この記事は 前田 翔 医師(形成外科専門医・美容外科専門医) が監修しています。
「理想の鼻の形にしたい」 そう思ったときにまず気になるのは、鼻筋や鼻先のデザインではないでしょうか。 しかし、美しい仕上がりと安全性を両立させるには、「どんな形にしたいか」だけでなく、鼻の中がどうなっているかを把握することがとても重要です。
鼻は、骨・軟骨・粘膜・空気の通り道(鼻腔)など、複雑な構造からできています。 これらの内部構造に異常があると、見た目の歪みだけでなく、鼻づまりや呼吸のしづらさといった機能的な問題にもつながってしまいます。
そこで当院では、術前に高解像度CTを用いて、鼻の内部構造を三次元的に診断しています。 CTによって得られた情報は、術式の選択・修正手術の計画・長期的な安定性の確保に欠かせない重要な材料となります。
なぜ鼻整形にCT検査が必要なのか?
美容外科における鼻整形では、「形」と「機能」、両方のバランスが大切です。 見た目が整っていても、呼吸がしづらくなるような手術では本末転倒です。
たとえば、鼻中隔が強く曲がっていると、見た目に歪みが出るだけでなく、片側の鼻腔が狭くなり呼吸がしづらくなります。気づかぬうちに慢性的な鼻閉(鼻詰まり)を起こしている方も少なくありません。
また、プロテーゼがずれていたり、軟骨が内部で突出していたりする場合、それが鼻づまりや感染、皮膚の菲薄化につながるケースもあります。
実際に以下のような異常は、外見からはわからないことが多く、CT検査による内部評価が不可欠です。
- 鼻中隔の曲がり(鼻の中心を通る仕切りの歪み)
- 鼻腔の左右差や狭窄(鼻の通り道がどちらか一方に偏っている)
- 過去のプロテーゼや軟骨片の癒着
- 副鼻腔炎などの隠れた炎症
こうした構造的な問題が見逃されたまま手術を受けてしまうと、術後のトラブルや再手術のリスクが高まります。 事前にCTで把握しておくことで、リスクを最小限に抑えた、安全で再現性の高い鼻整形が可能になります。
CTでわかること
鼻の構造は外見からでは把握しきれません。CT検査を行うことで、以下のような情報が明らかになります。
- 鼻中隔の曲がり具合や厚み
- 曲がりが強いと鼻筋のゆがみや詰まりの原因になります。
- 鼻腔の左右差や通気性の評価
- 呼吸機能の観点からも重要です。
- 鼻背・鼻根の骨の厚みや形状
- プロテーゼ挿入や骨切り手術の安全性に関わります。
- 過去の手術痕や癒着、異物の有無
- 修正手術の際にはとくに重要な所見です。
- 副鼻腔炎やアレルギー性炎症の有無
- 感染リスクや術後の腫れを予測する上で不可欠です。
CTは、レントゲンでは確認できないような細部も立体的に描出できるため、術前評価の精度が格段に高まります。
CTがあるからこそできる、安全で的確な手術計画
当院では、CT画像をもとに術前の診察・デザイン・術式選択を行っています。 たとえば以下のようなケースで大きな役割を果たします。
- 骨切り術の幅や方向をミリ単位で計画
- 鼻中隔延長に使用する軟骨の量や角度を決定
- 修正手術での癒着リスクを予測
- 将来の変形リスク(皮膚の薄さ・骨格の左右差)を事前に評価
また、CT画像により術後の経過を客観的に記録・比較することもできるため、長期的な予後評価にも役立ちます。
CTを活用することで、「経験」や「勘」ではなく、科学的根拠に基づいたデザインと手術が可能になります。
症例画像で見るCTの重要性
Before:鼻腔内で突出した肋軟骨による鼻閉




このCT画像は、他院で移植された肋軟骨が鼻腔内に突出し、鼻中隔が右に大きく偏位している状態を示しています。
白丸で示した部位では、軟骨が斜め方向に張り出しており、右側の鼻腔を内側から圧迫しているのが確認できます。
このような異常は外見だけでは把握できず、術前のCT撮影による内部構造の可視化が極めて重要です。
通気性が著しく低下しており、患者様は慢性的な鼻閉(鼻づまり)症状を自覚していました。
Before:S字に曲がった鼻筋で中心がずれて見える顔立ちに


このCT画像を見ると、鼻の中の骨や軟骨が左右にゆがんでいて、それに引っ張られるように鼻先も斜めにずれているのがわかります。
また、正面からの写真では、鼻筋がS字状にカーブしていることに加え、鼻孔の開き方や縁の高さに左右差が生じており、見た目の印象にも影響を与えていました。
今回行った手術内容
拘縮によって潰れていた鼻中隔軟骨は、瘢痕とともに丁寧に除去し、肋軟骨を用いて新たに再建。
元の鼻中隔軟骨はほとんど溶けていたため、骨に肋軟骨を固定して基礎から土台を構築しました。
鼻先は軟骨と筋膜を組み合わせて自然なラインを再形成。
また、歪みと拘縮の原因となっていたプロテーゼは抜去し、鼻筋も自家組織によって再構築しています。
After:再建手術により機能と形態が回復

after:肋軟骨と骨で鼻中隔を再構築し、中心を通るまっすぐなラインが形成されています。見た目だけでなく、呼吸機能の改善にもつながります。

after:鼻中隔をまっすぐに再建したことで、左右の鼻腔の広さが均等になり、通気性が大きく改善されています。

after:曲がりが修正され、鼻の中心軸が整いました。鼻先の位置も正中に戻っています。
術後1年の自然な仕上がり




鼻中隔と鼻先を丁寧に再建することで、1年経っても鼻筋や鼻孔の左右バランスは崩れず、見た目も自然なまま維持されています。見た目の美しさだけでなく、呼吸のしやすさも継続しています。
このように、CTで構造を可視化しておくことは、修正手術や再建手術を行ううえで極めて重要です。
当院のCT機器と解析ソフトについて
当院では、術前評価の精度を高めるために、院内にCT機器を導入しています。
当院のCT機器の特徴
- 高解像度の3D画像を短時間で撮影可能(撮影時間は30秒程度)
- 顔面骨格に最適化された設計で、鼻整形に必要な視野を的確に取得可能
- 院内で撮影が完結するため、外部医療機関への紹介が不要
- 撮影直後に医師と画像を見ながらカウンセリングが可能
- 被ばく量が少なく、安全性も確保
CT撮影から診察・プランニングまでワンストップで完結するため、患者様の負担も少なく、時間的コストも抑えられます。
また、撮影したデータは、専用解析ソフトで立体的に再構築し、骨・軟骨・鼻腔の位置関係を細かく分析できます。これにより、術前のミリ単位のデザイン設計や、修正手術のリスク評価もより的確に行うことが可能になります。
まとめ|“理想の鼻”は、外からだけでなく中から考える
鼻整形においては、仕上がりの美しさだけでなく、呼吸のしやすさや長期的な安定性も非常に重要な要素です。
当院では、術前にCT検査を行い、鼻中隔や軟骨の状態、過去の手術による癒着や変形の有無などを立体的に把握したうえで、安全で適切な手術計画を立てています。こうした構造の可視化により、一人ひとりに合った理想的なデザインをご提案することが可能です。
特に、他院での手術後に違和感やトラブルがある場合は、外見からは見えない内部構造に原因が隠れていることも多く、修正手術には高度な診断力と技術が求められます。当院では、そうした他院修正にも数多く対応しており、見た目の整え直しだけでなく、構造の再建まで含めた総合的な手術を行っています。
「他院整形後の違和感を治したい」「修正手術を検討している」「鼻の中の状態を詳しく知りたい」──そういった方は、まずCT検査で“見えない不安”を見える形にすることから始めてみてください。
正確な治療計画は、正確な情報から生まれます。
“なんとなく”ではなく、“根拠のある”鼻整形を選びましょう。