鼻先や鼻柱の形を整える際に行われる「耳介軟骨移植」。
自分の耳から軟骨を採取して移植する、安全性の高い方法ですが、
「時間が経つと溶けてなくなるのでは?」
「耳の形が変わったり、イヤホンが使えなくなったりしない?」
といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、耳介軟骨移植の仕組みや術後の経過、注意点について、形成外科専門医の立場から詳しく解説します。
耳介軟骨移植とは?

耳介軟骨移植とは、自分の耳の軟骨を一部採取し、鼻先などに移植する手術です。
主に鼻先の形を整える「鼻尖形成」などで用いられます。
耳の軟骨は柔らかくしなやかで、形をデザインしやすいという利点があります。
また、自家組織(自分の組織)を使うため拒絶反応やアレルギーの心配がほとんどないのも大きな特徴です。
軟骨は時間が経つと“溶ける”の?
「耳介軟骨は時間が経つと溶ける?」という質問をよくいただきますが、
正確には“溶けてなくなる”のではなく、一部が吸収されるという表現が正しいです。
移植した軟骨は、体の中で新しい血流に馴染むまでの間に、ごく一部が自然に吸収されることがあります。
ただし、炎症や感染が起きない限り、吸収は一時的なもので、その後は安定して長期間残ることがほとんどです。
つまり、「完全に溶ける」ことはまずありません。
耳介軟骨を採ると耳の形は変わる?
耳介軟骨を採取する際は、耳の裏側から切開して軟骨を一部だけ取り出します。
採取量が少ない場合は、耳の形がほとんど変わらず、見た目にも傷跡が目立たないように縫合します。
ただし、広範囲で軟骨を採る場合には、耳のくぼみの形がわずかに変わることがあります。
その結果、イヤホンのフィット感に違和感を感じる方もまれにいるという程度です。
術後のイヤホンはいつから使える?
耳介軟骨を採取した部分は、通常1週間ほど圧迫固定を行います。
この期間は耳を圧迫しないように注意し、イヤホンの使用は控えましょう。
固定が外れたあとは、腫れや痛みの回復具合を見ながら、1〜3週間後を目安に再開可能です。
ただし、軟骨を多く採取した場合や耳の腫れが強い場合は、イヤホンの再開時期が少し遅れることもあります。再開のタイミングは、必ず主治医に確認しましょう。
感染や合併症のリスクは?
耳介軟骨移植は安全性の高い手術ですが、まれに感染や炎症を起こすことがあります。
鼻先が赤くなったり、痛みを感じたりする場合は、軟骨の内部で感染が起きている可能性があります。
早期に抗生剤や処置で改善することがほとんどなので、異変を感じたら我慢せずすぐ受診してください。
鼻先の軟骨は見た目でバレる?
鼻先に移植した軟骨は、外見からわかることはまずありません。
触っても自然で、CTやレントゲンでも軟骨はX線を通しやすいため、映りにくく「整形した」と分かることはほとんどないといえます。
自然な形状で仕上がるよう、手術ではミリ単位の調整を行っています。
まとめ
耳介軟骨移植は、自分の組織を使うため安全性が高く、形態の安定性にも優れた方法です。
軟骨が「溶ける」ことはなく、適切な手術と術後管理を行えば長期的に自然な鼻先を保つことができます。
耳の形やイヤホンの使用についても、大きな不便を感じることはほとんどありません。
不安な点は、手術前に医師としっかり相談しておくことで、安心して治療を受けることができます。

