鼻中隔延長や鼻柱を下げる手術を検討している方の中には、
「鼻を下げたら歯が見えにくくなる?」「笑ったときの上唇の形は変わる?」
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
鼻と口元は筋肉で密接につながっており、鼻整形によって表情や口の動きが少し変わることがあります。
今回は、鼻整形後の歯の見え方や上唇の変化、さらに口元全体への影響について、形成外科専門医の立場から解説します。
鼻中隔延長・鼻柱下降後に歯が見えにくくなる?
鼻中隔延長や鼻柱を下げる手術を行うと、歯が少し見えにくくなることがあります。
これは、鼻柱を下げたことで上唇がわずかに下方向へ引っ張られるためです。
通常、笑ったときに上の前歯が1〜2mmほど見えるのが自然な状態ですが、
鼻を下げすぎると上唇が動きにくくなり、「笑っても歯が見えにくい」という変化が出ることがあります。
ただし、すべての方に起きるわけではありません。
鼻先の位置や延長角度を適切にコントロールすれば、歯の見え方を自然に保つことができます。
上唇の形と口元の印象も変化する
鼻整形によって上唇の形は少し変わることがあります。
鼻中隔延長をすると、鼻下の皮膚が下方向に引かれ、
上唇の中央(Cupid’s bow)のカーブがやや浅くなることがあります。
また、鼻柱を下げると上唇の厚みがやや強調され、
口元が落ち着いた印象になる反面、笑顔の印象が変わることもあります。
この変化はあくまで微細で、術前にどの程度動きが変わるかを予測することが重要です。
当院では、笑顔時・リラックス時の表情写真をもとに、
「笑ったときの歯の見え方」まで含めてデザインを行っています。
ケロイドや傷跡の心配は?
鼻の手術後に「ケロイドっぽい傷になるのでは?」と不安に感じる方もいます。
結論から言うと、鼻はケロイドになりにくい部位です。
ただし、移植材料を採取する耳や胸(肋軟骨)はケロイドができやすい場所なので、
傷が硬くならないように軟膏ケアやテーピングを行い、経過を慎重に見ます。
鼻そのものの傷は、ほとんどの方が数ヶ月で目立たなくなることが多いです。
鼻中隔延長の“曲がり”への対策
鼻中隔延長で最も注意すべきリスクのひとつが「曲がり(変形)」です。
手術後の経過で鼻先がわずかに左右どちらかに傾くことがあります。
僕が手術で意識しているポイントは次の3つです。
- 延長素材の正しい選定(硬さ・形状・固定力のバランス)
- 無理な延長を避ける(過度なテンションは変形の原因)
- 斜鼻の有無を事前に診断する(もともとの軸ズレを修正してから延長)
この3点を徹底することで、曲がりのリスクを最小限に抑えています。
また、手術中にも軟骨のテンションを何度も確認し、自然な支点位置に調整しています。
鼻整形後の完成までの期間
鼻整形後は、手術直後よりも時間をかけて形が変化していくのが自然です。
特に鼻中隔延長やフル手術(鼻フル)を行った場合、
腫れや組織の硬さが取れて最終的な形になるまでには約6ヶ月〜1年かかります。
術後1ヶ月で「鼻先が丸い」と感じても、まだ完成ではありません。
時間とともにむくみが引き、軟骨がなじんでくると鼻先はすっきりと整っていきます。
再手術や修正を考えるのは、最低でも半年〜1年経過してからが目安です。
再手術や部分修正は可能?
すでに鼻フル整形を受けた方でも、鼻筋を触らず鼻先だけを再調整することは可能です。
鼻先の軟骨を削ったり、方向を微調整したりすることで、
全体の印象を大きく変えずにバランスを整えることができます。
特に「鼻先だけがやや丸い」「もう少し下げたい」といったケースでは、
部分修正で十分対応できる場合が多いです。
まとめ
鼻中隔延長や鼻柱を下げる手術を行うと、
上唇の位置や歯の見え方が微妙に変わることがあります。
ただし、これは異常ではなく、構造が変わったことによる自然な変化です。
大切なのは、鼻だけを見るのではなく、口元・表情・骨格全体で設計すること。
笑ったときに自然に歯が見え、顔全体が調和して見えるようにデザインすることで、
どの角度から見ても「その人らしい美しさ」が生まれます。
鼻の手術は形を変えるだけでなく、表情の印象を再設計する施術です。
僕は“動いても自然”をモットーに、構造と表情の両方からデザインしています。

