【専門医解説】小鼻縮小の内側法と外側法の違い。失敗しない“適応の見極め方”

小鼻(鼻翼)の広がりや大きさが気になって、ご相談に来られる方から最も多くいただくのがこんな質問です。

「内側法と外側法って、何が違うんですか?」
「私の鼻は、どっちをすれば自然に整いますか?」

インターネットで検索すると、「内側法はバレない」「外側法はよく変わる」といった断片的な情報が出てくるため、どれが正解なのか迷ってしまうのも無理はありません。 中には、「傷がつくのが怖いから内側法がいいです」と、術式を指名して来院される方もいらっしゃいます。

しかし、形成外科専門医として、最初にはっきりとお伝えしなければならないことがあります。 この2つの術式は、「好み」で選ぶものではなく、あなたの「鼻の形」によって医学的に決まるものです。

私は日々の診療で、鼻の構造・皮膚の厚み・穴の見え方、そして笑った時の筋肉の動きまでを細かく観察し、 “どの部分を、何ミリ動かすと、その人にとって一番自然か” という基準で治療法をご提案しています。

今回は、私自身が実際の現場で行っている「内側法・外側法の本質的な違い」「適応の見極め方」そして「実際の症例」まで解説します。

目次

内側法と外側法の違い

まず最初に、絶対に押さえておきたいのがこの「違い」です。 小鼻縮小には大きく分けて2つのアプローチがあります。

小鼻縮小 内側法
内側法
小鼻縮小 外側法
外側法
  • 内側法: 小鼻の“幅(距離)”を狭める手術
  • 外側法: 小鼻の“丸み(張り出し)”を減らす手術

「小さくする」という目的は同じですが、「どこの何を減らすか」が全く異なります。 この使い分けは非常に重要です。なぜなら、診断を間違えると「不自然な鼻(コンセント鼻やピンチノーズ)」になってしまうからです。

丸みが強いのに「内側法」を選ぶリスク

例えば、小鼻が外側に丸く張り出している「あぐら鼻」タイプの方が、傷跡を気にして「内側法だけ」を選んでしまうとどうなるでしょうか。 物理的に左右の距離は縮まります。しかし、肝心の「丸み」はそのまま残ります。 その結果、「丸い風船を無理やり中央に押し込んだ」ような、窮屈で不自然な形になってしまいます。鼻の穴がいびつに変形してしまうリスクさえあります。

幅が広いのに「外側法」を選ぶリスク

逆に、小鼻の距離が離れていることが原因なのに、「外側法だけ」を選んでしまうとどうなるか。 小鼻の丸みは取れてスッキリしますが、顔の中での「鼻の横幅」はほとんど変わりません。 「手術したはずなのに、鏡を見ても代わり映えしない」「顔の余白が埋まらない」といった満足度の低い結果になりがちです。

小鼻縮小は、単に「小さくする手術」ではありません。 “小鼻の、どこが、どれだけ大きいのか”。 この見極めこそが、成功のすべての土台になります。

内側法が向いている鼻 〜 「幅」が広いタイプ

小鼻縮小 内側法

では、それぞれの術式について詳しく見ていきましょう。 まずは内側法です。これは、鼻の穴の床(底面)の一部を楔形(くさびがた)に切除して、左右の小鼻を中央に引き寄せる“幅の治療”です。

内側法が最適なタイプ

この手術だけで綺麗に仕上がるのは、主に以下のような特徴をお持ちの方です。

  • 小鼻の丸み(張り出し)は少ない
  • 笑うと小鼻が横方向に広がる
  • 正面から見た時の、鼻の横幅(余白)をスッキリさせたい

鏡でチェックする時の「目安」

自分が「幅が広いタイプ」なのかどうか、どう判断すればいいのでしょうか。 ひとつの分かりやすい目安として、「目と目の間の距離」と比較する方法があります。

顔の黄金比では、一般的に「目頭の距離 = 小鼻の幅」が理想的とされています。 もちろんお顔のバランスによりますが、もし鏡を見て、小鼻の幅が目頭のラインよりも外にはみ出しているようであれば、それは物理的な「幅」が広い可能性があります。

このタイプの方であれば、外側法で皮膚を切らなくても、内側法で確実に“距離”を縮めてあげるだけで、お顔全体のバランスは整います。

内側法のメリットと傷跡

内側法の最大のメリットは、傷が鼻の穴の中や、小鼻の付け根の溝に隠れるため、外からはほとんど見えないことです。 術直後であっても、メイクで隠せる程度の赤みで済むことが多く、ダウンタイムが取れない方にも喜ばれる術式です。

外側法が向いている鼻 〜 横の“丸み”をどう見るか

小鼻縮小 外側法

次は外側法です。 これは、小鼻の外側の付け根、つまり“もっとも丸く張り出した部分”の皮膚を三日月状に切除して、小鼻自体のボリュームを減らす手術です。

外側法が向いているタイプ

この手術が適しているのは、主に以下のような方です。

  • いわゆる「あぐら鼻」(丸みが強い)
  • 小鼻が外側に大きく張り出している
  • 皮膚が分厚く、内側法だけでは変化が出にくい
  • 正面だけでなく、斜めや横から見ても小鼻の厚みが目立つ

外側法の傷について

外側法は、鼻翼溝(小鼻の外側の溝)に沿って切開します。 「傷が目立つのでは?」と心配される方も多いですが、形成外科的な技術で丁寧に縫合すれば、徐々に馴染んで目立たなくなっていきます。

当院では、真皮縫合を徹底し、皮膚にかかる緊張を最小限にすることで、傷跡が綺麗になるよう工夫しています。

小鼻だけ見てはいけない? 鼻柱とのバランス(ACR)

ここまで「幅」と「丸み」のお話をしてきましたが、実はもう一つ、美しい鼻にするために欠かせない視点があります。

それは、「鼻柱:鼻の真ん中の柱)」との位置関係です。

小鼻を小さくしたのに、なんだか垢抜けない。 むしろ、鼻が短く見えたり、豚鼻っぽく見えてしまったりする。 その原因の多くは、小鼻の大きさではなく「ACR(Ala–Columellar Relationship)」というバランスの崩れにあります。

理想のACR
後退している鼻柱

鼻柱が引っ込んでいるとどう見える?

理想的なバランスは、正面から見た時に「小鼻よりも鼻柱が少し下がっている」状態です。 逆に、鼻柱が小鼻より上にあると、以下のような印象になります。

  • 鼻の穴が正面から丸見えになる
  • 小鼻が垂れ下がって重く見える
  • 鼻全体がペチャっと潰れて見える

このタイプの方の場合、いくら小鼻縮小で小鼻を小さくしても、バランスは改善しません。 むしろ、「鼻中隔延長術」などで鼻柱を下に出し、鼻先の位置を整えてあげるほうが、結果的に小鼻がスッキリと目立たなくなるケースも多いのです。

私は必ずこのACRを確認して診断、提案しています。

症例解説 ─ 内側+外側+鼻中隔延長の複合治療

実際に「幅」「丸み」「ACR」のすべてに課題があったため、複合的に治療を行った症例をご紹介します。

術前の状態

この患者様は、以下のような特徴をお持ちでした。

  • 小鼻の「幅」が広く、目頭よりもはみ出している
  • 小鼻の「丸み」が強く、あぐら鼻の印象がある
  • 鼻柱が後退しており、ACRのバランスが崩れている

この方の場合、「内側法だけ」あるいは「外側法だけ」では、どこかに不自然さが残ってしまいます。 そこで、それぞれの原因に対して適切なアプローチを組み合わせました。

施術内容

  1. 鼻中隔延長: まず、鼻柱を正しい位置へ出し、ACRを整えます。これにより鼻先がスッと整い、正面からの鼻の穴が見えにくくなります。
  2. 小鼻縮小(内側法): 左右の幅を寄せて、物理的な「距離」を縮めます。
  3. 小鼻縮小(外側法): 外側の張り出しと丸みを切除し、小鼻の「存在感」を減らします。

経過3ヶ月の変化

術後3ヶ月の状態です。 鼻の穴の見え方が自然になり、鼻先の角度が落ち着いたことで「上向き感」が解消されました。 気になっていた小鼻の厚み・丸み・横幅もすべて改善しています。

単独の手術で済む方もいれば、このように組み合わせることで初めて理想に近づく方もいます。 私が目指しているのは、「整形しました!」という鼻ではなく、「どこかを変えたというより、もともとこうだった」と思えるような自然な変化です。

最後に:小鼻縮小は「何ミリ動かすか」がすべて

小鼻縮小は、一見すると「切って縫うだけ」のシンプルな手術に見えるかもしれません。

しかし実際には、 幅(距離)・丸み(張り出し)・厚み・鼻柱の位置(ACR)・鼻先の角度・皮膚の厚み・表情による動きこれら多くの要素を同時に計算しながら、もっとも美しく自然になる“その人だけのミリ数”を決めていく、非常に奥深い手術です。

「内側法だけでいいのかな?」 「外側法はやったほうがいい?」 「それとも、鼻先から変えるべき?」

こうした疑問は、ご自身で鏡を見ているだけでは解決しません。診察で鼻の構造を細かく確認して、初めて正確な答えが出せます。

もしご自身の鼻で迷われていることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。 形成外科専門医として、あなたにとって最も自然で、かつ負担の少ない方法をご提案します。

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