近年では「切らない鼻の整形」「お手軽なプチ整形」などといって、簡単にできる鼻の整形が増えています。
具体的には「鼻に人工物(オステオポールやメッシュ)を入れて高さを出したりする」といった施術です。
入れるのはクローズ法で行えるので簡単なのですが、トラブルが起きた後の除去は非常に困難です。当院でも鼻の異物除去、修正のご相談は非常に多いです。本日は異物除去について解説したいと思います。
鼻に入れる人工物
オステオポール
素材はPCL=ポリカプロラクトン
形状は様々で鼻先に入れるのはボール(球状)または半球状です。シート状や楕円形のものもあります。網目状になっています。これを鼻先に入れることで、鼻先を高くしたり細くしたりします。
メッシュ
素材はPCL=ポリカプロラクトン
糸状のものです。鼻の先から糸を挿入することで、鼻筋を高くすることができます。プロテーゼに抵抗のある患者様が治療法として選択することがあります。一部のクリニックでは糸を折りたたんで入れる場合もあります。
起こりうるトラブル
先の皮膚が薄くなってオステオポールが透けたり赤くなる

オステオポールは周囲組織に炎症と癒着を起こすため他の移植物よりも強い皮膚の菲薄化を招く印象です。浅い層に入れると顕著に現れます。
鼻先の軟骨が変形してしまう

オステオポールが乗っかることで、自身の軟骨が押しつぶされます。ずっと圧がかかっている状態なので、時間とともに軟骨が変形してしまいます。
感染したり、壊死する
基本的に異物は軟骨等の自分の組織よりも感染しやすいです。また感染や血流障害で周囲組織が壊死することがあります。
糸が突き出る

入れた糸が突き出して鼻先に大きなニキビのような膨らみができる、糸が突き出るなどのトラブルもあります。
人工物が癒着する
オステオポールやメッシュを挿入すると、周りの組織と癒着してしまうことがあります。癒着を起こすと、周りの組織に変形などの影響が出る可能性があります。また、癒着が起こっている人工物を除去するのはかなり困難です。
実際のメッシュを除去した症例
こちらの患者さんは「鼻をすっきりさせたい」とご相談に来られました。


鼻筋がワシ鼻っぽくなっています。
2~3年前に他院で【鼻筋にメッシュ】を入れられたそうです。その際も「鼻をすっきりさせたい」とオーダーしたそうです。
おそらく、鼻筋にメッシュを何本か入れることで鼻筋に高さ(ボリューム)を出し、鼻筋をすっきり見せる、といった目的で挿入をしたと思うのですが、写真で分かるように、鼻筋に沿って形を作るわけではないので、綺麗な鼻筋にはなりません。

メッシュが入っている状態です。ハンプの部分に糸が挿入されることで、ハンプ部分にボリュームが出て、ワシ鼻っぽくなっていました。


これは実際に除去したメッシュです。患者さんは8本入っていると言われていたそうですが、実際には4本入っていました。4本のメッシュが折りたたんで挿入されていました。
オステオポールやメッシュの除去、修正はよくする手術ですが、鼻先の皮膚が薄くなっているケースが多いので皮膚に穴があかないように剥離をします。皮膚が薄くなっているので、筋膜などの自家組織を移植することもあります。自身の軟骨(鼻翼軟骨や鼻中隔軟骨)も人工物に圧迫されて変形している場合がほとんどなので、軟骨移植を行い形状を整えます。この患者様も筋膜移植、肋軟骨移植をし、修正を行いました。
まとめ
現在はオステオポールやメッシュなどのリスクが認知されつつあり、使用するクリニックは減ってきているように感じます。
僕ら形成外科医からすると、耳の裏を1cmほど切れば同じくらいの軟骨は採取できますし、軟骨のほうが安全性が高いので正直オステオポールやメッシュを使用するメリットはほぼないと考えています。
オステオポールやメッシュは安易に使用するべきものではありません。
ただ絶対に使用してはいけないものでもないですし、必ず取り除かないといけないものでもありません。もちろんオステオポールやメッシュを入れても何も起きない人もいます。
マエクリはオステオポールやメッシュを使用しませんが、除去術は行っております。
不安を感じた場合は気軽に相談いただければと思います。