この記事は 前田 翔 医師(形成外科専門医・美容外科専門医) が監修しています。
ピンチノーズとは?

鼻整形を検討されている方や、すでに手術を受けた方の中には「鼻先がつままれたように見える」「不自然に細くなった」という悩みを抱えている方がいます。
これがいわゆる ピンチノーズ変形 です。
見た目の不自然さだけでなく、鼻腔が狭くなることで呼吸がしづらくなることもあるため、美容面・機能面の両方に影響を与えるトラブルといえます。
ピンチノーズが起こる原因

1. 鼻尖軟骨を縛りすぎる
鼻尖形成の際に、鼻尖軟骨を糸で寄せて細くする手法があります。
本来は自然な形をつくるための操作ですが、過剰に行うと鼻先がつぶれてしまい、つままれたような形態になります。
2. 軟骨や皮下組織の切除過多
鼻先の脂肪や軟部組織を削りすぎると、皮膚を支えるクッションがなくなります。
結果として皮膚が軟骨に張り付き、鼻先がくびれすぎてしまうのです。
3. 厚い皮膚の影響
皮膚が厚い場合、軟骨の上から重みがかかりやすく、時間の経過で変形が進むことがあります。
厚い皮膚は「形が出にくい・戻りやすい・時間がかかる」という三重の難しさを持ち、これがピンチノーズのリスクを高める要因のひとつです。
4. 過去の手術による瘢痕
再手術の患者さんでは、瘢痕拘縮(硬いひきつれ)が加わることで皮膚が引き込み、変形がさらに顕著になることもあります。
ピンチノーズで起こる見た目と機能の問題
- 鼻先が細く不自然に見える
- 鼻先の左右が強くつままれて、バランスが崩れる
- 鼻翼が広がって見える
- 鼻腔が狭くなり、呼吸がしにくくなる
美容目的で受けた手術にもかかわらず、機能的に不利益を生じることがあるため、見た目と呼吸の両面から修正を考える必要があります。
ピンチノーズの改善方法
再手術では「潰れた支えを再構築すること」が最も重要です。

鼻尖部の修正
- 軟骨移植:耳介軟骨や肋軟骨を用いて、潰れた鼻尖を補強します。
- 鼻中隔延長:鼻先の軸を強固に支えることで、再びつままれないようにします。
鼻骨骨切り
鼻筋を整えることで、鼻尖だけでなく全体のラインを自然に見せることができます。
厚い皮膚への配慮
皮膚が厚い方では「形が出にくい・戻りやすい」ため、強固な軟骨の支えを作ることが不可欠です。
症例の一例
僕が担当した患者さんのケースをご紹介します。




悩み
- 厚い皮膚で鼻がぼってりして見える
- 過去の鼻整形でピンチノーズ変形をきたした
- 人中短縮の傷跡が目立ち、鼻柱基部が凹んで影になっている
行った施術
- 鼻中隔延長(肋軟骨)
- 鼻尖形成+軟骨移植
- 鼻骨骨切り+ハンプ切除
- 鼻翼縮小(内+外)
- 貴族手術(肋軟骨による基部補強)
結果
- 鼻尖の変形が改善し、自然な鼻先へ
- 鼻柱基部の影が緩和し、傷跡の印象も軽減
- 鼻先がしっかり前方に投影され、中顔面に立体感が生まれた
再発を防ぐための工夫
ピンチノーズの修正後も、再び潰れてしまうリスクはゼロではありません。
そのためには次の工夫が必要です。
- 十分な支持力を持つ軟骨移植
軟骨は小さいものではなく、しっかりとした大きさで強固に組むことが大切です。 - 瘢痕や皮膚の硬さを考慮した設計
再手術では瘢痕拘縮があるため、皮膚を無理に伸ばすデザインは避け、自然に馴染むよう配慮します。 - 骨格全体との調和
鼻尖だけを整えるのではなく、鼻骨・中顔面とのバランスをとることで長期的な安定が得られます。
ピンチノーズを予防するには
初回手術からピンチノーズを避けるためには、
- 鼻尖を過度に細くしすぎない
- 軟部組織を削りすぎない
- 十分な支持力を保ったままデザインする
といった配慮が必要です。
「とにかく細く」「小さく」というデザインを求めすぎると、将来的に変形リスクが高まります。
まとめ
ピンチノーズは、見た目の不自然さだけでなく、呼吸のしにくさといった機能的な問題も伴うことがあるため、軽視できないトラブルです。
厚い皮膚の方や、過去の手術で変形をきたした方では特に注意が必要であり、再手術では潰れた支えを再構築し、骨格全体と調和させることが重要です。
鼻整形は「鼻先を細くする」だけでなく、「骨格・皮膚質・呼吸機能」をすべて踏まえた設計が求められます。
僕は鼻を専門にしつつ、骨切りや中顔面の手術も含めた包括的なアプローチを行っています。
「鼻先が潰れて不自然に見える」「過去の手術で満足できなかった」と悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
拘縮鼻の治療は簡単ではありません。ですが、適切な診断と再建計画、そして経験豊富な専門医による手術で改善は十分に可能です。
僕は再建の経験も数多く積んでおりますので、もし鼻の硬さや変形でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。