボリュームアップ
  • 鼻やアゴのライン形成
  • 肌のハリ感やうるおいアップ

「ヒアルロン酸を入れる=顔が変わる」というイメージがあるかもしれませんが、実際には「自然に若々しく見せる」ためのサポート役のような存在です。


ヒアルロン酸にも“種類”があるんです!

実は、ヒアルロン酸にはたくさんの種類があります。柔らかいもの、しっかり形をキープできる硬めのものなど、それぞれ性質が異なるんです。

たとえば…

  • 柔らかいタイプ:目の下や唇など、動きが多く繊細な場所に◎
  • 硬めのタイプ:鼻筋やアゴなど、しっかり形を出したい場所に◎
  • 中間のタイプ:ほうれい線や頬のへこみにバランスよく使える◎

注入する「深さ」や「目的」も重要で、皮膚の浅い層に入れるのか、骨に近い深い層に入れるのかで、使うヒアルロン酸は変わります。


当院で使っているヒアルロン酸製剤

当院では、アラガン社の「ジュビダームビスタ®シリーズ」を使用しています。すべて厚生労働省の認可を受けた、安全性と効果の高い製剤です。

それぞれの製剤と特徴

  • ボラックスXC:鼻やアゴのラインをはっきり見せたいときに(持続:約18ヶ月)
  • ボリューマXC:頬やこめかみのボリュームアップ、リフト感がほしいときに(持続:約18〜24ヶ月)
  • ボリフトXC:ほうれい線や浅いシワなどに自然になじむタイプ(持続:約12〜18ヶ月)
  • ボルベラXC:涙袋や唇など繊細な部位に(持続:約12ヶ月)
  • ボライトXC:肌のハリ・ツヤアップ、小じわ改善に(持続:約4〜9ヶ月)

ひとりひとりのお顔に合った製剤を選ぶのが、美しく自然に仕上げるコツです。

当院で取り扱っているヒアルロン酸製剤の比較表

製剤名硬さ適応部位持続期間注入量の目安(参考)
ボラックスXC最も硬い鼻・アゴの形成約18ヵ月鼻筋:1ccアゴ:1〜2cc鼻翼基部:1〜2cc
ボリューマXC硬い額・こめかみ・ほうれい線・頬・あご約18〜24ヵ月額:1〜5ccこめかみ:1〜4cc鼻翼基部:1〜2ccほうれい線:1〜2cc頬:1〜4cc
ボリフトXC中間ほうれい線・ゴルゴライン・浅いしわやくぼみ約12〜18ヵ月ほうれい線:1〜2cc目の下:1〜2cc頬:1〜4cc
ボルベラXC柔らかい涙袋・目の下のくぼみ・唇約12ヵ月唇:1〜2cc涙袋:1cc
ボライトXC最も柔らかい肌の潤い・ハリ感改善、小じわ(顔全体・首など)約4〜9ヵ月首:2cc(目安)

※注入量はあくまで目安であり、個人の骨格や肌質、目的に応じて適切な量を医師が判断します。


どこに入れる?注入部位と製剤の選び方

ヒアルロン酸注入で美しく自然な仕上がりを目指すには、「どこに・どの製剤を入れるか」が非常に重要です。部位によって皮膚の厚さや動き方、骨格との距離が違うため、それぞれに適した硬さや質感の製剤を選ぶ必要があります。

鼻・アゴ(輪郭形成)

  • 目的:鼻筋を通す、アゴをシャープにする、フェイスラインを整える
  • 推奨製剤:硬め・弾力性のあるヒアルロン酸(例:ボラックスXC)
  • 注入層:骨膜上(深層)
  • ポイント:高さや形をしっかりキープする必要があるため、G’値(弾性)が高く、流れにくい製剤が適しています。注入深度のミスがあると不自然になりやすいため、高度な技術が必要です。

ほうれい線・頬(ボリューム・リフトアップ)

  • 目的:加齢によるくぼみを補う、フェイスラインを持ち上げる
  • 推奨製剤:中等度の硬さ(例:ボリューマXC、ボリフトXC)
  • 注入層:皮下〜深層脂肪層
  • ポイント:自然な立体感と動きへのなじみを両立する製剤がベスト。頬の位置が上がることで、ほうれい線が目立ちにくくなる相乗効果も期待できます。

涙袋・目の下・唇(繊細な部位)

  • 目的:涙袋をふっくら見せる、唇にボリュームを出す、目元の疲れ感を軽減する
  • 推奨製剤:非常に柔らかく、なじみが良いタイプ(例:ボルベラXC)
  • 注入層:皮下浅層・真皮直下
  • ポイント:皮膚が非常に薄く、注入量の微調整が必要な部位です。わずかな凹凸や色ムラが目立ちやすいため、経験豊富な医師による丁寧な注入が求められます。

肌全体(ハリ・うるおい改善)

  • 目的:肌の水分保持力を高める、ちりめんジワやキメの乱れを改善
  • 推奨製剤:極めて柔らかく拡がりやすいタイプ(例:ボライトXC)
  • 注入層:真皮浅層
  • ポイント:ごく浅い層に少量ずつ丁寧に注入します。メソセラピーや水光注射のように広範囲に使用されることも多く、ナチュラルな肌の若返りを希望される方におすすめです。

ヒアルロン酸注入は「誰でも・どこでも・どんな悩みにも同じ施術」で満足のいく結果が出せるわけではありません。 顔の構造、筋肉の動き、皮膚の厚み、加齢変化などを的確に診断し、それぞれに合った製剤選択・注入ポイント・量とバランスを見極めることが、美しく自然な仕上がりにつながります。

当院では、単に見た目の変化を目指すだけではなく、5年後、10年後の自然なエイジングを見据えた治療計画をご提案しています。


よくあるご質問

Q1. ヒアルロン酸注入は痛いですか?
A. 注入時には極細の針や鈍針カニューレを使用し、必要に応じて麻酔クリームを併用します。また、当院で使用する製剤には麻酔成分(リドカイン)が含まれており、痛みは最小限に抑えられます。

Q2. ダウンタイムはありますか?
A. 多くの場合、注入後すぐにメイクが可能で、日常生活に支障はほとんどありません。ただし、注入部位に軽い腫れや内出血が出る場合があり、数日〜1週間程度で自然に改善します。

Q3. 効果はどのくらい続きますか?
A. 製剤によって異なりますが、約4ヵ月〜24ヵ月と持続期間に幅があります。詳しくは上記の比較表をご参照ください。

Q4. 定期的な注入が必要ですか?
A. 一度の施術でも効果はありますが、時間の経過とともに徐々に体内に吸収されるため、半年〜1年半ごとのメンテナンスをおすすめしています。

Q5. ヒアルロン酸は溶かすことができますか?
A. はい、万が一仕上がりにご満足いただけない場合や修正が必要な場合は、「ヒアルロニダーゼ」という酵素を使って溶解することが可能です。


まとめ

ヒアルロン酸注入は、シワやたるみの改善だけでなく、輪郭の調整や肌のうるおいアップなど、さまざまな目的で活用できる美容治療です。メスを使わずに、自然で若々しい印象を目指せる点でも、多くの方に選ばれています。

ただし、仕上がりの美しさや満足度は、「どんなヒアルロン酸を、どの部位に、どのように入れるか」で大きく変わってきます。だからこそ、患者様一人ひとりのお悩みやお顔立ち、ライフスタイルに合わせた丁寧な診察と、的確な注入デザインがとても大切です。

当院では、経験豊富な医師が診察・デザイン・施術まで一貫して行い、ナチュラルで美しい仕上がりを目指しています。
少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談くださいね。

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